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投資信託の分配金 知っておくべき重要なポイント
(5)分配金が多いファンドが良いファンド?
ここで、分配金、および分配金と基準価額の関係について、もう少し詳しくご説明しましょう。
『(1)分配金のしくみ』でお話した通り、分配金は、分配対象額から、各ファンドの分配方針に基づいて支払われますが、この分配対象額は以下の4項目の合計になります。
- ①組入れている資産(有価証券など)の利子・配当等収益(経費控除後)
- ②組入れている資産(有価証券など)の売買益と評価益(経費控除後)
- ③分配準備積立金
- ④収益調整金
③分配準備積立金と④収益調整金についてはあまり聞き慣れない言葉だと思いますので、以下でご説明します。
- ③分配準備積立金とは、当期(前回決算日の翌日から当期決算日まで)に発生した上記①・②のうち、当期の分配金として支払わなかった残りの金額をいいます。その残金額は信託財産の中で積み立てられ、次期以降の決算時に分配金として支払うことができる分配対象額となります。
- ④収益調整金とは、追加型投資信託において、追加設定(新規購入)により、既存の当該ファンドの保有者への分配可能額が減らないよう調整する(公平性を保つ)ために設けられているものです(追加設定した価額(約定価額)から元本を差し引いた差額分=約定時点での分配対象額)。前期末時点の収益調整金の残高に、当期中の日々の設定・解約による収益調整金を加減したものが、当期末の分配対象額となります。
運用会社は、ファンドの決算日にその時点の上記①から④の分配対象額から、支払う分配金を決定します。
この分配金を上記の4項目の内訳で考えると、同じ分配金額でもその内容は変わってきます。
当期中に発生したファンドの収益(①と②)内で支払われる場合、当期中に発生したファンドの収益(①と②)を超えて③と④を含んで支払われる場合とでは、基準価額との関係も変わってきます。
では次に、この分配金の内訳が異なるケースを、基準価額との関係とあわせてみてみましょう。
分配金と基準価額の関係
以下の図は「分配金の支払いに伴い、投資信託の基準価額がどのように変動するのか」を例示したものです。
当期中に発生した収益(①と②)の中から分配金が支払われる場合
>> ケースAは、期中収益100円(①+②)により、当期決算日における分配前の基準価額は10,600円に上昇しました。これを基準として、期中収益100円から分配金100円を支払ったため、当期決算日における分配後の基準価額は10,500円となり、前期決算日と同額となりました。
当期中に発生した収益(①と②)を超えて分配金が支払われる場合
>> ケースBでは、期中収益50円(①+②)により、当期決算日における分配前の基準価額は10,550円に上昇しました。これを基準として、期中収益50円に加えて、繰越しの分配対象額(③+④)の中から50円を取り崩して分配金100円を支払ったため、当期決算日における分配後の基準価額は10,450円となり、前期決算日と比べて50円値下がりしました。
>> ケースCでは、利子・配当等収益20円(①)と売買損益・評価損益▲120円(②)により、当期決算日における分配前の基準価額が前期決算日と比べて100円下落し、10,400円となりました。これを基準として、利子・配当等収益20円に加えて、繰越しの分配対象額(③+④)の中から80円を取崩して分配金100円を支払ったため、当期決算日における分配金支払い後の基準価額は10,300円となり、前期決算日と比べて200円値下がりしました。
それぞれのケースにおける、前期決算日から当期決算日(分配金支払い後)まで保有した場合のファンドの損益をまとめると以下の通りとなります。
- ◇ケースA:分配金受取額100円+当期決算日と前期決算日との基準価額の差0円=100円
- ◇ケースB:分配金受取額100円+当期決算日と前期決算日との基準価額の差▲50円=50円
- ◇ケースC:分配金受取額100円+当期決算日と前期決算日との基準価額の差▲200円=▲100円
各ケースにおいて分配金額は同額であっても、計算期間中に発生した収益(上記①および②)を超えて繰越しの分配対象額から分配金が支払われる場合には、当期決算日の基準価額は前期決算日と比べて下落することになり、損益状況は異なった結果となります。
また、分配金の水準は、必ずしも計算期間におけるファンドの収益率を示すものではありません。
普通分配金と元本払戻金(特別分配金)
次に視点を変えて、お客さまの購入価額と分配金の関係をみてみましょう。
同じファンドでも、お客さまによって購入時期は異なりますので、当然購入価額も異なります。決算で同じ金額の分配金が支払われたとしても、この購入価額の違いにより、それぞれのお客さまで分配金の意味あいが異なってきます。
お客さまの購入価額によっては、分配金の一部ないし全額が、実質的には元本の一部払い戻しに相当する場合があります。また、購入したファンドの購入後の運用状況によって、分配金額より基準価額の値上がりが小さかった場合も同様です。
この元本払い戻しに相当する部分は「元本払戻金(特別分配金)」といい、税法上の扱いも異なります。
※ただし外貨建て投資信託には、元本払戻金(特別分配金)という概念はありません。
普通分配金 | 個別元本(*)を上回る部分の分配金です。 普通分配金は投資信託の元本の運用により生じた収益から支払われ、利益として課税対象となります。 |
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元本払戻金(特別分配金) | 個別元本(*)を下回る部分の分配金です。 元本払戻金(特別分配金)は、「投資した元本の一部払い戻し」に当たるため、非課税となります。また、元本払戻金(特別分配金)の額だけ個別元本は減少します。 |
(*)個別元本とは、追加型投資信託におけるお客さまごとの課税上の購入価額(手数料等は含まれません)をいいます。「個別元本=お客さまが投資信託を購入した時の基準価額」となり、同じ投資信託を複数回購入した場合や元本払戻金(特別分配金)を受け取った場合などに修正されます。
※元本払戻金(特別分配金)は実質的に元本の一部払い戻しとみなされ、その金額だけ個別元本が減少します。また元本払戻金(特別分配金)部分は非課税扱いとなります。
!『取引履歴 詳細』でご確認いただけます!
ソニー銀行で投資信託のお取り引きをされているお客さまは、支払われた分配金の内訳(普通分配金と元本払戻金(特別分配金))を以下の画面にてご確認いただけます。
ログイン後の「投資信託・NISA」-「取引履歴」で表示される一覧にて、確認したいお取り引きの取引種別【分配金】をクリックすると詳細がご覧いただけます。
以上のご説明の通り、同じ金額の分配金であっても、そのファンドの運用状況や基準価額、またお客さまがファンドを購入された価額などで内容は変わります。
(6)ファンド選びはトータルで考えることが重要
さて、最近ではファンドの分配金の水準を比較する際に、指標の一つとして「分配金利回り」をみることがあります。「分配金利回り」は基準価額に対してどの程度の分配金を支払っているかを表しており、過去1年間の分配実績合計額を基準価額で割って計算します。
たとえば、
上記の通りケースAとBでは、年間の分配金額が同額でも、算出時の基準価額の違いにより分配金利回りは異なります。同じ分配金額であれば基準価額が低い方が分配金利回りは高くなります。利回りが高いほど、運用資産に対して多くの分配金を支払っているファンドといえます。
ファンドを選ぶ際には分配金だけではなく、投資した元本がどれだけ増えたか、すなわち「トータルリターン」をみることが重要です。「トータルリターン」とは、投資信託が対象期間にどれだけ値上がり(値下がり)したかを示す指標の一つで、分配金はすべて投資信託に再投資されたものと仮定して計算しています。
運用成果以上に分配金をたくさん受け取っている場合は、元本部分を取り崩していることになるため、このトータルリターンと分配金の水準のバランスをみて、運用成果に対して分配金を出しすぎていないかを確認しましょう。トータルリターンと分配金の比較は「ファンド一覧・検索」画面から各ファンド名をクリックしてご覧いただく、個別ファンドの詳細画面にて確認することができます。
近年は高い分配金を望む投資家のニーズに応えるために、よりリスクの高い投資対象に投資したり、複雑な商品設計の投資信託も目立つようになりました。分配金の多さだけで投資信託を選ぶのではなく、しっかりと投資対象やリスクについても確認し理解する必要があります。
投資信託の分配金を賢く使いこなして、資産運用をより充実したものにしてください。
(おわり)
(2010年10月 ウエルスアドバイザー作成、2016年9月 ソニー銀行更新)
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- ※また、ソニー銀行、ウエルスアドバイザーが信頼できると判断したデータにより分析・コメントしておりますが、その正確性、完全性についても保証するものではありません。ご投資される際は、お客さまご自身の責任と判断でなさるようお願いします。
- ※投資信託は運用会社が設定・運用している商品であり、預金ではありません。また、投資信託は元本保証および利回り保証のいずれもありません。