ストーリー

病院とNPOに特化したサービスで社会課題の解決に貢献する「リタワークス」

社名にも込められた「利他の想いと行動で、世界をより良くする」を企業理念に、全国の総合病院向けホームページ制作・運用サービス「mirahos(以下、ミラホス)」と、NPO(非営利組織)専門のホームページ制作・運用サービス「nuweb(以下、ニューウェブ)」の2事業を柱に成長を続けているリタワークス株式会社。2022年10月、創業者の佐藤正隆氏に代わり、塚本誠氏と中川雄太氏のおふたりが代表取締役・共同代表に就任し、新体制となった同社が2020年に続き、今回2号目となるクラウドファンディングを実施。病院業界とNPO業界に特化したソーシャルビジネスを展開している同社が描く未来への想いを、共同代表のおふたりにうかがった。

創業者からバトンを渡された若き経営者たちによる新体制

2008年、当時、27歳の佐藤正隆氏が少数のスタッフと共に大阪市で創業。当初は一般企業向けのシステム開発やホームページ制作などを行っていたが、2015年に理念とビジョンを改定し、社名をリタワークス株式会社に変更。以来、病院業界とNPO業界に特化した事業へと転換。現在、グループ全体で約100名の社員を抱えるまでに成長した。さらには、創業者の佐藤氏がそうであったように若いふたりを新たな代表取締役に指名。企業理念は受け継ぎながら、新体制で事業を牽引していくという。

「以前から佐藤は、『次世代の経営層を担える若手を育成したい』と言っていました。また、将来に向けて10の新規事業を作っていくと佐藤は常々言っていましたので、その想いを受け継ぐことを決意しました」と語る塚本氏。

一方の中川氏は入社から2年弱での大抜擢だったという。
「これまで佐藤が築き上げてきたリタワークスをさらに発展させたいと思います。この挑戦が、次の人たちにも繋がるよう頑張りたいと思います。」

現在、塚本氏は総合病院向けのホームページ制作・運用サービス「ミラホス」を、中川氏はNPO専門のホームページ制作・運用サービス「ニューウェブ」をメインにしながら、1事業・1人の経営者として活動を展開している。

地域を担う総合病院に特化したサービス『ミラホス』

業界に特化したプロダクトサービスを提供することで、その業界の発展に貢献していくことを使命と考える同社は、創業当時は、企業のホームページ制作・運用サービスを提供する「webider(以下、ウェビダー)」を展開していました。

「元々『ウェビダー』のお客さまの中に病院もあり、ホームページを効果的な広報ツールとして活用することで集患や看護師の採用強化に繋がるという成果を出していました。この経験から私たちのサービスが病院が抱える課題解決のために不可欠であると考え、病院向け専門パッケージを開始しました。それが2012年のことで、2021年には「ミラホス」としてサービス名も一新しました」と語る塚本氏。現在、約400の医療法人と契約するまでに発展している理由には、そもそも200床以上の総合病院に特化したサービスは、世に少なく、その分野で圧倒的なノウハウと実績を積み重ねてきたことが、他社にはない同社の優位性である。

「専門性があり高度な医療を提供している総合病院は地域の中核を担う存在であることは間違いありません。そのため、診療所をはじめとした地域のステークホルダーとの結びつきが非常に強いと言えます。その総合病院が、迅速で正しい情報を地域に届けることは、患者さんやその家族の安心感につながります。そのためホームページはある意味、地域のインフラ的な役割を担っていると言えます。また病院側にとっても、魅力的なホームページを運用することで、自院の役割や専門性を明確にし、他の医療機関との差別化を図り、集患や採用の成果に繋げることができます。このように総合病院のホームページは、地域住民の安心、また病院経営の面においても重要な役割を担っており、その支援は社会的意義が非常に高いと思っています。」

奇しくも新型コロナウイルスの蔓延によって、病院の経営層がデジタルを通じた情報発信の重要性を認識した結果、コロナ影響下にかかわらずホームページ制作の需要は大きく伸びたという。しかし理由はそれだけではないはず。同社は総合病院に特化した取り組みを通じて、総合病院のニーズや課題をキャッチアップして蓄積し、その解決法を提案できるノウハウがあるからこそ売上が向上しているのである。

「今後は、ノウハウをさらに蓄積し、病院のさまざまなニーズにも応えていきたいと考えています。そのため2023年から新たに『病院経営にミラホス』というビジョンを掲げ、ホームページ制作だけにとどまらず病院経営に必要なさまざまなサービスを展開していきます。」(塚本氏)

mirahos(ミラホス)

多くのNPO団体に支持され、高い評価を受ける『ニューウェブ』

「ミラホス」に次ぐ同社の事業の柱が、NPO専門のホームページ制作や運用サポートなどを提供するサービス「ニューウェブ」である。2016年に『ウェビダーNPO』としてサービスを開始し、2020年11月にブランドリニューアルを行い「ニューウェブ」としてローンチされた。ちなみに2020年のサービス開始段階では年間80件ほどだった契約数が、現在では倍の160件以上に拡大。新規実績も伸び続けているという。

「NPOと言いましても、法人格のあるNPO法人は全国で約50,000団体。公益法人は10,000団体ほどありますので、全体では約60,000団体の市場となります。その中にも、さまざまな課題や活動地域、国がありそれぞれの団体の規模も専従の職員がひとりもいない団体から企業のようにしっかりした組織体のある団体までさまざまな団体があります。最初は小規模な団体やスタートアップの団体からのご相談が多くありましたが、最近では歴史ある団体や規模の大きな団体からのご依頼が増えたこともあり、NPO業界の中でもかなり評価をいただけるようになりました。また、その評価が次の依頼につながっているという状況です。」(中川氏)

顧客であるNPO団体からは、経営的な視点からのアドバイス、自分たちの想いが表現されたホームページ制作に対して評価の声が集まっているという。

「ご相談いただいた団体からは、私たちがホームページをリニューアルさせていただいた結果、寄付金の金額が伸びたと喜びの声をいただくこともあります。私たちはNPOに特化したサービスを展開していることで、子どもの貧困や世界の貧困、児童労働などをはじめとするさまざまな社会課題に対する知識があります。それが他社にはない強みであり、評価につながっている部分でもあると感じています。」(中川氏)

現在、同社の投資先事業であるNPOのオウンド型寄付募集システム『congrant(コングラント)』の既存ユーザー約1,900団体以上からの送客に加えて、IT導入補助金の採択を受けていることもあり制作依頼は順調に向上しているという。この事実は、社会課題の解決に取り組むNPO団体への支援が実現できていることでもあるのだ。

nuweb(ニューウェブ)

「2030年ビジョン」の実現に向け、さらに発展するミラホス

2019年から始まった新型コロナウイルスの流行は、これまであまり知られることのなかった日本の医療業界が抱える課題や脆弱さを浮き彫りにした。それは医学の進歩とは裏腹な旧態依然とした慣習や、看護師など医療従事者が不足している姿だった。社会的に意義ある事業を推進するリタワークスにとって、まさに自社事業の「ミラホス」が総合病院に不可欠なサービスとの想いを強めているという。

「今後、軸としている総合病院ホームページ制作を日本中にさらに広げていくために、「ミラホス」に関わるネットワーク構築も拡大していきたいと考えています。総合病院のホームページをひとつでも多く、良くしていくためには自社だけではなく、他の制作会社や病院に携わりたいクリエイターなど、多様な専門性を持つ人々との連携が欠かせません。これらのネットワークの構築を通じて、総合病院のホームページ制作の拡大と、より良い医療情報の提供、地域コミュニティの発展に貢献します。また、「ミラホス」の役割はそれだけではありません。多くの病院が抱える看護師不足を解決するため、看護師のキャリア支援を通じた医療サービスの向上にも貢献したいと考えています。」(塚本氏)

病院では看護師の採用に際し、人材紹介会社を利用するケースが約7割あり、そこで発生する紹介手数料は看護師1人当たり100万円以上にもなるという。この採用コスト増大が病院経営を圧迫する要因のひとつになっているのだとか。
「看護師採用に特化したホームページを制作し、職場の魅力や看護師のキャリアパスなどの情報を魅力的に発信することで、人材紹介会社経由ではなくホームページからの自己応募増加によって採用コストの50%削減を実現しているお客さまも多くいらっしゃいます。これはひとつ結果が出ていますが、実はいま看護師のスキルや働き方、働きたい地域などの採用を軸とした病院間の看護師データベースをつくりたいと考えています。看護師のライフステージなども考慮しながら、適材適所で配置することができれば医療の質の向上にもつながります。そして、何より病院間連携によって看護師の人材交流がスムーズになり、採用コストの大幅な削減につながります。」

さらにここ数年、病院がサイバー攻撃の標的になるケースが増えていることを考慮し、サイバーセキュリティの強化や院内のデジタル化促進、24時間365日のサポート体制の確立などにも力を入れていくという。そして、その先には明確に見据えた目標がある。

「2026年度の4月期までに、800病院との契約を達成したいと考えています。全国の約8,000病院のうち、地域の中核病院である1,626病院が主なターゲット、それらの病院で「ミラホス」をご利用いただきたいと思っています。それによって利益の向上につなげるだけではなく、総合病院に特化した課題や包括的なニーズのキャッチアップにもつながる。何よりも総合病院と働く人にとって良いサービス、事業の運営を行うことが、「ミラホス」が果たす社会的意義の実現に近づくという想いがあります。」

同社には「2030年までに、あらゆるソーシャルビジネスに挑戦し、『あしたがよくなる』ことが実感できる社会をつくる」というビジョンがある。ビジネスである以上、収益を上げることの大切さは語るまでもないが、それ以上に「社会への貢献」という熱い想いが同社の原動力となっているのだ。