ストーリー

2030年までに、あらゆるソーシャルビジネスに挑戦し、「あしたがよくなる」ことが実感できる社会づくりに貢献したい

数多あるWEB制作会社の中で、NPO(非営利組織)業界と病院業界へのサービスに特化し、躍進を続けているリタワークス。現在、NPO・病院専門のホームページ制作・運用サービス『Webider(ウェビダー)』、NPOのサイト上で寄付募集から決済、支援者管理、領収書発行までを総合的に管理できるツール『congrant(コングラント)』、地域医療連携を促進させるための支援ツール『medigle(メディグル)』の3つのサービスを柱に事業を展開している。その背景にあるのは、企業理念である「利他の想いと行動で、世界をより良くする」と、2030ビジョンの「あらゆるソーシャルビジネスに挑戦し、『あしたがよくなる』を実感できる社会をつくる」を実現するための熱き想いである。ITツールを駆使して社会課題と向き合う、リタワークス代表取締役の佐藤正隆氏に話をうかがった。

地域や社会に対して何ができるのか?
その思いが会社を変えるきっかけとなった

2008年、大阪市で創業。当時、佐藤社長は27歳。少数のスタッフと一般企業向けのシステム開発や、ホームページ制作・運用サービス『ウェビダー』を提供していた。

「最初の4年間は個人事業主のようなもので、意識的にも経営者とはいえないような状態でした。自分の社会性がすごく狭かったんです。そんな私が大きく変わったのは、株式会社フォーバルの創業者であり代表取締役会長の大久保秀夫さんとの出会いでした。2011年から2年間、大久保さんの私塾で学ばせていただく中で、社会に貢献できるような事業をやらなければ会社は成長しないし、人もついて来ない。経営者としての在り方とともに企業理念の重要さに気づかせていただいたんです。そこから理念とビジョンを練り上げていく中で、社名でも理念を表現したいと考え2015年に社名をリタワークス株式会社へと変更しました。そこから事業も、NPO業界と病院業界に特化していったのです。」

ただ、いきなり何の準備もなくNPO業界・病院業界向けに事業を始めたわけではない。創業以来サービスを提供していた『ウェビダー』の古くからの顧客に病院が多く、業務を通じて病院が抱えるリアルな課題に精通していたため、ITツールを用いた貢献ができると考えたのだという。

「一般企業向けにサービスを提供するWEB制作会社はたくさんあります。その中でシェアを奪い合ったり競争するのではなく、サービスが行き届いていない業界にこそ自分たちのスキルを活かせる領域があるはず、そこを我々が支えていこうと考え、すでに顧客として存在していた病院を支援することに決めました。そこで、2015年に理念と社名を変えたタイミングで『ウェビダー』の病院専門プランを打ち出し、2016年からはNPO向けのプランも展開するようになったのです。」

2015年からスタートした病院・NPO向け『ウェビダー』の提供は、年間約120件の増加で推移しているという。

「まず、業界に特化していることは大きな強みなんです。弊社の担当者はこれまでの経験から、病院やNPOの事情や専門用語がわかっているので、先方の要望や意図を理解したうえで、さまざまなご提案ができます。また、WEB制作会社は料金を明確にしているところが少ないのですが、弊社では料金帯をふたつに分けて明示し、片方は比較的低価格な費用で提供しています。さらに、ホームページの運用の部分は自社開発のCMSを提供し、お客さま自身が更新できるようレクチャーも実施しています。加えて、迅速なサポート体制も充実していることが、お客さま満足度につながり、病院とNPOでは年間数件程度の低い解約率となっているのだと思います。」

小さな活動も支援したい。その思いから生まれた
ファンドレイジングツール『congrant』

2016年から始まったNPO向け『ウェビダー』の提供を通じて、さまざまな団体が抱える課題が見えてきた。そのひとつが活動資金である。国からの助成金を受けて活動する団体もあれば、それこそ自分たちの持ち出し、少ない寄付によって何とか活動を継続している団体もあることがわかったという。
「例えば、年間で10万円でも20万円でも寄付があればイベントが催せるとか、子供たちに対してもっと支援ができるのに、資金が不足しているために実現できない。あるいは、国のセーフティネットでは支援できない人たちをフォローしている団体もあるんです。そういうところを僕たちはビジネスで助けたい、支援したいと考えて開発したのが、ファンドレイジングツール『congrant』です。」
NPO団体が寄付を集める手段としては、現金や銀行振込、クレジットカード決済といったパターンがあるが、WEBサイトで団体の活動を知った人が寄付を考えた場合、手間なく行えるのはクレジットカード決済である。しかし、ここに大きな問題があった。
「クレジットカード決済を利用するには、カード会社ではなくシステムの代行をする会社との契約が必要となります。しかし、起ち上げたばかり、もしくは法人格になっていない組織は審査が通らないんです。そのため利用できないNPO団体が出てしまう。ならば困っているNPO団体の代わりに弊社が全責任を負って『congrant』として包括契約しようと考えたのです。通常、クレジットカード決済システム会社と直接契約しようと思うと審査と準備などに時間がかかり、最短でも1週間、長いと1ヶ月くらいかかってしまいますが、『congrant』に登録いただいた団体は、明日から寄付募集が行える。これは今まで存在しなかったシステムなんです。例えば、地震などの災害が起きて緊急に寄付を集めなければいけない場合にも、すぐに寄付の募集を起ち上げることができるわけです。」
2017年9月から提供が始まった『congrant』は、2020年5月末現在で531団体が導入。寄付総額は約5億4,500万円にのぼっている。しかも、今年に入ってから導入団体が100件以上も増える急成長を見せているという。
「寄付が集まることでNPO団体の活動は持続可能になっていきますし、諦めそうになっていた小さな活動も続けていける。何より、寄付を受けることで自分たちの活動が認められたと自信になるんですね。『congrant』を通じて、多くの団体に勇気を与え、活動を支援できることがうれしいんですよ。正直、このサービスは3年目にしてやっと事業として経済的に成り立ってきた感じなんです。社会のため世界のためだったら収益は後で何とかつくればいい。とにかく今は、多くのNPO団体に使ってもらうことが重要だと思っているんですよ。」

医療現場のリアルな声から生まれた
地域医療連携を促進するシステム『medigle』

新型コロナウイルス渦の中、医療崩壊という言葉をよく耳にするようになったが、実はこの問題は以前から取り沙汰されていた。近い将来、超高齢社会を迎える日本では「大病院への患者集中」「勤務医の過重労働」といった問題が課題となっている。その課題解決としての取り組みが「地域医療連携」である。大病院に患者が集中しないよう、地域の「かかりつけ医」と連携しながら治療にあたるという施策だ。
地域の基幹となる大病院では、クリニック・診療所からの紹介状がなければ診察を受けることができなかったり、多額の診療費が必要となる。しかし、その大病院と連携しているクリニック・診療所を一般の人が調べるのは難しい。この課題解決に向け、リタワークスが2019年からスタートさせたのが、地域医療連携を促進させるための支援ツール『medigle(メディグル)』である。
「大病院のホームページ上で、登録されている地域のクリニック・診療所のデータを見られるようにした検索システムが『medigle』です。本来、大病院側がホームページ上に出しておくべき情報だと思うのですが、それがなされていないのが現状です。実はこのシステム、5~6年前に横浜南共済病院さまのホームページを制作する際に、病院の担当者から課題をヒアリングして一緒に提供したのが始まり。それを発展させてクラウドサービス化したものなんです。」
この『medigle』は患者側だけではなく、病院側にとっても大きなメリットがあるという。
「病院側としては、登録先のクリニック・診療所の情報を管理することができるんです。例えば、病院側が『このクリニックは、こういう治療が得意』といった情報を持っていれば、患者さんが退院してクリニックに通院することになった場合に適切なところを紹介できます。患者さんに安心して地域のクリニックで診察を受けていただけるように、またその患者さんが病院での検査が必要になった場合のクリニックとの連携のうえでも重要だと思うんです。」
『medigle』は、すでに慶應義塾大学病院をはじめ導入を進めている病院があり、今後2年間で500病院への導入を目指しているという。さらには、病院と診療所・クリニックの連携だけではなく、介護施設や訪問介護ステーションなどの施設情報の提供も考えているそうだ。
このようにリタワークスでは、NPO業界・病院業界に特化したITツールの開発と提供を通じて、社会課題の解決に取り組んでいる。リタワークスの挑戦は、まだ始まったばかりだが、その未来に期待と希望を感じさせてくれる企業だ。