プロを訪ねて三千里【第9回】棚瀬順哉氏(JPモルガン・チェース銀行 東京支店 為替調査部長)
新興国通貨の勘どころ 制度・経験則・相関性を知る

トランプ政策への期待はく落によるドル売りの裏側で、ブラジルレアルやトルコリラといった新興国通貨を物色する動きが目立っています。新興国通貨は高金利が魅力ではあっても、日本で得られる情報が少ないため、とりわけ個人投資家の方には、敷居が高く思われがちのようです。

そこで、ドルやユーロといった先進国通貨だけでなく、新興国通貨まで網羅的にリサーチしているJPモルガン・チェース銀行 東京支店の為替調査部長、棚瀬順哉さんに注目される新興国通貨と、見る際の基本的なポイント、リスクについてうかがいました。

棚瀬順哉(たなせ・じゅんや)氏 プロフィール

JPモルガン・チェース銀行 東京支店 市場調査本部 為替調査部長
エグゼクティブ ディレクター

早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了後、チェース・マンハッタン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)入行。為替資金本部、FXリサーチチーム、プロプライエタリー・トレーダーなどを経て、2003年4月FXストラテジストに就任。2010年7月チーフFXストラテジスト。2013年6月チーフFXストラテジスト兼チーフEMストラテジスト。2015年6月より現職。著書に『エマージング通貨と日本経済』、『グローバル通貨投資 ―新興国の魅力・リスクと先進国通貨』(いずれも日本経済新聞出版社)。

対談日:2017年5月30日

先進国との通貨制度の違いに注意

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  • 尾河新興国通貨への関心が高まってきていますが、注目しておきたい通貨はありませんか。
  • 棚瀬

    面白い動きがあったのがロシアルーブルですね。ロシアの輸出のかなりの部分は原油天然ガスです。このため、もともとは原油との相関が非常に強かったんです。原油が上がればロシアの輸出が増えて経済も良くなる。貿易黒字国ですので、輸出が増えて黒字が拡大すれば、ルーブル高の圧力が高まります。

    それが、今年の2月ぐらいから変化しました。中央銀行が、ルーブルのボラティリティを下げるため、原油が上がったときにルーブルを売って、原油が下がったときにルーブルを買うといった新しい為替介入の戦略を導入したことが背景にあります。

  • 尾河為替の水準ではなく、原油の水準に応じて為替介入するということですか。珍しい取り組みですね。
  • 棚瀬

    そうなんです。ロシアは経常黒字だし、財政状況も新興国の中では相対的に悪くありません。本来は、さほどルーブルは変動が激しくならないはずです。ところが、原油相場のボラティリティが非常に高いので、それにつられて結果的にルーブルのボラティリティも高くなってしまっていました。

    ところが、新しい介入戦略に取り組み始めた2月以降、原油が下がった局面でも、ルーブルは崩れませんでした。ルーブルはあまり動かなくなり、原油との相関は失われたように見えます。

  • 尾河そういう事情を知らないで投資すると、思わぬ損失を被りそうですね。やはり、新興国通貨を見るのは難しいのでしょうか。
  • 棚瀬

    主要国も新興国も、通貨の見方は基本的には同じです。経常収支などクロスボーダーのフローや、通貨間のインフレ格差、購買力平価の違いなどは、どちらでも重要ですね。

    新興国で気をつけたい点の一つは、各国で通貨制度が異なるケースが多いことです。香港ドルやサウジアラビアリヤルなどは、対ドルでレートをペッグ(固定)しています。中国は複数の通貨を集めた「バスケット」にペッグして、日々決める中心値からプラスマイナス2%で変動を認める方式を採用しています。一方、メキシコペソやポーランドズロチ、南アフリカランドなどは変動相場に近い仕組みですね。

    さらに新興国通貨をわかりにくくしているのは、表向きの制度と実際の運用が違うケースがあることです。例えば、変動相場だといいつつも、実際には頻繁に当局が為替介入していたり。しかも、介入スタンスがその時々で変化することもあります。こうした各国別の実態は知っておきたいところです。

トルコリラは売られすぎの反動狙いも

  • 尾河もう少しわかりやすい見方はありませんか(笑)。
  • 棚瀬

    それがあるんです。今後の動きが面白そうなトルコリラを例に考えてみましょう。

    過去数年間の新興国通貨は、大きく売られて、その後に大きく戻す動きが何回か見られました。例えば、ロシアルーブルは2014年に急落しました。クリミア侵攻とそれを踏まえた欧米の経済制裁、さらには原油安が重なったためです。市場もルーブルには総弱気のムードでした。ところが、15年の上期には急反発して、新興国通貨の中でもアウトパフォームしたんです。

    2015年には、ルーブルと入れ替わるように、高インフレと政治リスクでブラジルレアルが弱くなりました。こちらも16年にはやはり急反発し、新興国通貨の中で最強になりました。

  • 尾河レアルの場合、ルセフ大統領が弾劾されてテメル大統領に代わったことで、政治的な不透明感が払拭された面もありますね。
  • 棚瀬

    その通りではあるのですが、ブラジル経済が15年も16年も、3%を超える大きなマイナス成長だった点は見逃せません。経済は決して良くなったわけではなかったのです。

    直近ではメキシコペソも似たような文脈といえます。米大統領選挙中にトランプ大統領がメキシコに対する国境税の問題とか国境の壁建設の主張を始めたことで売り込まれましたが、メキシコにとって幸運だったことに、トランプ政権の実行能力に市場が疑問を抱いたことで結局、全て巻き戻されました。1月20日にトランプ大統領が誕生した後、新興国・先進国の通貨の中で、メキシコペソが一番強い通貨になりました。

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  • 尾河大きく売られると、それほど間を置かずに戻る動きが繰り返されてきたわけですね。
  • 棚瀬そうなんです。そして、今売られすぎていて、急反発の可能性のある通貨がトルコリラなのです。エルドアン大統領が権限を強めるような憲法改正の国民投票を打ち出し、政治的な不透明感から売られていましたが結局、大統領は勝ちました。
  • 尾河エルドアンさんの勝利で、独裁色が強まりますね。トルコ経済にはマイナスに思えるだけに、買われるのは違和感がありますね。
  • 棚瀬

    おっしゃる通り、エルドアンさんの勝利で大統領の権限を強めて議院内閣制を廃止することをポジティブ材料と受け止めて買われているわけではないでしょうね。

    政治的な不透明感が払拭されたことで、事前に相当売られた分の巻き戻しが出たのでしょうし、エルドアンさんが負ければ早期の総選挙になって政治的な不透明感がさらに数カ月間続いてしまうリスクがありましたが、これが回避されたことも買い材料になったのだと思います。

    しかもトルコリラは、インフレ動向などを考慮して通貨の実力を見る「実質実効レート」の長期平均に比べると、まだかなり売られすぎの水準にありますので、さらに巻き戻しがあるのかどうかが今後、焦点になるでしょうね。

  • 尾河売られ過ぎの反動以外、何か巻き戻しのきっかけになるような材料はあるんでしょうか。
  • 棚瀬

    この先は、政治というより金融政策でしょう。2015年以降のブラジルレアルに、やや似ています。通貨が売られてインフレ期待が高まり、実際にインフレ率が上昇することで、さらに通貨安が促されるというネガティブスパイラルに入っているのです。

    レアル急反発のきっかけになったのは、売られすぎの買戻しだけでなく、中銀が思い切って利上げしたことが大きかったですね。マイナス成長で、通常なら利下げしてもおかしくないところ、14%を超える水準まで政策金利を引き上げたのです。結局、インフレはピークアウトし、通貨も急反発したのです。

    トルコ中銀はまだ、当時のブラジルほど積極的に利上げを行なっておらず、インフレも消費者物価指数(CPI)の前年比で10%を超える状況はしばらく続くでしょう。ですから、すぐに急反発するとは思いません。金融政策次第、といえますが、売られすぎの反発をねらう戦略は、これから面白いのではないでしょうか。

ポーランドズロチは金利の付くユーロ

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  • 尾河米新政権への思惑でメキシコペソが上下したように、新興国の通貨は近隣の大経済圏の影響を受けやすい面もあるでしょうね。
  • 棚瀬その観点から面白いのは、ポーランドズロチや、チェココルナ、ハンガリーフォリントです。
  • 尾河中欧通貨ですか。ユーロ圏の影響を受けそうですね。
  • 棚瀬おっしゃる通り。実はズロチ相場は、ポーランドよりユーロのストーリーで動いているといえるんです。
  • 尾河G10通貨(世界の主要10通貨)の中でも、ユーロは面白い動きをしていますね。金融緩和の出口戦略への思惑が強まるでしょうから、これまで米国との金融政策の方向性の違いに基づいて売られてきた分の巻き戻しが強まることになりそうです。
  • 棚瀬

    欧州中央銀行(ECB)が2014年6月にマイナス金利政策を始め、15年1月に国債買い入れによる量的緩和に乗り出しました。この間、ユーロ/米ドルは1.40ドルから1.05ドルまで下落しました。足元では1.12ドル付近に戻していますが、巻き戻しは道半ばといえるでしょう。

    EU崩壊などのテールリスク(想定外のリスク)はすぐには実現しないでしょうから、向こう1年ぐらいを予想する上では、ECBの金融政策が重要です。来年の頭からおそらくECBが量的緩和の縮小(テーパリング)局面に入るとみています。本当にECBが金融政策の中立化や引き締めに動くなら、アップサイドの余地はまだ結構ありそうです。

  • 尾河ユーロの動きが、どういうかたちで中欧通貨に影響するのでしょうか。
  • 棚瀬

    中欧通貨は、金融と貿易の両面で、ユーロ圏との結びつきが非常に強いので、経済も通貨も相関が非常に強いんです。とりわけポーランドズロチは、自由に取引されていますし、為替介入がほとんどありません。

    例えば14年の相場が、ユーロとズロチの関係を典型的に示しています。ポーランドのインフレはずっと下がってデフレに突入したようなタイミングでしたし、経常赤字も大幅に減って黒字圏に顔を出したような時期でした。ファンダメンタルズから買われてもおかしくなかったのですが、ECBの緩和政策で売られたユーロに引きずられ、ズロチも売られたんです。

  • 尾河なるほど。ECBのテーパリングを織り込んでユーロが買われるようなら、今度はポーランドのファンダメンタルズに関わらずズロチも買われるといった展開もありそうだということですね。
  • 棚瀬ユーロはマイナス金利を導入していますが、実はポーランドの金利は高いのです。ズロチがユーロと同じ動きをするのであれば、ズロチを「金利のあるユーロ」として投資することも、ひとつの考え方かもしれませんね。

中国党大会の年は「大丈夫」の経験則

  • 尾河 新興国といえば、やはり人民元ですね。今年は5年に一度の共産党大会の年ですから、政府がテコ入れするため経済は大丈夫だとの経験則が語られますが、どのように見ていらっしゃいますか

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  • 棚瀬

    過去の動きを見る限り、やはり大丈夫といえるのではないでしょうか。

    1978年の改革開放以降、5年サイクルの各年の国内総生産(GDP)成長率とドル/人民元のボラティリティ、年間の騰落率の平均を見ると、明確なパターンがあります。

    成長率は党大会の年とその翌年が一番強く、人民元はその両年にあまり動かないのです。過去のパターン通りなら、今年の成長率は政府目標6.5%を下回らず、人民元もあまり動かないとみています。

  • 尾河現在の習近平さんの体制は、従前の体制に比べて改革に前向きな印象がありますが、それでもこれまでの経験則は再現されるのでしょうか。
  • 棚瀬

    再現されると見ています。共産党指導部の今年の最大の関心事は、党大会で習近平さんが再任され、第二期目の5年にいかにスムーズに移行するかにあります。党大会前に景気が急減速して社会不安が高まったり、人民元が乱高下して金融システム不安が高まるというようなことは避けたいでしょう。

    なりふり構わず、景気と人民元の安定を確保したいという中国当局のスタンスは、すでに去年からいろいろなところに現れています。

    例えば景気では去年、不動産への融資規制緩和や自動車の減税措置、インフラプロジェクトの継続など、かなりアクセルをふかしました。通貨の面では、基本スタンスのはずの自由化、国際化とは逆の動きとなる資本規制強化に乗り出しています。これによって人民元での貿易決済の額は、前年比で約30%も減少して、存在感が後退したわけですが、それよりもボラティリティを抑えることを重視しているといえるでしょう。

  • 尾河なりふり構わないとなると、債務問題の悪化も気になるところですね。一時期警戒されたシャドーバンキング(銀行以外の金融仲介業務)の現状は、どうなってるのでしょうか。
  • 棚瀬

    基本的にはまったく解決していないと思います。景気が回復してクレジットプロファイル(信用度)が改善するようならいいのですが、景気は緩やかに減速しているぐらいですから、クレジットプロファイルはむしろ悪化しているはずです。

    しかし、当局が手を回したのか「理財商品(高利回りの投資信託など)」に関しては、デフォルトの一歩手前でなぜか買い手が現れて償還されてきました。このため、不良債権処理が全然進んでいないのです。

  • 尾河遅々として進まない様子は、かつての日本の不良債権処理と似ているようにも見えます。
  • 棚瀬

    データの制約がありますが、私の試算では15年時点で、中国の不良債権の規模は日本の不良債権問題時と同程度に達する可能性がありました。足下ではさらに悪くなっているでしょう。中国の不良債権問題が深刻化したら、1990年代の日本以上のインパクトが出てもおかしくありません。

    日本の不良債権問題の議論で軽視されがちですが、日本の潜在成長率が90年代にものすごく落ちていたことは軽視できません。また日本では、不良債権の処理をし終わったときに景気が悪くなっていたため、景気の低迷が続く中、いくら処理をしても不良債権は減少せず、危機が長期化しました。

    中国が不良債権処理で日本と同じ轍を踏むリスクが2年前に比べて高まっているとは思いますが、構造改革などで潜在成長率の減速を緩やかにとどめながら、不良債権処理を進めるというベストシナリオの芽も消えていません。ソフトランディングに期待したいところです。

  • 尾河資本流出の問題もありますね。中国では国民が自国通貨を信用していないということでしょうか。
  • 棚瀬

    将来不安や景気減速だけでなく、制度の不透明性などをも回避するために海外に資金を逃避させる動きがあるようです。

    また、キャリートレードの巻き戻しもあるでしょう。リーマンショック以降、ドルを買って人民元に投資する取引が流行りました。ドルがずっと量的緩和で金利がほぼゼロのところ、国内の人民元の金利は高かった。しかも、人民元安のリスクが認識され始めた2014年ぐらいまで、人民元高トレンドでしたから、金利は高いし為替は下がらないとの思惑から、必ず儲かる取引とみられていました。これによって積み上がったポジションが、巻き戻されているのです。人民元の先安観が、これに拍車をかけました。

    ただ、相当程度、巻き戻されたので、ピークは過ぎたでしょう。そこから来る人民元売り圧力は一頃よりは弱まっていると思います。

新興国の暴落リスクは減退

  • 尾河個人投資家が新興国通貨に投資するに当たっての注意点はありますか。
  • 棚瀬

    投資目的を明確にすることがまず重要でしょう。新興国の通貨は、それぞれ異なる性質があります。その通貨のどの性質に着目して投資するかで、投資スタンスも変えなくてはいけません。

    例えば、ひとつの魅力は高金利です。長期投資ほど、このメリットが生きますが、短期トレードであれば、金利はあまり関係ありません。一方、売られ過ぎた通貨の巻き戻しで利益を取ろうとするなら、トレード的に手がけても良いでしょう。

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  • 尾河日本では、新興国の情報が圧倒的に少ないですね。リアルタイムで情報を取りにくい個人投資家の場合、短期的な動きに振り回されず、ひたすら持ち続ける長期戦略に勝機がありそうに思えます。
  • 棚瀬

    情報がない中での投資では、割り切りも重要でしょうね。個人投資家にとっては、新興国の高金利はわかりやすい魅力でしょうから、長期スタンスはありですね。

    例えば、5年の債券であれば、5年間デフォルトがなく、通貨の大暴落がないようなら、高金利のメリットを生かせる可能性が高いです。つまり、90年代の通貨危機のようなリスクがあるのかないのかだけを見ておけばいいと考えるなら、日々のニュースに右往左往する必要もなくなるでしょう。

    少なくとも私が普段、リサーチしているような主要な新興国通貨では、ソブリン(国債)のデフォルトリスクや通貨の大暴落のリスクは低いと思っています。ソブリンのデフォルトリスクは、公的債務の対GDP比を見ますが、新興国の中でも一番高いブラジルやハンガリーでも80%を切るぐらいですから、日本を含む一部の先進国に比べても、遙かに財政状況は良いといえます。

  • 尾河通貨危機の際とは資金の流れも変わってきていますね。
  • 棚瀬

    以前の危機の引き金になったソブリンリスクは、対外借り入れをベースにしていました。国内に金融市場があまりなく、貯蓄も十分でなかったので、成長を支えるマネーを外から引き込まないといけなかったためです。当時の新興国通貨は信用がなく、ほとんどドル建てで借りていました。しかも固定相場となると、通貨が暴落して自国通貨建てに引き直したときに債務残高がものすごく膨らんでしまい、デフォルトになりやすかったのです。

    今は対外債務だけで見ると、対GDP比でハンガリーの40%弱が一番大きいぐらいです。相当減っているのです。新興国通貨の信用力が増していますから、自国通貨建ての対外債務も増えていますので、通貨の下落で債務が膨張する確率も低下しています。固定相場の国も、徐々に減っています。

    主要新興国では、テールリスクへの過度な警戒は必要ないでしょうから、後はお好みで(笑)。

  • 尾河そんな個人投資家が通貨を選ぶ際の羅針盤になりそうなのが、ご著書の『グローバル通貨投資』(日本経済新聞出版社)ですね。拝読させていただきましたが、非常にわかりやすくて初心者でもプロでも参考になる内容です。

為替の基本、米ドルに立ち返る

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  • 尾河金融界では、先進国通貨と新興国通貨の分析で担当者が別々のケースが一般的ですが、棚瀬さんは網羅的に見ていらっしゃいます。かなり大変そうに見えますが、コツのようなものがあるのでしょうか。
  • 棚瀬

    各国の事情だけを追うと目線が定まりにくいですから、為替にとって一番大事なドルのトレンドに着目するのがいいでしょう。ドルが売られれば、新興国を含めてほかの通貨が買われているといえます。きわめてオーソドックスではありますが、ドルのトレンドを決める米国の金融政策や金利は、新興国相場にとっても重要なのです。

    市場のリスクセンチメントも重要です。リスク回避の時に買われる新興国通貨は、基本的にありません。株価や恐怖指数(VIX指数)などでウォッチしたいところです。

  • 尾河個人投資家の方からは、為替アナリストとして必ずチェックしているものは何かと問われて回答しにくいことがあります。政治リスクなどでボラティリティが高まっていれば、VIXや金利を見るといった基本動作は確かにあります。ただ、為替はテーマで動く側面があります。市場の関心があるテーマに向かっていれば、他の要素の重要性は低下しますね。
  • 棚瀬

    そのとおりだと思います。いつも見ているのを問われれば、相場そのもの、となります。為替を予想するので、まず為替を見ないといけない。なんで動いたのか、と考えて、金利をみたり、株をみたり、となりますからね。

    ただ、相場の先に行くのは至難の業ですね。追いつくのがせいぜいでしょう。日々の相場を虚心坦懐に見て、今の相場が何で動いているのか現状を正しく認識するよう努めることです。

  • 尾河まずは相場を見てください、ということですね。ソニー銀行のホームページでもチャートが見られますから、活用していただけると嬉しいです(笑)。
  • 棚瀬その際には、見方が重要ですね。例えば、単に金利差を見て、スプレッドが広がったからドル円は買いだとの見方は、常に正しいわけではありません。ドル円と金利差の相関は、それ程安定的ではないためです。毎日見ていて、相関の変化に気づいたのなら、その背景を考える事が重要でしょう。
  • 尾河プライベートではワインがお好きでいらっしゃいますね。ワイン農家の家系まで把握していらっしゃることには驚きました。とにかく、いろんなことを調べるのがお好きなんですね。
  • 棚瀬そうですね。いろいろなことに関心があります。興味が湧いた分野では、とにかく3冊ぐらい本を読みます。基礎的な知識を得た上で、興味が持続するなら深掘りすることもあります。雑多な知識と新興国のリサーチは、共通点があるかもしれませんね。

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