ストーリー

アメリカ本土の超ボリュームバーガーをそのまま日本へ。新しい顧客層を取り込む“ファスト・カジュアル”が目指すもの

FATBURGERのランチはハンバーガーとドリンクのセットで1,100円程度。手頃な価格帯でありながら味は本格的だ。アメリカでは“ファスト・カジュアル”と呼ばれる。「現在の日本のバーガー市場には、この層の需要が必ずある」と語るのは、株式会社Green Micro Factory(以下、GMF) 取締役のニコラ・ヴィエルジュ氏だ。

アメリカ本土の味をそのまま日本へ


※店舗はイメージです。

日本の外食市場では“本格派バーガーショップ”が一定のカテゴリーとなって定着した感がある。まだ首都圏や都市部を中心にしたブームという見方もあるかもしれないが、各チェーンが首都圏のモデル店舗の事例をベースに全国的に展開をしていく予定であることは間違いない。
この市場に2018年4月下旬、満を持して日本一号店を出店するのがアメリカの有名ブランドFATBURGERだ。

1952年にロサンゼルスで発祥したFATBURGERは、現在は世界5大陸、20ヶ国で200店舗以上を展開している。FATBURGERの特徴はなんといってもハンバーガーの圧倒的なボリュームにある。FATBURGERのハンバーガーは普通サイズとされる「オリジナルバーガー」でもパティの重量は115gもある。日本の一般的なチェーン店のハンバーガーのパティは40gだというから、そのボリュームはかなりのもの。さらに、「トリプルバーガー」なら115gのパティが3枚、「チャレンジメニュー」と名付けられた最大サイズのハンバーガーはパティが6枚だ。あまりにもボリューミーなハンバーガーの姿から、文字通りの「FAT」だと思う人も少なくないだろう。しかし「FAT」には「Fresh, Authentic, Tasty」という想いが込められているのだ。その名前の通り、「FATBURGER」では、創業時から素材選びにも調理法にもこだわりを貫いてきた。ハンバーガーのパティは高品質な牛肉の赤身のみを使用し、バンズも手作り。野菜は新鮮さにこだわり、調理にはコレステロールゼロの油を使用するなど、ヘルシーさを追求している。

実はこれまでの日本市場で一般的に好まれてきたハンバーガーは、パティの脂肪分が40%ほどであり、柔らかい。そのうえバンズも気泡の多い柔らかい生地が主流だ。しかしFATBURGERのパティの脂肪分は20%程度。バンズもこの赤身肉のボリュームに負けない、ずっしりとした食べ応えがあるタイプだという。
「アメリカはハンバーガーの本場。アメリカ本土の味をそのまま日本へ持ってきます」とヴィエルジュ氏は語る。

流行の発信地である渋谷への出店

FATBURGERの日本国内における出店ライセンス契約の締結交渉を担ったのは、GMFの親会社である株式会社ジー・スリーホールディングスだ。同社は10年以上前から子会社である株式会社SBY(以下、SBY)の事業として、SHIBUYA109で店舗型の情報発信スペースを運営してきた実績がある。「渋谷カルチャー」を国内外に発信する役割を果たし、ジー・スリーホールディングスは、渋谷に「新たな集客の目玉となる飲食店」を誘致する計画を数年前から構想していた。
ヴィエルジュ氏によると、「実際にアメリカに行き、いろいろなレストランをリサーチしました。そして最終的に、渋谷という立地に合い、ターゲット層にもマッチするFATBURGERに出会いました」

FATBURGERは現在20ヶ国で展開しており、いずれの国でもアメリカ本土と同じメニューをそのまま展開して成功を収めている。直近では、イギリス、パナマ、中国、フィリピンで新店舗がオープンした。すなわち、他国でのフランチャイズマニュアルがしっかりと確立されているこということであり、これがFATBURGERを選定する大きな理由ともなった。一方では、アメリカ本社であるFAT Brands, Inc.も日本市場での今後の展開に大きな期待を寄せているという。FAT Brands, Inc.は2017年にNASDAQへ上場を果たしたが、上場後初の海外出店先が日本なのだ。

「SBYは、SHIBUYA109の集客改善を目的とした雑貨ショップを2007年から出店しました。これは情報発信を兼ねたスペースでもあり、人気モデルをスタッフに起用してイベントの開催や、話題のキャラクターとのコラボ商品を限定販売するなど、多様な手法で渋谷カルチャーの発信地としての役割を果たしてきました。結果的に、ショップに集まった人たちはシャワーのようにSHIBUYA109全館に流れ、さらに渋谷の街に流れていった。流行の形成や発信、さらに集客手法に多様なノウハウを持つ当社のポテンシャルと、アメリカ本社が持っていた日本市場への志向性とがぴったりとマッチしたようです」

FATBURGER日本一号店は渋谷駅前に出店する。昔ながらのアメリカンダイナー風の内装で、店内席数は50席、店外にも飲食スペースがあり、店内店外どちらでもFATBURGERの味を楽しむことができる。

メインターゲットは時代の先端を担う20歳前後の若年層から30代の社会人、さらには国内外からの来街者を巻き込み、彼らの感性に訴えかける「良質なたまり場」を形成していくことを目指すという。

渋谷はもはや外国人観光客にとっては一大観光地であることから、インバウンドの需要も充分に見込まれるだろう。


※店舗はイメージです。

アメリカの“ファスト・カジュアル”は受け入れられるのか

「FATBURGERはおいしいだけでなく、高品質でリーズナブル。若年層だけでなく、食に強いこだわりを持つ大人も取り込めるはずです。パティは注文を受けてから焼き始め、さまざまなトッピングによるカスタマイズも自在。ソフトドリンクだけでなく豊富なアルコールメニューもそろっており、仕事終わりに軽く飲めるバーガーショップとしても利用できます」と、ヴィエルジュ氏は言う。

現在の日本のバーガー市場は、客単価数百円の格安バーガーと、客単価2,000円以上の高級バーガーの市場に二分していると言える。高級バーガーショップはもちろん人気があるのだが、高価格であることからなかなかリピーター層を形成することができていない。
「その中間層を取り込めるのがFATBURGERだと考えます。これは、アメリカではファスト・カジュアルと呼ばれるカテゴリーであり、これを日本の市場へ定着させたい。FATBURGERは、ランチならハンバーガーとドリンクのセットで1,100円程度。夜はアルコールとサイドメニューを追加しても2,500円程度と想定しています。パティ1枚のオリジナルバーガーは680円ですが、アメリカと全く同じ仕様で非常にボリューミーなので、普通サイズでも充分に満足していただけると思いますよ」

ダブルバーカーは980円、トリプルバーガーは1,280円。パティ6枚を重ねたハンバーガー「チャレンジメニュー」は2,560円で、これはアメリカの「XXXL」と同じ商品だ。ヴィエルジュ氏は、「チャレンジメニューを完食した人は店内に写真を飾るなど、お客さまもスタッフも楽しめるようなエンタメ性も演出していきたい。3月頃からはFacebookやLINEでのプロモーションを開始し、Webサイトもオープンします。オープン後のプロモーションについても、アメリカ本社のサポートによりさまざまな展開が計画されています。アメリカンダイナー風のレトロな内装は非常にインスタ映えするし、SNSでも拡散されていくでしょう」と目論む。

現在、日本一号店のオープニングスタッフはアメリカで6週間のトレーニングを受けている。「元気で明るくエンタメ性のある接客方法もトレーニングマニュアルにパッケージ化されているので、オープンにあたって心配はしていません。いずれはポイント制なども導入し、ファンが次々に友達を連れてリピートするような店作りをしていきたいと考えています。また、当社のノウハウを応用したイベント企画を通じて集客するなど、さまざまな可能性があると思っています」

アメリカ本社のフランチャイズマニュアルはしっかりと確立されているが、各国の特色を活かしたオリジナルアレンジメニューを考案できることは大きな特徴だ。日本一号店でも、オープン後の状況次第でハンバーガーやサイドメニューに日本ならではのメニューを展開する可能性もあるそうだ。
開店準備に忙しい中、ニコラ・ヴィエルジュ氏は力強く語る。
「まずは一号店で1日300人の集客を達成することが当面の目標です。グループ会社で渋谷での集客に実績があるとはいえ、本格的な飲食事業を手掛けることは初めてなので、しっかりとした土台を作りたい。渋谷で手ごたえを得られれば、その後は国内の大都市圏へ順次出店していく予定です」

※ 本ファンドの対象は日本一号店の店舗のみとなっております。