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第2部講演:2007年の為替相場見通し 講師:山下 政比呂 氏(やました・まさひろ)株式会社フィスコ リサーチマネージャー
用語解説
※米国 雇用統計※
- 事業所調査統計 ⇒ 非農業部門雇用者数 (10月:+92,000人)
- 2006年1月〜10月:月平均+146,800人
雇用情勢の景気回復 ⇒ +150,000人 - 過小算出(2005年4月〜2006年3月) +810,000人
2,688,00人 ⇒ 2,898,000人(+241,500人) 月平均+67,500人
- 2006年1月〜10月:月平均+146,800人
- 家計調査統計 ⇒ 失業率 (10月:4.4%)
- 自然失業率(NAIRU) 5.0%以下 ⇒ 賃金インフレ
Non-accelerating inflation rate of unemployment
非インフレ加速的失業率 - 2006年1〜10月:4.4%〜4.8%
2006年:5.1% 2004年:5.5%
- 自然失業率(NAIRU) 5.0%以下 ⇒ 賃金インフレ
非農業部門雇用者数が毎月15万人増えていけば景気回復といえますが、昔ほどはよくありません。自然失業率は2006年1月〜10月まで4%台で推移していますが、5%以下では賃金インフレとなり、金利を下げにくい。5%台になれば賃金インフレは解消され、利下げの理由になります。
※ポリシーミックス※
財政政策と金融政策をあわせたものをポリシーミックスといいますが、安倍政権は財政再建を掲げていますから、成長するためには金利を上げては困ることになり、円安に進むことになります。アメリカは金利引き締め状態で、インフレでもデフレでも通貨高になります。日米のポリシーミックスからはドル高円安という構図が出てくるわけです。
※極東の地政学的リスク※
- 東西ドイツ統一
- 1989年11月:ベルリンの壁崩壊
- 1990年10月:東西ドイツ統一
- 1991年8月:ソ連クーデター失敗 ⇒12月:ソ連邦崩壊
- 東西ドイツ統一のコスト負担 約1500億マルク 西独GDP比5%
- 人口比率&経済格差 西独:東独=4対1 =3対1
- US$/DM:1.4430マルク⇒1.8425マルク 約28%下落
- 朝鮮半島統一
- 中国:緩衝地帯という位置付けから在韓米軍と接する事態となる
GDP(2005年)2兆2,250億ドル $1,700(一人あたり) - 韓国:北朝鮮の突然の崩壊により統一コストを負担する事態を避けるため、太陽政策継続
GDP(2005年) 7,875億ドル $16,422(一人あたり) - 北朝鮮:GDP(2004年) 400億ドル $1,700
- 米ランド研究所(2005年試算):約6,700億ドル @120円=約80兆円
- 大手米系金融機関:数年で約2兆ドル規模
- 人口比率&経済格差 韓国:北朝鮮 =2対1 =10-12対1
- 中国:緩衝地帯という位置付けから在韓米軍と接する事態となる
極東の地政学的リスクはどう影響するかというご質問もありましたが、朝鮮半島統一の問題は関係がありそうです。
朝鮮半島統一の場合、南北格差は東西ドイツより大きく、統一費用はドイツ統一より大きくなります。
米ランド研究所の試算では統一コストが80兆円程度、大手米系金融機関の試算では数年で約2兆ドル規模(二百数十兆円)といわれています。そういった資金を韓国や中国が負担できるはずがなく、日本が負担しなければなりません。
1000兆円の借金があるところに、統一コストの負担がかかると大変です。現在でも北朝鮮の地政学的リスクで円が売られていますが、2010年位に統一による円安がくるのではないかと思っています。
※外貨準備高※
- 世界の外貨準備:$4兆1710億(2005年度)⇒2兆8100億
- (1)ドル 66.5% (2)ユーロ 24.4% (3)ポンド 3.7% (4)円 3.6%
- ロシア中銀:約$2679億(06年10月)
- ドル 45%・ユーロ 45%・ポンド 10% 2007年以降円建て運用開始
- アラブ首長国連邦(UAE) 約$250億
- ドル98%⇒50%へ引き下げ ユーロ+ポンド+円=50%程度シフト
- カタール
- シェイク・カタール中銀総裁「外貨準備運用変更なし」
- スイス中銀:約$360億(06年9月)
- ドル 26%←27% ユーロ48% ポンド10% 円4.9%←3%
- 中国人民銀行:$1兆 (06年10月) 米国債⇒社債
- 日本銀行:$8855億(06年10月)安全性&流動性=米国短期国債
外貨準備高については、ロシア中銀が2007年以降は円建て運用を開始すると言っています。中国は1兆ドルを、分散投資しようと話していますが、普通、貿易収支が黒字であれば資本収支は赤字になるところが、中国は貿易収支も資本収支も黒字です。
中国の政策金利は6.4〜6.5%ですから、6.4〜6.5%で調達して、6.4〜6.5%で運用します。2005年から3%程度、円高になっていますから、300億ドル(3兆円)程度ロスが出ているわけです。そのロスをなんとかするためには、円など、低金利通貨で運用するわけがありません。オーストラリアやニュージーランドなどの高金利国で運用すればいいのですが、市場が小さい。中国がドル離れを図ろうとしても、実際に分散投資は考えにくいのではないかと思います。
米国の収支 2005年
| 経常収支 | 資本収支 | Investment & Savings | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 財収支 | ▲7,827 | 資本移転 | ▲43 | 国内総貯蓄 | 16,680 |
| サービス | 660 | 海外直接投資 | ▲1,006 | 個人貯蓄 | ▲421 |
| 所得収支 | 16 | 証券投資 | 5,846 | 財政収支 | ▲3,235 |
| 経常移転 | ▲860 | 銀行 他 | 860 | 国内総投資 | ▲25,053 |
| 齟齬 | 104 | ||||
| 外貨準備 | 140 | その他 | 458 | ||
| 経常赤字 | ▲7,915 | 資本黒字 | 7,915 | 貯蓄-投資 | ▲7,915 |
2005年のアメリカの経常収支は約8,000億ドルの赤字です。アメリカ人は貯蓄をせずに物を買っているから、経常赤字になる。経常赤字を減らすためには為替を変動させるのもいいが、それ以上に物を買わないようにすればいいという考え方です。そのために金利を上げ、株や住宅価格を下げようとしているわけです。
※安倍政権の政策※
安倍政権は「成長なくして財政再建なし」がモットーですから、成長のために金利を高くすることはできません。2008年には大統領選挙、オリンピックがあり、国債を大量に借り換えますが、その際に金利が高ければ、高金利で10年間借りなければならず、財務省は2008年まで金利を上げて欲しくないのです。
また2007年に選挙がありますし、増税のためには景気が良くならなければいけないので、やはり金利を上げるわけにはいきません。消費税導入、増税の際には円安になったように、秋以降に消費税率が上がると円安になる可能性があります。
利上げについては、2007年春位に小幅で上げる程度ではないかと思っています。
※円キャリートレード※
低金利で先安感のある通貨を借りて外国為替市場で売却し、高金利で先高感のある通貨を購入して運用する取引手法を「円キャリートレード」といいます。低金利で先安感のあるのが円で、先高感があるのがドルや原油や金です。海外の投機家は最近、住宅を使ってキャリートレードをしています。海外の金利が高いわけですから、日本の2%程度のローンを借りて、自分たちの家をもつのです。
金利が反転すると、LTCMやタイガーファンドが破綻し、147円から108円まで暴落した1998年のロシアの金融危機のようなことになります。
※米国の対外不均衡是正圧力※
1985〜87年、200円のときにアメリカが日本に対して円高圧力をかけてきた当時の貿易黒字は500億ドル程度でしたが、100円になった1995〜96年当時も貿易黒字の額は変わりません。
中国によって多くの貿易赤字が発生しているとしても、8元を4元にしたところで変わらないと考えることもできます。
為替ではなく、アメリカの国民が貯蓄を増やせば、財政赤字も減るのですが。
※第3次石油ショック※
原油に関して重要なのは、日本では30年前から毎年15億バレル以上輸入しており、1バレル=80ドルでは1,200億円になり、為替レートによっては10兆円といった規模になることです。
仮に貿易黒字が10兆円であれば、原油を輸入するだけで円安要因になります。今は落ち着いていますが、中東情勢次第で2007年の原油価格はどうなるか分かりません。

