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株価下落の一方でGDPは高水準に推移
昨日(5月30日)はインド株がかなり値下がりし、心配になられたかたもいらっしゃるかも知れません。昨日3.6%程度下がり、今日(6月1日)は2%程度上がっています(実際の6月1日のインド株式市場はその後下落し、結果3.1%のマイナス)。しかしインド経済そのものがおかしくなったわけではありません。今年の1月からインドの株価指数は5割近く上がっており、これは上り過ぎであり、調整があるだろうと思っておりました。
最近1週間程度でアジアのエマージングカントリーから50億ドルほどの資金が流出したといわれています。インドからは現物マーケットでは16億ドル程度、フューチャーズ(先物取引)を含めると流出は5億ドル程度です。相当キャッシュポジションが大きくなっており、パニックでインドから外資が逃げたというより、上り過ぎなので、少し下がるのを待って買おうという状況になっているわけです。
昨日発表されたインドのGDP統計も非常にいい内容でした。インドはこのところ、6〜7%の成長率で推移してきましたが、昨年4月〜今年3月までの1年では8%を超え、今年の1〜3月では9.3%。いずれ成長率で中国を抜くだろうといわれていましたが、かなり近づいてきました。
製造業でみるとこのところ6〜7%の伸びでしたが、これが8.9%。IT大国であるインドではサービス業が10%以上の成長率でインドを引っ張ってきましたが、12.3%とさらに伸びました。これまで足を引っ張ってきた農業も5.5%の伸びと、好成績でした。農業の伸びは一時的なものとの見方もありますが、米、麦のほか、フルーツや野菜など、多様化しており、インドのチダンバラム財務大臣が農業セクターは3〜4%の成長性は持続できるではないかとコメントしています。サービス業は10%以上伸びており、製造業も良くなっていますから、インドの政府関係者は農業が4%程度で伸びていけばGDPは10%に近い成長が可能であると言い始めています。
ここで注目したいのが製造業の成長率が高くなってきたこと、農業が良くなる兆しを見せていることです。株価が大きく落ち込み、今日、若干戻しているのは、GDP統計が予想以上に良かったからです。
少なくとも30〜40年、インドは大きく成長し、成長率で中国を抜くであろうということは、私はほぼ確実だと思っておりますし、多くの人が確実視しています。有名なゴールドマン・サックスのBRICsレポートでは、2010年〜2015年の間に成長率でインドが中国を抜くだろうと予測していますが、2010年、2011年など、早い段階でそうなる可能性が出てきたのではないかと思います。
1991年の経済自由化でIT主導の高成長が始まる
インドは中国とはだいぶ異なる展開をしてきました。中国では1978年にトウショウヘイが改革開放政策を進め、成長が加速してきました。中国の場合、最初は華僑、次に日本や欧米など、外からの投資があり、高成長を遂げました。製造業はローテクからハイテクへ転換し、インドを追ってIT分野にも力を入れた。インドでは開放政策が行なわれたのは1991年で、中国に遅れること13年。インドの国際収支の大きな部分は、とくに1980年代から1990年代にかけて、ノンレジデントインディアンズ、華僑に対して印僑の人々の送金が占めていました。ところが1991年の湾岸戦争時にお金が入らなくなったこともあって外貨準備がゼロになり、IMF(国際通貨基金)の管理下に入りました。それで今の総理大臣であり、当時、財務大臣だったモンマハン・シンさんが、大改革をしました。
それまでのインドは民主主義でありながら、基本的に統制経済の国、社会主義の国で、設備投資は許認可制ですし、輸入についても関税が非常に高い。そのような統制経済を1991年に基本自由化しました。テンポは中国より緩やかですが、それ以降、インド経済が外に向かうようになったのです。
インドにとって幸運だったのは、その時期と重ね合うようにIT革命が起きたことです。インドのIT企業は1980年代から1990年代にかけて伸びました。私もインドのウィプロというIT企業の社外取締役、今は顧問をしておりますが、この会社も20年前には食用油の売上高2億円程度の小さな会社でした。1980年代に今のオーナーである人物がスタンフォード大学の工学部を卒業し、先代の死亡を機にインドに戻り、その会社をIT企業にかえました。今は売上が100倍以上になっています。バンガロールに本社があるインフォシスも、この10年〜15年に売上が毎年50%ずつ伸びてきた会社です。
もしIT革命が10年早く起きていればインドのIT企業はほとんど国営化され、今のような成長はなかったでしょう。経済発展論では農業から製造業、製造業もライトインダスからハイテク、ITと進むと考えられていますが、インドの場合は1990年代、IT企業やIT関連企業が国を引っ張ってきました。
インドの高等教育のレベルは非常に高いです。戦後、ネルーさんとか国民会議派が教育、とくに高等教育に力を入れました。日本でいうと東京工業大学、アメリカでいうMITという、インドでもっとも難関の工業大学・IIT(インド工科大学)が全国に7つあり、そこを中心にシステムエンジニアを育てる仕組みがインド中にできています。年間12万人程度、大学からSEが卒業します。
インド人には数学的能力があり、小学校で19×19まで掛け算を覚えます。9×9の5倍位です。最近、日本の文部科学省は暗記をさせるなといいますが、暗記は非常に重要で、19×19まで覚えることで数学の能力が高まるんですね。
またインドは8割がヒンズー教の国で、ヒンズー教の経典というか、神様の賛歌ともいえるリグベーダを子どもの頃に暗記させます。日本でも昔は論語を暗唱させられましたね。小さい子どものうちは中身は分からない。しかしそのことが、日本人の知的能力を相当高めたと思います。脳科学的に実証されているわけではありませんが、暗記させることで頭が活性化するのだとインド人は考えています。想像力は知識を組み合わせることですから、想像力が豊かな人は知識が豊富です。古今東西、レオナルド・ダ・ヴィンチなど、天才と呼ばれる人は皆、博識で、知識を使ってクリエイトしていくわけです。
インドは医療も優れており、インドのエリートはSEになるか、医者になるケースが多いです。心臓関係、血液関係(は特に強い)。「ストロベリー・ロード」という小説で有名な石川好さんという作家がいらっしゃいますが、彼は手や足の先に血液がいかなくなる血液の病気になり、日本では手足を切断しなければいけないと言われましたが、インドで手術をし、救われたといっています。アメリカの病院でもインド人のお医者さんが多く、インド人が引き揚げたらアメリカの病院は先生がいなくなる、という人もいます。
ただし、初等教育を受けるのが半数位で、平均的な教育レベルには格差がある。字が読めないかたが人口の4割程度いる一方で、優秀な人はかなり優秀、という状況です。
インドは地方分権が進んでおり、地方によって政党が異なり、すべて連立政権です。それまでインド人民党(BJP)というヒンズー教の連合体でしたが、2004年5月の選挙では、予想に反して国民会議派が勝ちました。ガンジーさんの直系である国民会議派ソニア・ガンジーさんが非常に人気があり、農村などの貧困層に支持されています。
国民会議派は、農村を豊かにすると強調しています。インドは飛行場もきれいではないし、道路も港湾もよくない。電気はすぐに停電するし、使用に制限があるなど、インフラが貧しい。郊外に行くと、牛が出てくる。そこでインフラの整備を公約にしています。IT企業が雇うのは知識レベルの高い人で、庶民の雇用を増やすには製造業や建設労働が必要だからです。
- はじめに
- 株価下落の一方でGDPは高水準に推移
- インドの中産階級が日本の人口を超える
- 消費の拡大で第二の飛躍の時期へ

