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金利レポート
フィスコ金利レポート 円金利見通し:2006年5月31日

今夏にはゼロ金利解除

去る3月9日、日銀は5年に及ぶ量的緩和政策の解除を決めました。その後は着々と「ゼロ金利解除」に向けて準備が進んでいます。日銀は、当座預金残高を量的緩和解除前には常時30兆〜35兆円で推移させていましたが、それを、所要準備(*)をやや上回る6兆円程度に向けて着実に減らすオペレーションを実施してきています。

  • (*)準備預金制度では、金融機関は、受け入れている預金等の一定比率(準備率)以上の金額を日本銀行に預け入れることが義務づけられています。預け入れなければいけない最低金額を「法定準備預金額」あるいは「所要準備額」といいます。

こうした現状からは、早ければ6月14日、15日に開催される日銀金融政策決定会合での「ゼロ金利解除」もあり得るとは思いますが、市場関係者の多数的な見方としては、7月3日発表の6月調査の日銀企業短期経済観測調査(短観)を確認した後の7月13日、14日に開かれる会合で実施される可能性が現時点では一番高いものとなっています。したがって、今夏には「ゼロ金利解除」はほぼ確実と見てよいのではないでしょうか。
逆に、この夏のタイミングを逃しますと、9月末には、小泉首相の任期満了に伴う自民党総裁選挙が本格化し、9月以降は新首相が誕生することになりますので、このタイミングでの「ゼロ金利解除」では、場合によっては時の政権によって封印されてしまう可能性も否定できないことになり、日銀としてはこうしたリスクを避けたいと考えているはずです。

ゼロ金利解除時のインパクト

さて、この夏にゼロ金利解除となった場合のマーケットへのインパクトですが、短期金利は多少なりとも、動揺を伴う金利上昇という場面があったとしても、既に現時点ではゼロ金利解除を織り込む動きもあり、2年国債が1.0%を超えるまでの金利上昇はないと思われます。また長期金利も10年国債利回りで2.0%を大きく超えることは想定しにくいのではないかと思われます。むしろ、ゼロ金利解除後は、既に織り込み済みということもあり、特に10年などの長期金利については低下地合いとなってもおかしくはないと見ています。

ゼロ金利解除の意味

日銀が、3月9日に市場予想よりも前倒しで量的緩和解除を行い、さらに当初事前予想よりも前倒しで今夏にもゼロ金利を解除する(であろう)という動きから見て取れるのは、「焦り」です。なぜ、こうまでしてゼロ金利解除を行ったかというのが、改めて意識されることになるのが今秋ではないかと見ています。
日銀は、ゼロ金利解除をすることにより、その時点でいわゆる金融政策の自由度を得ることになります。それはすなわち、足元の物価上昇率に対して機動的な金融引締めを実施することが可能になることを意味します。たとえば、商品市況の逼迫に伴う物価上昇を短期金利の調整により抑え、それが引いては長期金利の上昇を抑制することにもなる、と考えているのではないでしょうか。
今、日銀が警戒しているのは、都心部を中心とした不動産バブルであり、商品市況に基づくインフレです。そうしたバブルを伴うインフレ懸念をこれ以上過熱化させないとの意図をもって、積極的かつ断続的、持続的な金融引締めを行おうとしているのかもしれません。もしそうならば、日銀は今後の消費者物価指数の上昇地合いを粒さに見極めつつ、年内幾度かの利上げさえも視野に入れているのではないかと思われます。

ゼロ金利解除後、秋以降の金利動向について

ゼロ金利解除以降は、日銀にとっては、足元の物価指数動向を最も注視しながらの金融政策運営となることが想定されます。なお、その消費者物価指数は8月には基準改定となるため、同指数も一旦は0.2%程度押し下げられることとはなりますが、その後は反転上昇基調となり、消費者物価指数の上昇基調には変化がないものと見ています(特に秋以降は、ガソリン価格、電力料金等、原油高を反映する物価上昇が懸念されています)。
こうした足元の物価情勢を着実にコントロールするべく、日銀は機動的に利上げを実施するのではないかと思われます。
では、景気に対してはどうかといいますと、日銀自身は楽観視していると思われます。それを改めて確認させうるのが8月11日に発表される4−6月期国内総生産(GDP・速報値ベース)ではないかと見ています。ここでは、この期(4−6月期)の天候不順もあり、消費関連が多少なりとも弱含みになる可能性がありますが、逆に改めて内需主導の景気持続地合いが確認されることにもなりそうです。この点からは、日銀としては景気後退とインフレ警戒が同時に起きるというスタグフレーション状態という経済情勢に陥るまでには至らずとの判断となり、粛々と物価情勢を意識しての引締め政策を推し進めていくことも可能ではないかと見ています。
今夏、日銀がゼロ金利を解除するという前提のもと、想定される年末までの短期金利は、消費者物価指数を睨みながら金利上昇バイアスは働くことから、2年債利回りについては、ジワジワと1.0%を超えるレベルにはなるものの、その上限は1.35%近辺までと見ており、年末にかけて緩やかに上昇していくことになりそうです。一方、長期金利は、今夏のゼロ金利解除時点で、瞬間的に2.0%をつけるものの、その後は一旦低下となり、秋口にかけて再度利上げ警戒が醸成されたとしても、日銀の機動的な金融引締めを好感する結果、短期金利と比べてもより緩やかな上昇に留まり、2.3%〜2.4%あたりが年内最高利回り水準に留まるのではないかと見ています。
ただ、懸念される点は、為替市場における米ドル・円の行方であり、米金融政策の行方であり、米経済情勢だといえます。夏以降、米利上げ打ち止めとなる可能性が高いこともあり、その中にあって日銀が持続的な金利引き上げスタンスを明示したりすると、円高進行を招くことになります。これが円高、本邦株式安を助長することになると、日銀としては、ゼロ金利は解除したものの、年内利上げが難しい局面に直面する可能性があります。そうなった場合は、機動的な金融政策が封じ込められ、急速にインフレ懸念が台頭、長期金利の大幅上昇を招く危険性も想定されます。今夏以降、持続的な金融引締めが日銀としてできるか否か、そのあたりが年内の金利動向を見る上では重要といえそうです。

予想レンジ
2年国債利回り0.95%〜1.35%
10年国債利回り1.85%〜2.40%

フィスコ シニアマーケットアナリスト 柏木淳二

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レポート提供:株式会社フィスコ

http://www.fisco.co.jp/

株式会社フィスコは1995年5月に設立された日本では数少ない独立系の金融市場の調査機関として、機関投資家や個人投資家へリサーチサービスを提供しています。

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