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外貨情報
外貨預金活用ガイド

必ずお読みください 外貨預金の重要事項

vol.5 通貨の動きをみる(1)

注目は原油価格と税制改正の動向

これからの為替の動きを考える時に、皆さんに注目してほしいポイントが2つあります。ひとつは原油価格の高騰、もうひとつは2006年以降の国内の税制改正です。

2004年の日本の原油輸入の平均価格は1バレル37米ドルでしたが、2005年7月現在の時点で史上最高値を更新して60米ドルを超える水準で高止まっています。日本の石油輸入量は年間約15億バレルですから、昨年よりも20米ドル上がれば全体の負担増は約3兆円。これは日本の貿易黒字の1/4が消えて無くなる計算になります。

図:原油価格の推移

そこで把握しておきたいのが、原油価格が急騰して世界経済に打撃を与えた1970年代の石油危機の時に、米ドル・円相場がどうなったかということです。第1次石油危機の時、1米ドルは254.10円から306.90円まで上がりました。第2次石油危機の時は、175.50円から264.00円。二度ともドル高・円安です。別の原因もあったかもしれませんが、過去のパターンでは円が売られドルが買われたわけです。当時の原油価格を現在のインフレ水準で調整すると、80米ドルぐらいだといわれています。80米ドルになったら、第3次石油危機と呼んでもいい状況になるかもしれません。

そしてもう一点が、税制改正です。“恒久的減税”として1999年から導入された定率減税は2006年以降の縮小・廃止に向けて動き出していますし、小泉首相が退陣した後には消費税の税率アップが具体化するでしょう。こちらも過去のパターンを見てみることにします。

消費税がスタートした1989年、米ドル・円は130円から160円に上がりました。これだけでしたら信頼性の低いデータですが、橋本内閣が税率を5%にした1997年にも、120円から147円に上がっています。二度とも約20%の米ドル高・円安になったわけです。

このように原油価格の高騰と増税は、「経済に与える影響」と「過去のパターン」のどちらからも円売りの材料です。つまり米ドルが上がる前に、円を外貨に移してご自身の資産を保護した方がいいのではないかというのが、私の考え方です。

米ドルを検証する―政策として強い米ドルを目指すアメリカ

為替アナリストとして、私が常に注目しているのはアメリカの通貨政策です。米ドル・円相場はアメリカの意向で動いてきたといっても過言ではありません。「でも自分には、通貨政策なんて分からない」と思われる方もいるでしょうが、アメリカという国は公に発言したことを実行する、ある意味分かりやすい国です。特に重要なのは、グリーンスパンFRB(米連邦準備制度理事会)議長のコメントです。FRBはアメリカの金融政策を決定する機関。現在5期目を務めるグリーンスパン議長の言動は日本でも大きく取り上げられます。

グリーンスパン議長は2006年1月の引退を発表し、現在は後任にうまくバトンタッチしたいという思いを強く持っています。彼は「金利を中立的な水準に戻す」と発言し、2004年6月に長らく1%だった政策金利のFF(フェデラルファンド)レートの利上げを4年ぶりに行いました。以後、0.25%の利上げを段階的に行い、2004年末にはユーロの政策金利を抜き、2005年中には3.50〜4.0%ぐらいまでになると見られています。

一方ブッシュ大統領は2005年2月の一般教書演説で、確定拠出年金を2009年に導入することと、財政赤字の削減を公約として発表しました。1期目のブッシュ政権は「米ドルの価値を決めるのは市場」と米ドル安を容認しましたが、その背景には米ドル安は国内の製造業にとって都合がいい、つまり選挙に有利という考え方がありました。しかし2期目は共和党の一大事業、小さな政府を目指して年金改革に乗り出しました。確定拠出型年金は年金を自分で運用するものですから、国の財政が安定していないと国民は安心できません。

それに呼応するかのように、グリーンスパン議長は2月の議会証言で「FFレートを連続6回も利上げしたのに、長期金利が上がらないのは謎」と発言しました。市場金利を上げるためにも、利上げペースを早める可能性を示したといえます。これはどんな意味かといいますと、安い金利で米ドルを借り、それを外貨に替えて海外で投資している人たちは気をつけなさいと。これから金利はもっと上がり、米ドル高になるから、早くお金を国内に戻した方がいいですよと、財政赤字の削減をサポートするメッセージを発したわけです。

二人の発言に共通するのは、為替を市場に任すのではなく、これからアメリカは政策として強い米ドルを目指すという意志です。両者の目的は明確ですから、失業者が少し増えたとか、景気が少し後退したといった程度で方針が変わることはないと私は思います。

ユーロを検証する―政治的問題を克服できるかの正念場

ここまで今後の米ドル高要因をお話しする形になりましたが、リスク要因もゼロではありません。金利水準の引き上げが景気失速を引き起こす可能性もありますし、住宅市場はバブルの状態です。崩壊すれば住宅ローン破産者が一気に増加し、個人消費は急減速するでしょう。中東や極東の地政学リスクも完全に解消されたわけではありません。

そのような米ドルの信用が揺らいだ時、ユーロは逃避先として選択されやすい通貨です。2001年の米国同時多発テロを契機に米ドル離れが世界で活発化した後は、各国がユーロへの分散投資を始め、2004年末には1ユーロ1.3670米ドルと、誕生以来の高値圏に到達しました。

ユーロ誕生によって、加盟国の金融政策は欧州中央銀行に一元化されましたが、財政政策は各国の財務省に委ねられたままでした。そこで加盟国は、年間の赤字はGDPの3%以内、累積の債務残高は60%以内に納めるという安定成長協定を作り、通貨の信頼性を担保しました。ところが2005年3月に規制が緩和されてしまいます。さらに5〜6月に は、ユーロ憲法の批准をフランスとオランダが国民投票で否決しました。投票には景気の低迷など内政に対する国民の不満や、イスラム圏であるトルコの加盟問題が絡んで、ユーロは経済的な歪みだけでなく、政治的・宗教的な問題も抱えるようになってしまったわけです。今は欧州統一の実現性そのものが問われているといっていいでしょう。

今後の注目はまず、政策金利2.00%の動向です。欧州中央銀行は24カ月連続で政策金利を据え置いていますが、ユーロ圏の景気低迷を受け、利下げ観測が台頭しています。

9月にはドイツの総選挙があります。信任動議を否決されたシュレーダー首相が解散に打って出たものですが、シュレーダー首相の社会民主党が負ければユーロにも少なからぬ影響を与えるでしょう。一方もうひとりの欧州統一の立役者シラク仏大統領も、2012年の夏季五輪誘致でロンドンに負けるなど失点が続いているので、支持率の推移が注目です。

欧州連合首脳会議は、2006年11月に予定していたユーロ憲法の発効の延期を決定しましたので、2006年11月を照準にしていた投資家たちは当面はユーロから逃げるでしょう。問題は下がった後です。政治的な問題からのユーロ圏の拡大の遅延、反ユーロ政権やユーロ離脱国の登場などがリスク要因です。

豪ドルを検証する―原油や一次産品の価格上昇に強い

豪ドルは米ドルが下がると上がり、米ドルが上がれば下がるというのが過去のパターンです。ただし為替の魅力がなくなっても豪ドルには金利の高さ(政策金利5.50%)という魅力があり、オーストラリアは資源国ですから、原油価格や、金や鉄鉱石などの一次産品の価格の上昇には強い通貨でもあります。そういった意味では、米ドルも円も嫌だという方々は、とりあえず今のところはユーロを避けて、豪ドルを持って金利を取りにいくというのもひとつの考え方だと思います。

2005年第2・四半期の経常赤字は126.4億豪ドルとなり、過去最大を記録した第1・四半期の150.06億豪ドルから減少しました。貿易赤字は、2005年1月から7月までの月間平均金額は約18.6億豪ドルとなっています。オーストラリアの経常赤字、貿易赤字は依然として大きく、格下げの懸念は残されたままです(格下げのリスクがあるから、外国からの資金を呼び込みやすいように金利が高いともいえます)。金融政策では、雇用情勢の改善などで、2005年末から2006年初にかけて利上げの可能性が高まっています。今後の雇用統計、国内総生産、消費者物価指数などの経済指標をよく見ておく必要があります。

貿易収支の健全化のためにはアジアとの貿易の拡大が重要ですが、2005年3月に中国がANZUS同盟(アメリカ、ニュージーランドとの安全保障同盟)の見直しをオーストラリアに要求しました。「台湾をめぐる紛争に豪州を引きずり込む恐れがある」というのが理由ですが、これが中国向けの輸出拡大の支障にならないかも見守る必要があります。

この記事はasahi.comに2005年6月27日から2005年8月31日まで掲載したものを収録したものです。
為替レートその他の数字、情報はすべて掲載当時のものです。

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