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vol.4 通貨の種類を組み合わせる
為替は3つの惑星とその他の衛星の宇宙
リスク分散の後編となる今回は、複数の種類の通貨を組み合わせた、外貨の預け分けについてのお話です。前回述べたようにポートフォリオを組む本来の目的は、儲けを増やすというよりも、できるだけリスクを抑えること、つまりある商品のデメリットを、別の商品のメリットによって、できるだけ補うようにするということです。外貨預金であれば、あるリスクに対して違う方向に動く外貨に預け分けることが重要になります。それぞれの通貨の基本的な特徴を知ること、そして金利と為替レートのバランスを見ることを学んでください。
大前提は、世界の基軸通貨である米ドルを頂点に、ユーロ、円という3つを惑星のように考えることです。為替という宇宙の、三角形の大きな星座ですね。お金は、3つの中で今現在強い国へと惑星間の旅行をし、リスクが高まっている国からは逃げていきます。
一方で、その他の通貨は、3つの惑星の周りを回っている衛星のようなものと考えてください。特にカナダドルや豪ドル、ニュージーランドドルなどは「ドル圏」ともいわれ、その親分的なアメリカに政治面や経済面でリスクが高まると、お金が回避するように流れてくるというのが基本的な考え方です。

「米ドルを中心に分散投資」だなんて、あまりに教科書通りな話じゃないの? と思われた方もいるかもしれませんが、今こそ注目すべきと私は思います。現在のアメリカは好景気が続き、9・11以降のテロの不安から(完全にではありませんが)脱しつつある状態にあります。
特に経済面で皆さんに注目していただきたいのは金利の上昇です。アメリカには短期の市場金利の指標となるFF(フェデラル・ファンド)レートという政策金利があります。アメリカは長らく続いた超低金利政策を昨年6月から修正し、FFレートを2005年7月までに連続9回、0.25%ずつ利上げしていて現在は年3.25%まで上がっています(2005年7月19日現在)。これに連動して米ドルの定期預金の金利も1、2年前と比べてかなり上がってきました。アメリカのリスクが相対的に小さくなってきたということは、1、2年前あたりから外貨預金を始めたという方は、ポートフォリオの考え方を見直す時期かもしれません。

金利差と為替リスクのバランスを見る
外貨預金の金利を見る時は、為替リスクとのバランスを考えることが大切です。これは初めから一緒に考えると分かりづらいので、まずは単純に金利だけに注目して、その高い順番に通貨ランキングを作ってみてください。そして次に、自国の通貨である円や、基軸通貨の米ドル、または、いま投資している外貨との金利を相対的にチェックします。その通貨間の差が大きいほど(3%もあれば)、もし為替で損をしたとしても、金利収益で為替リスクは許容できる可能性が高くなるでしょう。逆に小さくなればなるほど、金利が為替変動に耐えられなくなる可能性が高まります。この考え方をベースに、あとは基本的に各国の経済力の強弱や、為替手数料といったものを加味して、預け先を分けます。
ここでちょっと脱線して、手数料について簡単なクイズを出しましょう。ある金融機関の為替手数料が「1米ドルあたり25銭」、「1ポンドあたり50銭」だったとします。さて、どちらの手数料が割安でしょうか。正解は「どちらともいえない」です。たとえば1米ドルが100円、1ポンドが201円だとしたら、比率では1ポンドあたりの手数料の方が割安になります。(米ドル:0.25÷100=0.25% ポンド:0.50÷201=0.249%)
さて、米ドルと反対の動きをする代表的な通貨がユーロです。これはチャートの大きな動きを比較すれば皆さんも分かっていただけると思いますので、インターネットなどをチェックしてみてください。リスク分散という意味では、米ドルの次の割合で持つ外貨ということになります。ただし、欧州は一つの通貨という形で経済的には一応一つにまとまりましたが、政治的には統一されてはいません。たとえばフランスとオランダの国民投票でユーロ憲法が否決されましたが、そういったリスクをどう見るかが重要になっています。
ユーロの動きで私が特に注目しているのは東欧です。今、東欧には欧州の先進諸国や日本の企業の工場が安い労働力を求めて進出しています。これが周辺にデフレを引き起こす可能性があります。この十数年、アジアで起こったことを振り返ってみると、日本の企業が中国や東南アジアでモノを作ることで、生産コストが下がったと同時にモノの値段も下がりました。同じようなことが欧州で起こるかもしれません。ただ、これまで比較的貧しかった地域で所得が格段に上がるわけですから、長期的にはインフラ整備が進んだり、富裕層が登場して消費を引っ張るということも考えられます。この点も今の中国と同じですね。
一次産品価格の上昇に強い豪ドル、ニュージーランドドル
では、アメリカの景気がよければ“衛星”のマイナー通貨にはお金は行かないかといえばそうではなく、その他にも知っておきたい要素があります。
そのひとつが、豪ドルやニュージーランドドルなどは「資源国通貨」であるということです。資源やエネルギー(たとえば、原油など)などの一次産品の値段が上がる時は、これらの通貨は基本的に強くなります。豪ドルやニュージーランドドルを持ってみようという方は、新聞などで一次産品の価格をチェックするようにしてほしいと思います。ただし、もともとマーケットが小さいので、為替の動く幅も大きいといったことは忘れないでください。
スイスフランや、カナダドルといった外貨は、経済的な判断材料というよりも、アメリカをはじめとする先進諸国に地政学的リスクが高まった時に買われやすい通貨です。アメリカのテロの脅威は減ったとお話ししましたが、イラクの情勢もアメリカ国内やヨーロッパの治安も、これから先、実際にはどうなるかは分かりません。
重要なのは漫然と通貨の数を増やすのではないということです。どんなリスクに対してどんな通貨でそれを抑えるか、それぞれに目的をもって、外貨を預け分ける。そして経済や政治の大きな情勢が変われば、それに合わせて預け分け方も変えていくということです。
この記事はasahi.comに2005年6月27日から2005年8月31日まで掲載したものを収録したものです。
為替レートその他の数字、情報はすべて掲載当時のものです。
- 外貨預金活用ガイド
- vol.1 外貨預金をはじめよう
- vol.2 自分の投資スタイルをもつ
- vol.3 タイミングの分散化
- vol.4 通貨の種類を組み合わせる
- vol.5 通貨の動きをみる(1)
- vol.6 通貨の動きをみる(2)

