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ファンドマネージャーインタビュー
野村 茂男氏 アムンディ・ジャパン株式会社 グローバル株式部 シニアファンドマネージャー ドバイショックの影響は? アラブ地域の現状と株式市場の見通し

※「SG アラブ株式ファンド」および同ファンドの委託会社「ソシエテ ジェネラル アセット マネジメント」は、2010年7月1日付で「アムンディ・アラブ株式ファンド」および「アムンディ・ジャパン」にファンド名、社名がそれぞれ変更となりました。

野村さんの写真

2009年11月、ドバイの政府系持ち株会社が債務返済繰り延べを発表したいわゆる「ドバイショック」の影響を受けて、各国の株式市場は下落しましたが、その後アラブ地域はどの様な成長ストーリーを描いているのでしょうか。今回は、「SG アラブ株式ファンド」について、ソシエテジェネラルアセットマネジメント株式会社の野村さんに「ドバイショック」の真相とアラブ地域の現状についてうかがいました。(記事内容は2010年3月26日(金)時点のものです)

■ 今回のポイント

ポイント1 そもそもアラブ地域の魅力とは?潤沢な資源収入をもとに産業の多角化を図るGCC諸国※と、安価で豊富な労働力を持つ北アフリカ地域が相互補完することにより、長期的な内需を中心とした経済成長が期待される地域です。

ポイント2 「ドバイショック」後の現状と見通しは?「ドバイショック」が市場に与えた影響は限定的なものとなっています。世界各国で財政規律を厳格化する動きが高まる中で、アラブ地域では2010年も積極的な予算編成が組まれ、今後の経済成長を後押しするものと考えています。

ポイント3 アラブ株式市場の見通しは?〜「SG アラブ株式ファンド」の投資方針〜力強い国内消費とインフラ投資を成長エンジンとするアラブ地域の株式市場は、割安な状況にあります。世界の株式市場が回復に向かい投資家のリスク許容度が高まる局面では、アラブ地域の高い経済成長が再評価され、他の市場を上回るリターンが得られる可能性が高いと考えています。

  • ※GCC諸国とは、湾岸協力会議加盟国のことです。2010年3月現在の構成国は、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、オマーン、カタール、バーレーンの6ヵ国です。

そもそもアラブ地域の魅力とは?

――
アラブといえばドバイという印象をお持ちのかたもいらっしゃると思います。実際にはどのような地域か教えてください。

ドバイは、アラブ地域にある1連邦国家の、1構成国にすぎません。アラブ地域は大きく分けて、石油・天然ガスなど天然資源が豊富なGCC諸国(サウジアラビア・カタールなど)と、安価で豊富な労働力を持つ北アフリカ地域(エジプト・モロッコなど)を中心に構成されています。また、GCC諸国の多くは日本と同水準(AA)の高い信用力を有しています。これらの地域は、潤沢な資源収入を背景に(1)積極的なインフラ投資プロジェクトと(2)人口と所得の増加による消費拡大が、成長エンジンとなっています。

<アラブの成長エンジン(1):インフラ投資プロジェクト>

アラブ地域の中心的存在であるGCC諸国だけでみても、現在のインフラ投資プロジェクト総額は、インドの第11次5ヶ年計画(2007年度〜2011年度)の約4倍に匹敵します。道路交通網の整備や水道設備・発電設備などのいわゆるライフラインの整備から、石油化学プラントなどの産業基盤の整備、居住用不動産まで多岐にわたります。これらのプロジェクトがアラブ地域の内需を下支えし、今後も経済成長を促す起爆剤になると考えています。

【インフラ投資プロジェクト総額】

(単位:10億米ドル)

国名 2009年9月28日現在
 UAE 908.0
 サウジアラビア 591.6
 クウェート 268.6
 カタール 205.8
 オマーン 94.1
 バーレーン 64.2
GCC諸国 合計 2,132.3
【インフラ投資プロジェクト総額比較】

グラフ画像

出所:MEED(Middle East Economic Digest)、インド政府のデータをもとに、ソシエテジェネラルアセットマネジメント株式会社作成。2009年9月末の三菱東京UFJ銀行対顧客電信相場仲値(1米ドル=90.21円)で円換算。 MEEDのデータは、2009年9月28日現在計画ベース。インドのインフラ投資プロジェクト総額は、インド政府(2008年)発表の第11次5ヶ年計画(2007年〜2011年度)のデータ。

<アラブの成長エンジン(2):人口と所得の増加による消費拡大>

アラブ諸国の人口は増加基調が続いており、他の新興国と比較しても長期にわたって増えていく見込みです。生産労働人口が多く中でも20歳以下の若い層が多い構造であることや、所得が伸びていることから、今後も個人消費の拡大が期待され中長期的に経済成長を後押しすると考えています。

【人口の伸び率(予想)】

期間:2010年〜2050年

グラフ画像

【1人当たりの国民総所得(GNI)伸び率】

期間:1998年〜2008年のデータを年率換算

グラフ画像

出所:国際連合「World Population Prospects(2008年Revision版)」のデータをもとにソシエテジェネラルアセットマネジメント株式会社が作成。
1人当たり国民総所得(GNI)伸び率は、国際連合「National Accounts Estimates of Main Aggregates」のデータをもとに、ソシエテジェネラルアセットマネジメント株式会社が作成。

「ドバイショック」後の現状と見通し 〜「ドバイショック」の真相〜

――
「ドバイショック」についてうかがいます。まず、ドバイとはどのような国なのか教えてください。

ドバイは、7つの首長国からなるアラブ首長国連邦(UAE)※の構成国の1つです。UAEでは、大半の国土を有するアブダビと新しいビジネス都市として発展したドバイが、主にその経済を担っています。アブダビは豊富な石油資源に恵まれる一方で、ドバイは石油などの資源はほとんどありません。ドバイは資源に依存しない経済を目指し、金融・物流の拠点として欧州を中心に世界中の資金を集め、特に観光や不動産開発に力を入れてきました。その代表的な企業が、ドバイ・ワールドでした。

  • ※アラブ首長国連邦(UAE)の構成国は、アブダビ、ドバイ、シャルジャ、アジュマーン、ウンムルカイワイン、フジャイラ、ラアス・ル・ハイマです。(出所:外務省)
――
いわゆる「ドバイショック」は、どういった事象だったのでしょうか?

2009年11月25日、ドバイの政府系持ち株会社のドバイ・ワールドが、全債務の支払い繰り延べを債権者に求めたことが投資家にとって予想外の出来事であったことから、いわゆる「ドバイショック」となって世界各国の株式市場に影響を与えました。「ドバイショック」は、世界的な金融危機の余波で、土地などの資産価格の下落に加え資金調達が困難になったことが主な要因と考えられます。

「ドバイショック」が世界各国の株式市場に影響を及ぼしたのは、ドバイ・ワールドの債務総額は約590億ドル(1ドル92円換算で5兆4,280億円)といわれていたことから投資家からの注目度が高かったことに加えて、ドバイ政府がドバイ・ワールドの債務を保証しないことを明らかにしたため、同社向け債権を保有する銀行がどの程度の損失の計上を余儀なくされるのか不透明であったためです。

ただ、「ドバイショック」の影響は比較的短期間で収束を見ました。債権額そのものは世界的に見てそれほど大きなものではなかったことや、また債務の見直しの対象となったのがドバイ・ワールドとその傘下にある不動産開発会社ナキールおよびリミットレス・ワールドの債務(2社合計の債務:約260億ドル(1ドル92円換算で2兆3,920億円))ということが明らかになったためです。さらに、同じUAE構成国の一つであり潤沢な石油収入を抱えるアブダビが、ドバイ支援に動く可能性が高いと見られていたことや、実際にUAE中央銀行が流動性の供給を通じてUAE内の銀行を支援する方向性を打ち出したことも、「ドバイショック」の資本市場への影響を限定的なものにしたといえます。

「ドバイショック」の影響で、工事の遅延が懸念されていた「ブルジュ・ハリファ(写真左)」も、2010年1月に完成し、世界一高いビルとなりました。また、世界初の大型海運センター「ドバイ・マリタイムシティ(写真右)」も、2009年時点で85%が完成しているといわれ、2012年のオープンに向けて大型プロジェクトも着々と進められています。

ドバイの写真

【ドバイ】
左側:完成した世界一高いビル「ブルジュ・ハリファ」
右側:建設が進む「ドバイ・マリタイムシティ」
写真提供:ドバイ政府観光・商務局

<信用不安が後退しつつあるドバイ>

2010年3月25日、ドバイ政府は、ドバイ金融支援基金※を通じて、政府系持ち株会社ドバイ・ワールドに対し最大95億ドル(1ドル92円換算で8,740億円)の新たな資金を投入することを明らかにしました。ドバイ金融支援基金は、今回投入した資金をドバイ・ワールドおよびその傘下の不動産開発会社ナキールの運転資金および利払い費用に充てることを表明しています。再編プロセスは実施に数ヶ月かかる見通しですが、ドバイ・ワールドは、債務再編プロセスに関する提案について債権者の十分な支持が得られれば、債務の全額返済が可能であることを明らかにしています。また、ドバイ金融支援基金は、同基金が保有するドバイ・ワールド向け債権の一部を株式に転換し、残りの債権についても返済順位を劣位に置くことを明らかにし、政府以外の債権者を優遇する姿勢を打ち出しました。

私たちは、今回の資金投入によってドバイ・ワールドの債務再編プロセスが大きく前進するものと前向きに捉えています。今後は、ドバイ政府が2009年12月に表明した『透明性の確保と債権者保護の点において国際的に受容されうる包括的な民事再生法』の整備が待たれるところではありますが、ドバイに対する信用不安は大きく後退したのではないかと見ています。

  • ※ドバイ金融支援基金(Dubai Financial Support Fund)は、2009年2月に立ち上げた政府債プログラムの資金200億ドル(1ドル92円換算で1兆8,400億円)を運用し政府系組織などに配分する役割を担うために、同年7月に独立した法的機関として設立された基金です。
【ドバイ金融市場総合指数の推移】

グラフ画像

出所:ブルームバーグのデータをもとに、ソシエテジェネラルアセットマネジメント株式会社が作成(2010年3月25日現在)。

――
他のアラブ地域も同様な債務問題に発展する可能性がありますか?

「ドバイショック」は、石油収入が乏しいが故に対外債務に頼って投資プロジェクトを進めてきたドバイの問題であり、他のアラブ地域については同様の危機に陥る可能性は低いと思われます。

ドバイはUAEの1構成国であり、UAE全体としてはGDP比で2倍にのぼる規模の累積財政黒字を有しています。また、クウェートやサウジアラビアなど他のアラブ地域も同様に潤沢な累積財政黒字を有しており対外依存度は低く、たとえ2008年のような世界信用危機に再び見舞われたとしても、それがこれらアラブ地域の債務問題に発展する可能性は低いと考えています。

アラブ地域の2010年の実質GDP成長率は、先進国と比較しても相対的に高くなっています。特にカタールの経済成長が18.5%と高い成長が見込まれおり、中国(9.0%)・インド(6.4%)を大きく上回る成長が予想されます。

【アラブ地域の実質GDP成長率の推移】

グラフ画像

出所:IMF「World Economic Outlook(2009年10月版)」のデータをもとに、ソシエテジェネラルアセットマネジメント株式会社が作成。

――
アラブ経済へのインパクトの大きい原油価格の動向は、今後いかがでしょうか?

原油価格は、新興市場を中心とする底堅い需要を受けて、今後も安定的に推移すると考えています。 2010年の市場平均予想は、原油価格で1バレル80ドル前後ですが、私たちも70-90ドルのレンジで推移するものと予想しています。一方、産油国の財政上の損益分岐点は45-55ドルと想定され、80ドル前後で推移すれば十分に財政黒字の確保が可能であり、アラブ地域で展開されているインフラ投資プロジェクトに対する影響はないと考えています。
また、仮に原油価格が50ドルを下回る水準にまで落ち込むようなことがあっても、アラブ地域は潤沢な累積財政黒字を有していることから、2009年と同様に必要不可欠なプロジェクトは継続され、経済成長の下支えとなることが期待されます。

【WTI原油価格の推移】

グラフ画像

出所:ブルームバーグのデータをもとに、ソシエテジェネラルアセットマネジメント株式会社が作成(2010年3月25日現在)。

アラブ株式市場の見通しは? 〜「SG アラブ株式ファンド」の投資方針〜

――
ソニーバンクで取り扱い中の「SG アラブ株式ファンド」についてうかがいます。
今、ファンドが注目している国はどこですか?

現在、サウジアラビア、カタール、UAE(アブダビ)に注目しています。これらの国々は、潤沢な資源収入を背景にインフラ投資や産業基盤の整備を積極化しており、また人口増を背景に個人消費の安定的拡大も期待できます。国の財政状況も良好で、前述の通り3ヵ国の信用度は高く日本と同水準(AA)となっています。

【インフラ投資や産業基盤の整備の例】

説明図

出所:各HPおよび日本・サウジアラビア産業協力タスクフォース事務局のデータをもとに、ソシエテジェネラルアセットマネジメント株式会社が作成。

――
ドバイへの投資は行っていますか?

ドバイに対する信用不安は大きく後退したのではないかと見ているものの、今後も市場が変動する可能性が払拭できないことから、ドバイ市場への投資配分は大幅に低めています。ただ、当ファンドでは、純資産価値から判断して明らかに割安な水準まで売り込まれた企業や、どのような環境下においても着実に業績を伸ばしている企業については、今が最良の投資機会であると判断しています。

――
どのような企業に注目していますか?

当ファンドでは、アラブ地域の成長エンジンである内需主導による経済成長に焦点を当てており、銀行や不動産会社、建設会社、生活必需品メーカーなどに注目しています。また、産業基盤の整備において、世界的にも競争優位性を有する石油化学分野や、アジアとヨーロッパの中間に位置するという地理的優位性を活かした物流分野を中核として進められていることから、これらの産業に関連する企業にも注目しています。

――
アラブ地域への投資の際に気をつけるべき点を教えてください。

アラブ地域も含めて新興国への投資については、基本的に私たちは3つの事をご留意いただきたいと考えています。

まず、「政策リスク」です。例えば、経済基盤が良好であったとしても、政策リスクが顕在化することで、株式市場は一時的に影響を受ける場合があります。アラブ地域を含めて新興国に投資する際は、中長期的な経済成長が見込めるのか?財務内容が健全か?といったことがポイントになると考えます。アラブ地域においては成長性・財務内容ともに相対的に魅力的であり、今後その魅力が再評価される可能性があります。

次に、「金利上昇リスク」です。特に回復スピードが速い新興国については金融引き締め(金利上昇)の政策が行われる可能性が高いと考えられます。株式市場は、短期的に金融引き締めの影響を受けて下落する可能性があります。しかし、金融引き締めは、安定成長を継続するために必要な政策と考えます。

最後に、「外部要因リスク(世界的景気の失速)」です。今回のサブプライムローンに端を発した世界経済危機のように、世界中の投資家のリスク許容度が低くなると、株式市場などから資金が引き上げられる可能性があります。その結果、今回ドバイで起きたような事態を招き、特に株式市場を中心に需給の悪化から大きく調整することがあります。

2008年夏以降アラブ市場で起きている調整局面も基本的には世界的景気の失速による影響であり、同地域の経済が健全であるとすれば、需給が改善し、世界経済が安定した回復局面へ移行する中で、同市場は同地域の企業業績回復と共に再評価され、投資家の注目が高まる可能性があると考えています。

――
最後にアラブ地域への投資に興味をお持ちの皆さまにメッセージをお願いします。

世界的な金融危機の影響は収束に向かいつつありますが、足元の先進国株式市場は今後の景気の回復への期待と二番底懸念との間で方向感の定まらない展開となっています。ただ、中国をはじめとする新興アジア地域の景気は着実に回復に向かっており、株式市場は堅調に推移しています。一方、アラブ地域の株式市場は、総じて中国やインドなどの新興国市場に対して大幅に出遅れています。その結果、配当利回りやPERといった株価バリュエーションで見ても相対的に割安な状態になっており、今後の上昇余地は高いと考えています。

当ファンドでは、財務健全性に優れ、かつ高い成長力を有しているにもかかわらず株価が割安に放置されている企業に対する選別投資を行うことにより、中長期的にキャピタルゲインの獲得を目指しています。

(おわり)

アムンディ・アラブ株式ファンド

アムンディ・アラブ株式ファンドの重要事項

主としてアラブ地域を中心とした中東・北アフリカ諸国で事業を展開する企業に投資するファンドへ投資し、信託財産の中長期的な成長を目指す。アラブ地域へ投資する主要投資対象ファンド(米ドル建外国投資証券)の運用はGLGパートナーズ インターナショナル リミテッドが担当。原則として為替ヘッジを行いません。

※本コンテンツ中のいかなる内容も本コンテンツ作成時点のものであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証したり、その正確性、完全性を保証するものではありません。また掲載のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。

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