MONEYKitトップ > from MONEYKit > セミナーレポート > ソニーバンク外貨預金セミナー 2005年夏 > テクニカル・ファンダメンタルズからみた2005年後半
フィスコ為替市場レポート・セミナー編
〜テクニカル・ファンダメンタルズからみた2005年後半〜
講師:山下政比呂氏
株式会社フィスコ リサーチマネージャー
ユーロなど、その他の通貨の見通し
経済も政治も問題を抱えるユーロ
ここからはヨーロッパの話に移ります。まずは駆け足でヨーロッパ統合についての復習をしたいと思います。ヨーロッパがなぜ統一に向けて邁進しているのかといいますと、第一次世界大戦、第二次世界大戦を戦った、ドイツとフランスを統合し、再び欧州を戦場にすることが無いように、ひとつの国になるということで始めました。
ドイツとフランスは、常に石炭や鉄鋼を奪い合っていましたので、欧州共同体を作り、最初は経済的に統合しようと通貨を統一しました。統一通貨ユーロを作り、金融政策を担う欧州中央銀行を作りました。しかし金融政策と通貨を統一しても、どこかの国が財政赤字ばかり出せば通貨の信頼性がなくなりますから、「安定・成長協定」という厳しい財政規律を作ってユーロの信頼性を守ることにしました。安定・成長協定とは、毎年の財政赤字をGDP比3%以内に抑える、累積赤字は60%以内に抑えるという規定です。経済的な統合が終ったら、次に憲法を作って政治的に統合し、ヨーロッパ連邦、ヨーロッパ合衆国という統一国家をつくりましょう、というのがシナリオです。
ところが安定・成長協定を、元々言い出したドイツとフランスが守れなくなりましたので、今年3月に財政規律を緩和しました。そこに加えて、来年11月に発効する予定だった欧州連合(EU)憲法が、フランスとオランダの国民投票で否決されてしまいました。経済的にも政治的にも、ユーロ圏の統一に向けたスケジュールの遅れが生じる可能性が高まったため、ユーロ売りが活発化したわけです。
そもそも、さまざまな文化、歴史、言語をもつ25の国を統一するということは可能なのでしょうか。キリスト教圏の連合体に、トルコのようなイスラム教圏が入ることができるのか、そういったユーロの欠陥が浮き彫りになってきました。余談になりますが、ユーロEUROという名前はヨーロッパEUROPEから来ているわけです。ヨーロッパEUROPEというのはギリシャ神話のフェニキア王の娘エウロパEUROPAが語源です。エウロパは、ゼウスに略奪された王女ですが、故郷は現在のトルコの付近でした。そのトルコを入れるか入れないかという問題で、いまユーロがバラバラになりそうだということで、これはエウロパの復讐ではないかと個人的には思っているわけです。
金利の動向に注目:ドルは高金利通貨
アメリカで地政学的リスクが高まった結果、基軸通貨であるドルが売られて、第2基軸通貨でもあるユーロが買われたわけですが、今後これが逆流するという可能性があります。ユーロ圏の政策金利は2年以上2.0%に据え置かれており、ドルの金利は、4%台を目指して上がっていくことが予想されますので、ユーロ・ドルは下落する可能性が高いわけです。
ユーロ・円の中期チャートですが、ドル・円の短期相場でお話しした時と反対のパターンの斜行三角形です。上値が切り上がって、下値も切り上がっています。

ドル・円の場合と逆で、上がってきた相場が終わりですよ、というパターンです。この下値抵抗線を抜けると、とりあえず124円、最終的に115円を目指す下落トレンドが始まる可能性があります。
ユーロの話の最後に、売り要因と買い要因をまとめてみました。

ユーロ買い要因としては、アメリカの政学的リスク。売り要因としては、欧州連合(EU)憲法発効の延期、アメリカの本国投資法などです。本国投資法というのは、米国の企業が海外に滞留させているお金を今年アメリカに戻せば、法人所得税を通常の35%から5.25%にしますという法律です。対象金額は推定5,000億ドルと試算されており、ほとんどがドル建てで、約1000億ドル程度がユーロ、英ポンド、円建てです。年初からドルが高くなったのは、これまでお話しした要因に加えて、この本国投資法を背景にアメリカの多国籍企業がユーロを売ってドル買ったこともあります。5,000億ドルがアメリカに入ってきますと、税収はその5.25%ですから、250億ドルです。財政黒字要因になりますから、この面でもドル高要因ということになります。
買い要因の多いカナダドル
その他の主要通貨を駆け足でお話します。
ポンド・円は大きな三角保ち合いの中でのレンジ相場を形成中です。英国の政策金利は上がる可能性は少なくなっており(2005年8月4日4.75%から4.50%に引き下げられました)、英国は原油輸入国になる可能性も出てきました。下落リスクに警戒が必要だと思えます。
豪ドル・円、ニュージーランドドル・円はまだ上昇トレンドを形成中です。
金利面での魅力、中国人民元切り上げは両国経済にはプラス要因、原油・金価格上昇など、ファンダメンタルズ面からも買い要因が勝っていると思えます。
注目していただきたいのは、カナダドル・円です。

テクニカル分析では、三角保ち合いを上抜けており、98円あたりを目指す上昇トレンドにあります。ファンダメンタルズ的にもカナダの政策金利(2.5%)上昇期待や産油国としての魅力が挙げられます。
スイス・円も上昇トレンドではありますが、85円を割り込んだ場合は、下落リスクに警戒すべきです。避難通貨であるスイスが買われるのは地政学リスクが高まった時ですから、アメリカや中東の地政学リスクが少なくなれば、スイスに逃げる理由がなくなります。
しかしながら、地政学的リスクには常に警戒しておくべきですから、スイスフランは保険という位置づけでポートフォリオに入れておくべきだと思います。
以上で私の話は終わりにさせていただきます。本日は最後までご静聴、大変ありがとうございました。
フィスコ為替市場レポート・セミナー編 〜テクニカル・ファンダメンタルズからみた2005年後半〜
- ドルの長期下落トレンドが終わる可能性
- 大きなテーマになる原油価格と増税
- 政策的にドル高を誘導するアメリカ
- テクニカルから見たドル・円相場
- ユーロなど、その他の通貨の見通し

