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フィスコ為替市場レポート・セミナー編
〜テクニカル・ファンダメンタルズからみた2005年後半〜
講師:山下政比呂氏
株式会社フィスコ リサーチマネージャー
大きなテーマになる原油価格と増税
ドル・円は8年周期で高値をつける
次は時間的なサイクルの話をします。変動相場制に移行してから、ドル・円は8年周期で高値をつけるサイクルがあります。

1974年の304.90円、1982年の278.50円、1990年の160.35円、1998年の147.64円。そして次の8年後は来年2006年です。そこで、なぜ8年ごとにドルが上がったか、ファンダメンタルズ的な材料を説明します。
まず1974年ですが、その1年前の1973年に第1次石油ショックが起きて、原油の値段が4倍になりました。日本は原油をほとんど全部輸入しなくてはいけませんから、原油価格が4倍になれば、その分たくさんの円を支払ってドルを買わなくてはならなくなりました。こういった理由で石油ショックの翌年にドルが上がったともいえます。1982年には、時間はズレましたけれど1979年に第2次石油ショックがあり、この時も原油が高くなりました。
1990年の前年の1989年に、消費税(3%)が導入されています。ほかの要因もあったとしても、とりあえずドルが上がった要因のひとつに消費税がありました。次の1998年の前年の1997年に、消費税が3%から5%に引き上げられました。外貨預金をしていらっしゃる皆さんはご存じだと思いますが、税金が上がった国というのは、最初は必ずその通貨が売られます。日本では、消費税3%の導入の時、5%への税率アップの時と、どちらも円安になりました。
いよいよ2006年に何が起きるか、大きな可能性を2つ指摘したいと思います。ひとつは原油価格の高騰です。石油ショック当時の原油価格は、インフレ率などから換算すると現在の価格で80ドルくらいに相当します。原油価格が80ドルまで上昇した場合、第3次石油ショックになる可能性が出てきます。
そして、2つ目は、来年以降の増税懸念です。
第3次石油ショックの可能性
今日は原油の話に時間を割いて話したいと思います。第1次石油ショック、第2次石油ショックは、中東で、第4次中東戦争やイラン革命が起きたことで原油価格が上がりました。日本の年間原油輸入量は、2回の石油ショック当時から現在に至るまでだいだい15億バレル程度です。30年前から、日本の原油輸入量はほとんど一定です。つまり日本では、何が起きても15億バレルぐらいの量の石油は毎年必要としているといえます。ちなみに1バレルというのは、159リッターの原油を入れる樽のことですから、1バレルはだいたい乗用車3台分のガソリンタンクくらいになります。
1回目は1971年8月15日のニクソンショックでした。日本への警告的な意味を込めて、終戦記念日を選んだわけです。この時は360円から半分の175.50円まで下落しました。そしてドル安が進み過ぎますと、インフレとか、いろいろ弊害が出て来ますので、カーター大統領がドル防衛に乗り出し、ドルは下げ止まり、レーガン大統領のドル高政策により278円まで上昇しました。

昨年の1バレルの平均原油輸入単価は37ドルでした。ドル・円の平均は108円でしたから、原油輸入代金は約6兆円でした。それが今後、石油ショックの可能性が出てくる1バレル80ドルになれば、15億バレルに80ドルをかけて1200億ドルの代金になります。為替レートが100円では12兆円、120円なら14兆円になります。もし1バレル100ドルになれば、原油代金は1500億ドルで、為替レートが100円ならば15兆円、120円ならば18兆円になる計算です。
去年の貿易黒字は約14兆円でした。原油輸入価格が6兆円増えたら、貿易黒字が半減するわけです。原油価格の高騰によっては、日本は貿易黒字大国では無くなる可能性、あるいは貿易赤字の国になる可能性が高まるわけです。
第1次石油ショック、第2次石油ショックでは、それぞれ中東戦争やイラン革命が起きたことで原油価格が上がりました。いまは平時であって、戦時ではありません。しかし、8月になってから、サウジアラビアでは新国王が誕生し、イランには対米強硬路線のアハマディネジャド政権が誕生し、8月15日にはイスラエルがガサから撤退する予定、イラクでは新しい憲法が起草されます。今後、中東情勢が流動的になる可能性があります。もし中東で有事が勃発すれば、第3次石油ショックが起こり、一気に1バレル80ドルといった原油価格になる可能性があります。
次に日米中の原油備蓄の状況についてお話しします。アメリカは官民全体で16億5700万バレル、82日分の原油備蓄を保有しています。ブッシュ政権は2001年の同時多発テロ以来、中東からの安定的な原油輸入懸念から、7億バレルを目指して戦略石油備蓄(SPR)に力を入れ始め、現在はほとんど7億バレルに到達しています。アメリカは1日に2000万バレルの原油を消費していますので、7億バレルというのは約35日分の備えです。
日本には、国家備蓄と民間備蓄を合わせて5億5500万バレル、168日分の備蓄があります。中国は、これまでは必要な分だけを毎日買っていたのですが、戦略原油備蓄を検討し始めています。30〜90日分の備蓄を検討していますので、中国は1日700万バレルぐらい消費していますから、30日ですと2億バレルを備蓄分として買い増すことになります。さらには、アメリカ政府の反対で断念したものの、中国の石油企業がアメリカの石油会社を買収しようとした国家原油戦略も伝わってきています。中国は今後の原油需要の増大を睨んで、原油を必死になって確保しようとしていますので、原油価格は今後も高くなる可能性が高いといえます。
中国のバブルが崩壊した場合は、中国での原油需要が減少するため、逆に安くなる可能性もあります。
来年以降に待ち受ける増税
もうひとつの2006年の円安要因が「増税」です。来年は定率減税が廃止されますので増税が始まることになります。小泉首相は「自分が首相をしている間は消費税の税率アップはありえない」と言っていますが、裏返せば小泉首相の後は消費税アップの可能性が高まるわけです。
日本の国家と地方を合わせた借金は、今年3月時点では約950兆円、来年3月には約1000兆になります。そういった莫大な借金を返すためには税金でまかなうほかありません。来年から消費税が徐々に上がることは十分に考えられることで、増税になればいままでのパターンですと円が売られました。8年周期のドル・円高値というサイクルは、2つのファンダメンタルズ(原油高&増税)から見て、可能性が高いわけです。
フィスコ為替市場レポート・セミナー編 〜テクニカル・ファンダメンタルズからみた2005年後半〜
- ドルの長期下落トレンドが終わる可能性
- 大きなテーマになる原油価格と増税
- 政策的にドル高を誘導するアメリカ
- テクニカルから見たドル・円相場
- ユーロなど、その他の通貨の見通し

