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第3章 為替相場の変動の仕組みとその要因
6. 為替相場の決定要因となる経済指標(2)
前回はGDP、失業率、消費者物価指数などのような金利変動との関係が深い経済指標、そしてそれが為替相場にどのような影響を与えるかについて話をしました。今回は金利とは直接関係のない株価、国際収支(経常収支と資本収支)などと為替相場の関係について触れたいと思います。
株価について、「外国人投資家の日本株買いもあり円が上昇した」との記事を良く目にします。需給的に考えれば、外国人が日本株を購入するためには、外貨を円に換えなければならず、そのために円が買われることは理解できるかと思います。しかし、現実的にはその円を購入するにしても、決して一度に購入することはありません。当然為替差損益も含めた投資収益率の予想を立てていますので、タイムラグを生かして円を分散購入し、そして購入後でも円高になり一定の為替差益が出れば、通貨スワップ、通貨オプション、先物予約を使った反対取引にて為替採算レートを固定してしまうことも多いのです。また最近では為替オーバーレイ戦略*を使って、為替リスクを別途コントロールしている海外投資家も増えています。従って、外国人の株買いが数兆円出たと言ってもそれが市場の動向に即座に反映すると考えるのではなく、むしろ、そのニュースによって思惑的な取引が相場を助長すると考えるべきです。
次に国際収支は『日本の黒字が続く限り円高は継続する』との円高論者のよりどころとなっている指標です。本章の2でも貿易黒字と為替相場の関係における具体的な市場の動きについて説明しましたが、お金の流れに直接かつ継続的な影響を与えるという点では非常に重要です。国際収支はモノやサービスの取引の流れをあらわす「経常収支」と、外国への直接投資や証券投資などによる資産と負債の変化をあらわす「資本収支」に分けることができます。(下図を参考) 為替相場への影響としては黒字であれば円高要因、赤字であれば円安要因となります。
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一般的には為替変動要因として「経常収支」の増減が取り上げられますが、「経常収支」は「貿易・サービス収支」、「所得収支」「経常移転収支」に分けられます。またこの中でも「貿易収支」だけを注目しがちですが、旅行や運送の支出入額を表す「サービス収支」の変化も無視できません。2003年はSARSの影響で日本からの海外旅行者が激減し、その収支額も激減しています。また最近注目されているのが、海外に投資した外貨建て金融商品などから生じる外貨利息分を示す「所得収支」です。円安要因となる海外投資が増加すればするほど、逆にそれから発生する外貨利息分も膨らみ、その額の大きさからも新たな円高要因となっています。
また外国への直接投資や証券投資などによる資産と負債の変化をあらわす「資本収支」も、相場の流れを読む上で注目すべきものです。最近は個人の海外資産取得も年々増加していますが、個人の外債投資などもこの部分に含まれます。支出超が継続しており、サービス収支と共に円安要因となっており、かつて日本の機関投資家が外債投資を積極的に行なっていた時には為替市場における大きな円安要因となっていました。
ちなみに前月9月にもIMF(国際通貨基金)が公表した世界経済見通の中で、日本の「経常収支」は2020年には赤字に転落するとの予測を展開していますが、これが現実となり、また現在赤字の「資本収支」も黒字に転じないとすれば、長期的には円安となる可能性が高くなるとも推測できます。このように国際収支状況を知ることは為替市場をより深く理解することにつながり、相場を予想する上でも必須の知識となります。
*為替オーバーレイ戦略
外貨建て資産ファンドの為替部分の運用だけを切り離し、運用担当会社に為替管理を委託する戦略で、1980年代後半に米国で開始されたもの。


