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スペシャルインタビュー
メディアに訊く DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集長 岩崎氏編

ビジネス市場とカーストの強固な関係

特集では作家の山田和氏が、日本人マネジャーの日常的なふるまいを部下たちがカースト制度に照らし、彼らの社会通念で彼の“位”を位置づけている様を紹介していて、とても興味深く読みました。

企業内のマネジメントの問題にとどまらないと聞きました。たとえば、いまインドのテレビ市場は韓国のサムスンとLG電子の独壇場で、ソニーをはじめ、日本勢は手をこまねいていると、さまざまな現地の日本人から聞きましたが、少々呆れました。在インド大使もそんなことを言っているんですよ。低価格テレビ市場と高価格テレビ市場はそもそも同じではないでしょう。アパレルでも何でもよいですが、価格帯が異なり、商品の仕様も異なり、流通や販売方法も異なる財を、大雑把なカテゴリーでひと括りにして、勝ち負けをうんぬんしているようでは何をかいわんやです。

インドには26の州がありますが、州をまたぐだけで税金がかかります。これは「中央売上税」(center sales tax)と呼ばれるものです。要するに、流通に大きな足かせがあるわけです。また、日本メーカーのAV製品というのはグリーン・プロダクト基準に適合したレベルの高い部品を使っていることもあって、自動車のように高額な耐久消費財ならばいざ知らず、簡単に現地生産というわけにはいきません。一方、韓国企業は安い製品をどんどん入れています。ということは、韓国は低所得者、つまりカーストの低い人たち向けて売っているのであって、実際その人口層は大きいわけです。ソニーのテレビを買っているのは高所得者、つまり高いカーストの人たちです。
インド市場は、幸か不幸か、カースト制のおかげで顧客セグメンテーションができてしまう。別の見方をすれば、特定のカースト向けの商品として定着してしまい、上位の消費者層に進出するのが難しいということです。トヨタがレクサスを開発するまで、欧米の高級車市場になかなか食い込めなかったことを思い出せば、わかるはずです。
もし日本メーカーがここで韓国メーカーと同じ土俵で勝負してしまうと、やがてはグローバルに培ってきたブランドやイメージを損ない、マージンの薄い過当競争に巻き込まれてしまうのではないでしょうか。

30年の歴史で血肉化しているIT

経済指標や統計に表れない、インドの強みやパワーを感じられた機会はありましたか。

皮膚感覚的に申し上げれば、よくわからないというのが正直なところです。現地でのビジネス体験がないと、実際のところは見えてこないのではないかと思います。
ただし、やはりITにおけるポテンシャルは非常に高いと思います。それは、単にエコノミストやアナリストのレポートだけを見て申し上げているのではなく、歴史が物語っています。
インドに最初に参入したコンピュータ企業は、言うまでもなくIBMで、1956年のことです。その時アジア諸国のなかで、コンピュータを実際に動かしていたのは日本とインドだけでした。ちなみに、IBMは外資規制のために78年にいったん撤退し、その後91年に戻ってくるのですが、その間も現地の提携会社を通じてオペレーションを継続していました。

また、インド工科大学というアメリカのMIT、日本の東工大に当たる教育機関には、1963年にすでにコンピュータ学部ができています。1967年には、国営のコンピュータ企業のECILが設立されています。
ちなみにIBMがシステム/360(*)を発表したのはちょうどその頃で、おそらく最新鋭のコンピュータを使っていたはずです。そのほか、印中戦争の戦禍から軍需産業を守ることを端にして、バンガロールにIT企業が集積していったという変遷は、大前研一さんが弊誌のインド特集のなかで述べられていますので、ご興味のあるかたはご一読してください。
つまり、インド人は数学が得意という漠然とした理由だけでもなく、また昨日今日に始まった産業振興策でもなく、半世紀以上もコンピュータに取り組んできたという歴史も無視できないわけです。

新興国では生産性や人件コストに目がいきがちですが、インドの場合は自発的な創造力や、歴史的な技術の蓄積が見逃せないわけですね。

インドの通産省が2002年に発表した、向こう5年間を見たレポートによりますと、「インドの強みは3Eリレーティブ・グッズ」、つまり、エレクトロニクス(IT、コンピュータ)、エレクトロニクス(電気製品)、そしてエンジニアリング。最後のEで注目すべきなのが自動車産業です。
モータリゼーションは中国でも目覚しい発展を遂げており、日本を除いたアジア諸国のなかでは圧倒的な成長を見せています。ですが、中国には、自動車をみずから設計し、かつ製造して消費者に提供できる企業はまだないでしょう。一方インドには、そのような企業がタタ・モータースをはじめ、少なくとも3社はあります。
インドが最初に自動車を製造したのは1920年です。その時はでき上がった部品やモジュールを組み立てるコンプリート・ノックダウン方式でした。トヨタが自動車をつくったのは1935年、日産が33年、ホンダが40年です。こと組み立てに限っていえば、インドのほうが先行者なのです。

*IBMシステム/360:IBMが1964年に発表。アプケーション・ソフトウェアの互換性を達成し、その後の汎用メインフレームの流れに大きな影響を与えたモデル。「360度、全方位から業務に対応できる」ということで、360と名付けられたといわれる。

 

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