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第3章 為替相場の変動の仕組みとその要因
3. テクニカル分析による為替変動予想
前回はファンダメンタルズ(経済の基礎的な諸条件)が為替市場の中長期の動きに影響を与える大きな要因であるとの話をしましたが、実際に1970年代前半に外国為替市場が変動相場制度に移行した頃には、為替相場はファンダメンタルズの関数であると考えられていました。しかし、1970年後半〜1980年代には『経常収支(貿易収支)が大幅に黒字の日本の円が何故安くなっているのか』など、そのファンダメンタルズだけでは説明できない為替相場の動きが出始めました。そのような状況の中で、別の角度から相場を予想しようと注目されたのがテクニカル分析です。この手法は経済成長率、雇用統計、景気動向、国際収支、さらに突発的な出来事による為替変動などを一切無視して相場予想を試みるものです。
テクニカル分析は株式相場予想でもお馴染みの手法ですが、為替相場においても良く利用されています。ここでは詳しくは触れませんが、為替相場予想の代表的なものとしては『トレンド分析』と『オシレーター分析』が挙げられます。前者は相場の上昇局面、あるいは下降局面というように市場にひとつのトレンドが現れている時に有効な手法であり、後者はボックス圏で推移している時に有効な手法となります。現場の為替ディーラー間では、『トレンド分析』としてはローソク足による「トレンドライン」や「移動平均線」が多く使われますが、短期取引を中心とするインターバンク・ディーラーにおいては目まぐるしく変動する短期相場の流れを把握するために「ポイント・アンド・フィギュアー(P&F)」が頻繁に使われています。一方、『オシレーター分析』の中では「RSI」、「ストキャスティック」などが良く用いられています。テクニカル手法は、基本的には日々の為替レートをグラフ化したチャートを分析して相場を予想する手法ですが、最近では日々の為替レートだけでなく、突発的な出来事、ファンダメンタルズ、市場心理による変動データなどを入力して相場を予想するモデルも出てきているようです。
テクニカル分析ではトレンドから通貨の上昇・下落を予想し、また機械的に発せられる「買いシグナル」「売りシグナル」に従って為替取引をします。しかし、市場の需給状況によっては「だまし」と呼ばれる誤ったシグナルが出てしまうこともたびたびあります。前回も市場の状況によってはファンダメンタルズ通りに相場は変動しないという例を挙げましたが、テクニカルにおいても同様です。たとえば、テクニカル上で売買シグナルが出されたことにより市場の持ち高が極端に一方方向に傾いてしまうと、市場はパニック状態となり、またその反動においてもパニックとなります。これが乱高下するということですが、市場参加者が落ち着きを取り戻すまでは人為的なコントロールはほぼ不可能な状況となります。まさに「皆で渡れば怖い!」という状況です。従って、相場を予想するための判断材料としてファンダメンタルズ分析、テクニカル分析を知っておくことは重要ではありますが、これらを過信することは禁物であることもお分かりでしょう。相場を読むためには理屈だけではなくて、市場の心理的な部分の読みも含めた自分自身の相場勘を磨くことが大切です。外国為替市場では貿易、資本の移動、旅行、投資をするなど世界中の人達が市場に参入し、さまざまな思惑が入り混じって相場を形成しています。為替相場は生き物であり、理屈ではすべてを説明できないことも為替市場のダイナミズムの裏返しでもあります。
次回からは為替相場を動かす各要因とそれによって市場がどのように変動するのかを解説していきたいと思います。

