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為替・金利レポート
市場を読む 為替マーケット講座

第3章 為替相場の変動の仕組みとその要因

2. ファンダメンタルズ分析による為替相場予想

前回は需給バランスが為替相場を決める基本的な要因であるとの話をしました。また、為替相場は経済的な要因によって大きな影響を受けるという考え方があります。そして経済的な要因によって相場を予測することをファンダメンタルズ分析と呼びます。この「ファンダメンタルズ」とは日本語では「経済の基礎的諸条件」などと訳されますが、具体的には経済成長率、雇用統計、景気動向、国際収支(経常収支・貿易収支)などを判断基準とします。

さて、『ファンダメンタルズによって円が買われた、売られた』との報道記事をよく目にしますが、理論上は経済統計の数字の発表だけでは市場が大きく変動することはありません。ファンダメンタルズに基づいて中長期的にお金がその方向に流れるだろうという予測からの実弾が飛び交ってはじめて相場が変動するのです。重要な経済指標が発表される前にはさまざまな思惑取引によって為替相場も乱高下し、裁定取引*1も活発に行なわれます。

それでは、具体的にはどのような動きをするのでしょうか。日本の対米貿易黒字が急増するとのシナリオを仮に設定して、その指標発表前後の市場の状況を解説してみましょう。日本の貿易黒字が急増すれば、ファンダメンタルズ分析では円高要因となります。その理由は、日本が米国との貿易によって稼いだ外貨が急増し、それを日本円に換える動きが円高を助長するということからです。またファンダメンタルズではありませんが、もう少し深読みすれば日本の対米貿易黒字の急増による日米間の貿易不均衡感が広がり、米国産業界が政治的な円高圧力をかけてくるのではないとの読みも働きます。そのために数字の発表前には為替ディーラー達からの思惑によるドル売り・円買いが勢いを増し、円高が進行します。そして予想通り『日本の対米貿易黒字額が急増』と発表されると瞬間的には円は急騰します。ここまでは理論通りの変動であり、短期とはいえ、ファンダメンタル分析は効果的だったということになります。

しかし、実際には相場は予想通りに動かないこともあります。たとえば、上記のケースでも、市場の持ち高が一方に極端に傾いている時などは、発表された数字がいくら的中しても、短期取引の為替ディーラー達が指標の発表直後に自分の持ち高の利食い(米ドル買い・円売り)を一斉に出してしまうと相場が急反転してしまいます。そしてその結果、理論とは全く逆の相場を形成してしまうことも良くあるのです。特に経済指標の数字発表前後の相場では、企業・機関投資家は取引に慎重になるため、実需を伴わない、思惑だけの取引が中心となり、結局は「行って来い」*2という一種のマネーゲーム的な変動となりがちです。そうなるとファンダメンタルズ分析だけではどうしても説明がつかない変動状況がたびたび出てくるのです。

また今後の項目でも取り上げていく予定ですが、経済・テクニカル以外に、投機、戦争、選挙、うわさなどの突発的な相場の変動要因も多く、今回のファンダメンタルズだけで短、中、長期すべての相場の変動を語るには無理があります。しかしながら、中長期的にはこのファンダメンタルズに基づいたお金の流れ、つまり需給が相場を決めるという基本的な考え方はしっかりと頭の中に入れておくべきです。次回は今回のファンダメンタルズ分析と双璧をなすテクニカル分析について解説いたします。

*1 裁定取引
本来、同じ価格であるはずの同一商品が市場の違いによって異なる値段になっていた場合、その値段の差を利用して利益を上げる手法

*2「行って来い」
相場用語で、相場は上下動するが、結局は元の水準に戻ってくること

 



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