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第1部・後半『中国株投資の魅力』 対談:和泉昭子氏、司馬毅氏
国内の経済格差の問題をどうとらえるか
- 和泉
- 中国では都市部と農村部の経済格差、都市部の中でも貧困層と富裕層といった格差が広がっています。胡錦濤国家主席と温家宝首相は、こういった格差の広がりを抑えて、発展の調和がとれた「和諧(わかい)社会」を目指すといっていますよね。本当にあれだけ大きな国を、新しい体制がコントロールしきれるでしょうか。
- 司馬
- それは多分できないと思います。
- 和泉
- あ、できないんですか。
- 司馬
- 本当に格差を無くそうと思ったら簡単で、税制を変えて配分を再構築すればいい。しかしそれはもっと大きな弊害があります。今の中国はアメリカ的なシステムで、個人プレーを重視する社会風潮になりつつあります。個人の意欲を封殺し、富裕層を抑えつけてしまえば消費は伸びませんし、海外の投資意欲もなくなります。
- 和泉
- 諸刃の刃なのですね。しかしこれからの中国株投資はそれで大丈夫なのですか。
- 司馬
- 社会的な行動というのは、世界中でそれほど大きく変わりません。アメリカにも貧富の差はあります。問題は格差自体ではなくて、一番低層の人に向けてセーフティネットをどうやって整備するかということです。たとえばいま中国には医療保険に加入していない人が大勢います。そのほとんどが貧しい人で、こういった人たちは病院に行っても治療や診察を断られてしまう。これが問題なのです。一方で投資家が心配しているのは、社会不安です。クーデターや暴動は、低層の人間が不満をもつことで起こります。格差があることが直接は社会不安に繋がらないし、自分も頑張って金持ちになろうという人間の方が今の中国は多いと思います。
元切り上げは現在の中国にはメリット
- 和泉
- もうひとつ、個人投資家のかたたちが大変気にしているのは、元の切り上げがあった場合の影響です。司馬さんはどうご覧になっていますか。
- 司馬
- これは誤解されていると思うのですが、元が切り上がると中国の株式市場が暴落すると思っていらっしゃるかたがいらっしゃいます。
- 和泉
- そうですね。逆に今保有している元資産の価値が上がり、ものすごく儲かると思っているかたもいますが。
- 司馬
- 元の切り上げで中国株が下がると思っている人は、輸出の多い企業へのデメリットを気にしているのでしょう。ところが中国市場に上場している会社は圧倒的に内需企業で、輸出に依存している企業は僅かです。内需企業は、元が上がれば原料を安く調達できる。メリットの方が大きいわけです。輸出産業はもちろん影響を受けるでしょうが、それほど大きな影響はないと思います。
- 和泉
- 輸出産業に影響が少ないという根拠はなんでしょう。
- 司馬
- 中国が輸出しているのは、まだ自動車ではありません。繊維やおもちゃであり、実は高度成長期以前のかつての日本と輸出品目の構成比が似ています。為替の観点から申し上げれば、おそらく今のアメリカと中国の関係は、1971年のニクソン・ショック当時の日米関係にかなり近い部分があります。
- 和泉
- ニクソン・ショックというのは、当時のニクソン大統領が金に対する米ドルの交換をストップしてドルの価値を守った政策で、それ以降にドル円は1ドル360円の固定相場制から200円台へと、円の切り上げがあったわけですね。
- 司馬
- 当時の日本は途上国で、アメリカは途上国に対して米ドルを大幅に切り下げました。ところがこの数年は、米ドルは先進国の通貨に対して下がっています。途上国の通貨に対してはそれほど下がっていません。人民元、マレーシア・リンギット、ほかにも固定相場制の通貨がいくつかあります。今のアメリカの貿易構造を是正するためには新興国、途上国の通貨を大幅に切り上げる必要があります。ちなみにニクソン・ショックの前後で日本の株価はどう動いたかといいますと、前後3年間で日経平均は約2.5倍まで上がりました。
- 和泉
- 皆さん乗り出してらっしゃいますよね。2.5倍と聞けば。
- 司馬
- 要はその通貨の為替相場が上がればそこに資金がシフトして、結果的に株価が上がる。元が切り上がれば、いくつか前提条件もありますが、それに近いことが起こる可能性もあると私は思っています。
中国人民元、香港ドルの推移(対米ドル)
(注)05年3月末現在 (出所) Bloombergデータを基に三井住友アセットマネジメント作成
第1部・前半『中国株投資事始め』和泉昭子氏
第1部・後半『中国株投資の魅力』 対談:和泉昭子氏、司馬毅氏
- 多面性をもつ中国の全体像をどうとらえるか
- バブルではなく、高度成長期という認識
- ブレのない安定成長を目指す中国政府
- 国内の経済格差の問題をどうとらえるか
- 情報開示の制度は整備されている中国市場

