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スペシャルインタビュー
メディアに訊く 日経トレンディ編集長 北村氏篇

トレンディの取材手法は変わりません

北村さんご自身のことを伺わせてください。トレンディには、記者時代から長く関わっていらしたと伺っていますが。

僕は編集者生活の中でトレンディの記者が一番長いんです。トレンディをやって、次の新しいトレンディを作りたいと思って『日経おとなのOFF』という雑誌を仲間と企画立案したんです。4年間、食と旅館とホテルにまみれた生活をしました。昨年トレンディに戻って、かつての記者時代を思い出しながら、昔の勘を取り戻しているところです。

編集長になってこれからやっていくことは、トレンディの本来あるカラーをより先鋭化すること。これに尽きます。何か新しいことをやるとか、路線を変更するとかは、実は考えていません。トレンディは1980年代後半から始まりましたが、その取材手法が21世紀になってもなんら古びることはないというのをもう一度皆さんにお伝えする。それが僕の仕事じゃないかと思っています。

取材を受けていただいた方にいつも伺っているのですが、北村さんにとって仕事の上で欠かせない「七つ道具」とは何でしょう。

これ、7つじゃなくていいんですよね。じゃあ3つ。僕ね、でっかい取材するたびに服を買うんですよ。自分のような大きななりをした人間が納得のいく服が買えるお店というのは1カ所しかありません。新宿の伊勢丹にスーパーメンズというところがあるんです。そこのスーパースタッフのTさん、この方がまずひとつ目です。

もう行けば大切な仕事があるなって分かってくれているので、「北村さん今回は?」っていうから「鮨屋!」「クラッシックホテル!」とか、「イタリアから大切なゲストをお迎えする」というだけです。それでパパパーっとコーディネートしてくれます。

人は中身だっていうけどそんなのは嘘ですね。自分の服すらもコントロールできない人は、やっぱりアピールできないんですよ。ちなみに今日のジャケットは、祇園の人気芸妓の佳つ乃さんに、『日経おとなのOFF』の立ち上げ号の表紙に出てくださいとお願いしにいくときのために買ったバーバリーです。その時は上から下まで新調しました。

それから次ですが、服と同様に、僕は重要な取材の前に必ず理髪店にも行きます。記者時代には、全国あちこちに1週間とか1カ月っていう長期出張がありましたから、たいがいの都市には立ち寄る“床屋さん”がありますね。北海道でも京都でも、「おお久しぶり、また来たか」という感じで、そんな各都市の理髪店たちが二つ目です。

最後の3つ目は、銀座のはずれにあるKというすし屋なんです。カウンター8席に職人さんがなんと3人という小さな店。伝説的なおすし屋さんですが、そこの親方や職人さんに気に入ってもらって、何かあれば顔を出します。ここ、一昨日も実は行きました。

そんなもの仕事の七つ道具じゃないって思われるかもしれませんが、ここで偶然会った人と仕事が広がったりよくするんですよ。仕事上の重要な案件を話すときも、ブレーンの方たちをお誘いするのもそのすし屋に決めています。仕事が一段落した時には、一人でも行きます。そう考えてみると、僕にとって欠くべからざる人っていうのは、みんな“技術者”なんですよね。

悔しさを忘れないことが見る目を養う

最後に、金融商品をふくめ、日々モノや情報を取捨選択する私たちが「トレンディ」に生きるヒントを教えていただけますか。

商品について的確な情報感度があり、商品戦略で失敗しないということを「トレンディな消費者」とみるとすれば、理論的な判断力をもつだけでは実は50点なんです。もし失敗した時は、「悔しい」と、ちゃんと感情的になれること、これが大切ですね。

誰だって買い物で失敗したことぐらいはあるはずなのに、たいていの人はその悔しさを忘れるんです。僕は忘れませんよ(笑)。昔、付き合っていた恋人の誕生日に、ある、一線級ホテルに連れていったんです。ところが、その部屋から見える夜景は、雑誌に紹介されていたイメージカットとはまったく違っていたんです。自分が彼女にプレゼントしたいと思っていた夜景を眺めるには、あと1万円余計に払わなくてはいけなかった。でもそんなこと、雑誌には書いていなかったんです。そういう思いを、僕がつくった雑誌の読者には絶対にさせたくない。

だから「今度こそ間違えないぞ」「ふざけんなメーカー」と思ってみることが大切なんですよ。おそらく金融商品もそうですよね。失敗は二度と繰り返さないと、そう思えば商品の選択ももっと違った視点になると思うし、より幅広いものの見方ができるようになると思います。

 

北村 森(きたむら・もり)

1966年 富山県生まれ。慶應義塾大学法学部卒。92年に 日経ホーム出版社に入社し、「日経アドレ」「日経トレンディ」などで活躍。2001年「 日経おとなのOFF」の主任記者として、大人のための新しい情報誌市場を開拓 。2004年に古巣の 日経トレンディに副編集長として復帰し、 2005年から 編集長に就任。

座右の言葉
「激しく生き抜こう」 これは高校時代の熱血先生から言われた一言、どなたか著名な方が遺した言葉だそうですが、好きだった恩師の言葉として、自分はいまだに守っています。
座右の書
「一戔五厘の旗」花森安治著(暮らしの手帖社) 僕は6歳の時に「暮らしの手帖」を読んで雑誌編集者になりたいと思いました。念願の雑誌編集者になったとき、初給料でホテルに泊まり、本書中の一編「商品テスト入門」を手に覚えさせようと万年筆で写しました。「商品テストは消費者のためにあるのではなく、メーカーに役に立たない品をつくらせないようにするためにやる」という花森さん独特の逆説的ロジックの有効性をいまも信じています。

北村 森(きたむら・もり)

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