MONEYKitトップ > from MONEYKit > スペシャルインタビュー > メディアに訊く 日経トレンディ編集長 北村氏篇
トレンディ読者は失敗をしたくない人たち
「いま家計が苦しい」というお話は頷けるのですが、『日経トレンディ』にはそんな時代においても、購買力がある層が読む雑誌というイメージがあります。富裕層というと大げさだとしても、たとえば家には既に大型液晶テレビがあったり、高級ホテルやレストランに出かけてみたりする人たちです。
トレンディの読者も、僕たち編集者も、必ずしもお金持ちじゃないんです。潤沢な資産があるとか、年収1千万円以上の方ばかりじゃない。でもモノに対する意識は高い。ということは、失敗できないわけですよ。お金があれば新しいテレビに買い換えたり、明日は違う高級レストランに行けばいい。でも、失敗できないからトレンディを読むんです。これがバブル期と現在の大きな違いですね。ですから僕たちも、以前よりもより厳しく「買っていい・買っちゃダメ」ということを書かないといけなくなりました。
モノを見分ける目を養うということで、読者の参考になることを伺わせてください。編集長として、編集スタッフや記者の方に普段いわれていることはありますか?
ひとつは先ほどもいいましたが、その商品をどういう視点・視座で見るのか。もうひとつは1社に何かアドバンテージがあると気づいたら、もう1回、各社を見回せと言っています。思い込みで見ると、どこか抜け落ちがあるんですよ。
読者の方たちも、「この商品にはこんなサービス、こんな機能が付いているんだ」と気づいたら、それで終わらずに「他の商品はどうなんだろう、アピールしていないだけかもしれないし、やっぱり本当にないのかもしれない」と再確認してみてはどうでしょうか。
これは細かい話ですが、トレンディは商品ごとの見出しや原稿のスペースを原則として全部同じにしています。記者や専門家の方の評価も、それぞれ公平な記事スペースの中で、よいものはよい、悪いものは悪い、普通は普通と、特徴を分かるように書いてくださいと。今回の特集でも、人気ファンドも外貨預金も、同じ見方と文章量でそれぞれの商品や金融機関に言及して、じゃあ何がいいのかちゃんと「結論」を書きました。
過去や未来の製品も消費者の選択肢
トレンディには、現在以降のメーカーの販売計画予想や、新技術・新機能がプレミアムからコモディティへと一般化していく経過予想の図表がよく紹介されていますね。
消費者はいつも本気でモノを買うわけです。新製品のAからEの中からひとつ選んだらどれかではだめなんですよ。全部だめ、いまは待ちっていう選択もある。それからFとGという去年出た商品も消費者の選択肢なんですから、それも加えてテストしないとおかしい。さらにはH、I、Jという次期製品が夏には出ると。収集した情報によれば、どうもそっちの方がいいらしい。だったらいまは様子見、全部だめっていう選択だってあるかもしれない。物を選ぶっていうのは、そういうことですよね。
雑誌とインターネットとの関係については、どう見られていますか。情報誌にとっては、これも創刊当時と現在の大きな違いだと思うのですが。
ネットが定着したから雑誌は売れないっていう、あれは嘘です。ネットに勝つ負けるじゃなくて、僕らはネットが引用するような雑誌であればいい。「トレンディにこんな面白いことが書いてあったよ」って、そう言ってくれる記事を作ることが重要なんじゃないかなとは思っていますね。思わずブログやBBSに書きたくなる、そういうびっくり箱のような雑誌を常に作り続けていきたいと思っています。
たとえば今、自動車メーカーのサイトなんてすごいですよ。面白い仕掛けがいろいろあって、画像は高精細、情報が充実しているのは当たり前。ライバルメーカーの車と主要スペックを比較までしているところもあります。金融の世界で例えれば、ある銀行の公式サイトに、すべての金融機関の外貨預金の手数料が載っていて比較できるような感覚です。
そんな時代にスペック比較だとか、「卓越したドライバビリティ」だ「スタイリッシュなデザイン」だなんて記事を書いたって、これは勝てるはずがないんですよ。ならば僕ら独特のやり方で記事を作っていくしかない。ネットの世界ではできない記事を作り、ネットの住人たちがそれを楽しんで「こんなおもしろい記事があったよ」という情報が駆けめぐる、そんな雑誌でありたいですね。

- メディアに訊く 日経トレンディ編集長 北村氏篇(1)
- メディアに訊く 日経トレンディ編集長 北村氏篇(2)
- メディアに訊く 日経トレンディ編集長 北村氏篇(3)
- メディアに訊く 日経トレンディ編集長 北村氏篇(4)

