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スペシャルインタビュー
アナリスト・インタビュー 山下政比呂氏

長・中・短期のシナリオをもち、相場観のロスカット目標を定める

個人的なお話を少しお尋ねします。金融の世界に入られたきっかけを教えていただけますか。

大学を卒業して証券会社に入社したのですが、そこでチャートを描くことを覚えました。チャートを抜きにしても証券会社では仕事全体が相場に関わるものでしたが、相場の面白さをさらに追求したくなりまして、米系の銀行に移り、自分の希望であった為替のディーリングルームに配属されました。

お若い頃からデータを読むとか、グラフの動きに法則性を見つけ出すといった数学的な世界はお好きだったのですか。

そうですね。ただ自分で法則を見い出すのではありません。テクニカル分析は皆さんがいわれるほど難しいものではないのですが、見るものはひとつなのに手法が30、40とたくさんあることが戸惑われる原因だと思います。実際、チャートに関する本は世の中に氾濫していますから。私が思うに、手法がたくさんあるというのは、ひとつでは信頼が置けないということでもあり、複数の手法の組み合わせで対応することが大切なのではないでしょうか。個人的にはそれがテクニカル分析の面白さだと思います。

自分の相場観を組み立てる場合に、ファンダメンタルを重視する人、チャートを重視する人、両者のバランスを重視する人などさまざまなタイプがあります。自分としては、チャートのほうを若干重視して相場観を作っていますね。

外国為替市場に関わるうえで、心がけていることはありますか。

いまの相場の位置が大きな流れのなかでどこにあるかということを、絶えず意識するようにしています。数年単位や今年1年の動きといった大局観から、1月先にどうなるかという中局観、そして週単位、日単位の小局観と、さまざまな時間軸を組み合わせながら相場観を作っていきます。ちょうど登山の時に地図を見るような感じでしょうか。山に登る時には、登り坂もあるし尾根を下っている時もあるわけですね。重要なのは一歩一歩の歩みのなかで、常に自分の位置を大きな視野で把握しておくことです。

大きな流れということで少しお話しすれば、95年4月19日の79.75円を底に、ドルは安値を更新していません。ということは大きな流れではドルが常に上向いているわけです。最安値を切らない限り、方向性は上、流れはドル高だろうと。それをベースに中期、短期の動きをさまざまなチャートで分析しているわけです。

写真

それと、自分の相場観を作っているとはいえ、これは絶対当たるとは限らないわけです。常に市場、マーケットがどう思っているかということを忘れてはなりません。マーケットは誰が美人かではなく、誰が美人と評価されているかを当てる「美人投票」だとよくいわれますが、自分の相場観を作る上でもそのことは念頭に置かなくてはなりません。

それはよくいわれることですが、プロの自負があればあるほど難しいことなのでしょうね。

レオン・フェスティンガーというアメリカの社会心理学者が発表した、『認知的不協和理論』という有名な理論があります。人は意識の中に何らかの矛盾が生まれると、不快な状態になる。それを解消しようとして、矛盾を増すおそれのある自分とは逆の考えかたや情報を回避しようする。これが認知的不協和理論です。周りの人の相場観というものは、状況に応じて変化するものですから、自分の考えと相反する情報も素直に受け入れなくてはいけません。マーケットでは、自分は間違っている場合が多々あるわけですから、それに耳を傾けて、自分の間違いを認めるということが必要ですね。

主に使われているテクニカル分析について、教えていただけますか。

先ほども申し上げたように、大局、中局、小局と相場観はさまざまな時間軸で作っておくのですが、年単位ではエリオット波動()などのサイクル、月単位ではエリオット波動と一目均衡表()、週・日単位では羽黒法()や酒田罫線法()などを主に利用して分析しています。

しかしながら、エリオット波動でドル高と私が思ったとしても、それはひとつの見方であって、ドル安になることも当然あります。その際に重要なのは、自分の相場観に「このレベルまで自分の相場観と市場が食い違ったら自分の考えは間違い」という、明確な前提条件を付けたシナリオを長中短期でつくっておくことです。必要に応じて自分の相場観のロスカットをして、シナリオを修正していくという感じですね。繰り返しになりますが、自分が中心ではなく、相場がどこに向かっているのかを頭の中にいれて相場観をつくっていくわけです。

※各テクニカル分析の手法について

エリオット波動理論
米のラルフ・ネルソン・エリオットが考案したテクニカル分析手法です。中長期的に相場を見た場合、上昇相場なら上昇に向かう3つの動きと修正する2つの動きによる5つの動き(波動)で成立しているという考え方です。
一目均衡表
一目山人という雅号を持った人が開発したテクニカル分析手法です。転換線、基準線、先行スパン、遅行スパンを基本的な指標とし、これらの交わり具合や線で囲んでできる「雲」の状況などを見ながら、売買のタイミングを計る手法として知られています。
羽黒法
羽黒山人と称する人物が、北陸黒部の山中で編み出したといわれるテクニカル分析手法です。週足のローソク足を用い、週の中心線を重視します。
酒田罫線法
山形県庄内酒田に生まれた本間宗久によって編み出されたテクニカル分析手法です。「今日も酒田のあいつが一人勝ち、大阪も江戸も商売上がったりだ」とうたわれたほど。ローソク足を利用します。

「相場観のロスカット」というのは、興味深いお話です。

テクニカル分析では、売買のロスカット目標を定めることが非常に大事なんです。ロスカットというと、一般には投資家の資金量に応じた損切りというイメージがありますが、自分の相場観の損切りというのもあるわけです。

 

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