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金利レポート
フィスコ金利レポート 円金利見通し:2008年5月20日

「中立性を強調した白川日銀総裁」

5月12日の日本記者クラブにおける白川日銀総裁の講演では、金融政策の方向性について中立性を意識した発言が目立っていました。福井総裁から白川総裁にバトンタッチ後、日銀の金融政策の方向性について大きく舵を切ったとの見方もありましたが、その基本姿勢には大きな変化はないことが次の発言からも明らかです。
「やや大きな構図で捉えた場合、現在、実質短期金利がゼロ%付近の極めて低い水準にあるということは、中央銀行として、当然留意しておかなければなりません。したがって、日本経済が物価安定のもとで持続的な成長軌道を辿るという見通しの確度が高いのであれば、金利水準は調整していくことになると思います。」
その一方で、現在は景気の下振れリスクに注意を払っている姿勢を示し、「経済の先行きには常に不確実性があるため、金融政策運営においては、ひとつの見通しだけに頼るのではなく、見通しに対するリスク要因を十分に考慮する必要があります。」としています。
さらに「リスクのバランスに偏りがあり、特に、海外経済や国際金融資本市場を巡る不確実性、エネルギー・原材料価格高の影響など、景気の下振れリスクに注意しながら政策運営を行うことが必要な局面にあると考えています。」と付け加えました。
白川総裁は、現状の金融政策は上下両方向のリスク要因を丹念に点検しながら、それらに応じて機動的に金融政策運営を行っていく姿勢を示しました。しかし、同時に次のような発言もしています。
「政策当局者も含め、現状を将来に投影するというのは人間の本性であることも十分自覚する必要があります。冷静に考えると、これまで述べてきたような世界経済や日本経済を覆う霧が薄れてくる場合には、上振れ方向のリスクの重要性が増してくることも意識しておく必要があります。」
的確に未来を見通せない以上は現状を元に未来を判断するほかないが、悲観的な見方が強い中にあっても、上振れ方向のリスクも意識する必要性を白川総裁は説いていました。

足元の経済指標を見ても、たとえば1〜3月期実質GDPは、前期比+0.8%、年率+3.3%と、3四半期連続のプラス成長となっています。年率で+2.5%近辺といった市場予想を上回り、1%台半ばから後半とされる潜在成長率も上回る伸びとなっています。
寄与度は内需+0.3%、外需+0.5%と引き続き外需主導ながらも、昨年6月の改正建築基準法の施行などにより低迷していた住宅投資は+4.6%となり、また、うるう年効果もあって個人消費も前期比+0.8%としっかりしていました。
ただし、設備投資は前期比−0.9%と落ち込むなど、警戒すべき数字も出ているのも確かです。また、国内需要デフレーターは、前年同期比+0.5%となるなど、物価上昇も意識されてきています。

債券相場は4月から5月にかけて大きく下落しましたが、景気などに対しての悲観的な見方の後退が大きな要因として挙げられます。
3月末にかけては大手銀行などを主体に日銀の利下げまで意識されたことで、5年債利回りは0.7%に、2年債利回りは0.505%と日銀の政策金利近くまで低下しました。
しかし、米国のサブプライムローン(信用力の低い層を対象とした住宅ローン)問題による金融収縮の広がりといった懸念は、米大手証券ベア・スターンズの救済の発表や、米金融機関による増資などの発表によって徐々に後退し、米経済指標も思いの他しっかりしているものが出ていたことで、過度の悲観論が後退してきました。
これらを受けてFRB(米国連邦準備理事会)による利下げ打ち止め観測も出てきており、市場ではさらに2008年後半にかけて利上げ観測も出てきたことで、米国債は大きく下落しました。
国内では、4月に入り大手銀行などが中期ゾーン主体に大量に売りを出したことに加え、業者のリスク許容度も低下したことで、5年や10年といった大量に発行される国債の入札も低調となりました。
5月15日に入札された5年国債において、利率は1.3%と、前回の0.8%から0.5%も引き上げられましたが、利率の引き上げ幅の大きさは、それだけ前回の5年国債の入札日(4月10日)から昨日にかけて債券相場が大幅に下落したことを示したといえます。
また、債券先物にはCTA(Commodity Trading Advisor)と呼ばれる海外投資家による仕掛け的な売りなども入り、5月に入り、10年債利回りで昨年10月以来の1.7%台、5年債利回りで昨年10月以来の1.3%台まで利回りは上昇しました。
ただし、ここからさらに売り込むとなれば、今度は日銀の利上げも意識される水準ともなります。日本経済については、今後、大きく落ち込むことは考えづらいものの、先行きの不透明感が完全に払拭されたわけでもありません。
原油価格の上昇や食料品などの価格上昇を受けた物価上昇も気になりますが、まだ年内の日銀による利上げを織り込みに行くだけの環境にもありません。
5月19日から20日にかけての金融政策決定会合においては、今回も全員一致での現状維持となりましたが、市場関係者の大方の見方は、年内については金融政策の変更は難しいのではないかというものとなっています。
ただし、投資家も引き続き慎重とみられ、業者もリスクを取りづらい状況に変りはありません。このため目先は、10年債利回りでの1.7%、5年債利回りの1.3%が節目となり、債券はいったん戻りを試す展開も予想されますが、戻りも限られ、今後は落ち着きどころを探る展開となることが予想されます。

過去一年間の日銀金融政策の推移

2007年5月17日現状維持、全員一致
2007年6月15日現状維持、全員一致
2007年7月12日現状維持、賛成8 反対1(反対は水野委員)
2007年8月23日現状維持、賛成8 反対1(反対は水野委員)
2007年9月19日現状維持、賛成8 反対1(反対は水野委員)
2007年10月11日現状維持、賛成8 反対1(反対は水野委員)
2007年10月31日現状維持、賛成8 反対1(反対は水野委員)
2007年11月13日現状維持、賛成8 反対1(反対は水野委員)
2007年12月20日現状維持、全員一致
2008年1月22日現状維持、全員一致
2008年2月15日現状維持、全員一致
2008年3月6日現状維持、全員一致
2008年4月9日現状維持、全員一致
2008年5月20日現状維持、全員一致

予想レンジ(5月20日現在)

 現状6月13日まで
無担保コール翌日物0.5%0.5%
基準貸出金利0.75%0.75%
2年国債利回り0.805%0.70%〜0.90%
5年国債利回り1.200%1.100%〜1.300%
10年国債利回り1.645%1.500%〜1.700%

株式会社フィスコ
久保田博幸

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レポート提供:株式会社フィスコ

http://www.fisco.co.jp/

株式会社フィスコは1995年5月に設立された日本では数少ない独立系の金融市場の調査機関として、機関投資家や個人投資家へリサーチサービスを提供しています。

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