MONEYKitトップ > from MONEYKit > 為替・金利レポート > 金利レポート > フィスコ金利レポート ユーロ金利見通し:2008年3月10日
ECB(欧州中央銀行)の3月6日の定例理事会では、政策金利は引き続き大方の予想通り「据え置き」となりました。
本レポートの1月分で、「ECBは、当面は政策金利を据え置きますが、いずれ緩和方向へ舵を切る余地が生まれるのではないかと考えています」と書いた通り、現在でもECBの<次の一手>は利下げと見ています。ただ、やや時間はかかるかもしれません。
今月号でも、会合後のトリシェ総裁会見を見ていきましょう。
インフレについては、「短期的なインフレに強い上昇圧力」が見られ、「インフレ期待抑制が最優先」であると述べました。インフレが+3.2%(前年比)では、金融の手綱をゆるめるわけにはいかないという意味ととってよいでしょう。
景気については、「ユーロ圏経済のファンダメンタルズは健全」なるも、「経済成長見通しをめぐる不透明性は依然、異例なほど大」きく、「経済活動見通しへの下振れリスク」があると述べています。
「利下げ主張も利上げ主張もなく、全会一致」で「据え置き」が決定したことは2ヶ月連続となり、理事の見解は安定しています。また、「現在の金融政策スタンスはわれわれの目標達成に寄与」しており、「ECBは市場の金利期待には対応しない」と述べましたが、これは金融市場の利下げ催促には乗らない、という表明でしょう。しかし自由な損益動機で行動する金融市場と、いかに優秀な人材が集まっているとはいえ官僚組織とでは、長期的に見てどちらの正答率が高いかは、(常にではないですが)ある程度明らかです。
為替については「主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で合意した、為替の過剰変動は好ましくない」・「強いドルは米国の国益にかなうという米政府の文言を極めて大きな注目をもって指摘」するとしています。ユーロ圏では、産業界に限らずドル安の負担を自分たちが過剰に引き受けているとの意識が強く、トリシェ総裁もこれに配慮する形となりました。
まとめとして、「引き続きすべての動向を非常に注意深く監視」していくとしています。
前月述べた、近い将来に金融緩和をするかどうかのカギの一つとなる、ECBスタッフ見通しでは、「2008年成長見通し1.3–2.1%(前回1.5–2.5%)、2009年1.3–2.3%(1.6–2.6%)」・「2008年ユーロ・ドル平均1.47ドル、2009年平均1.46ドル」・「消費者物価指数2008年2.6–3.2%、2009年1.5–2.7%」となっています。これは、金融市場参加者からは過度に景気に楽観的、過度にインフレに悲観的と批判が多いですが、「異例なほどの不透明性」があるのである程度腰だめの数字ではあると考えられます。
具体的なタイミングの問題はなお残りますが、ECBが金融緩和へ向けて徐々に舵をきりつつあるとの認識に変わりはありません。そのスピードは日銀と同程度なのでしょう。
「物価の安定」と「雇用の最大限の拡大」の二つを金融政策の目的として義務付けられている米FRB(連邦準備理事会)と異なり、ECBの「主たる目的は物価の安定を維持すること」と定められています。ここで「物価の安定」とは「消費者物価で前年比2%未満」と定義されます。これには、今、世界中で問題となっている食料やエネルギーの値上がりも含まれます(FRBの場合はそれらを含めず、日本の場合も生鮮食料品は含まれておりません。もっとも米・日は明示のインフレ目標さえありません)。ECBには「物価の安定こそ金融政策が経済成長と雇用拡大にできる最大の貢献である」との使命感があります。といってもECBが物価以外の経済に起こっていることに無頓着というわけではもちろんありません。ただ、経済の情勢がインフレの先行きに影響していく限りにおいて関心を高めます。目下のサブプライム問題において、震源地とそこへの投資家、という立場の差はありますが、グローバルな金融・信用市場の混乱の中でFRBが積極的に利下げをしているのに対し、ECBはいまだ音無しです。ECBは、インフレ目標を大幅に越える物価上昇は賃金へのはね返りを生む恐れが高く(既に一部生んでいます)、高止まりするマネーサプライの伸びと相まって、与えられた使命そのものを脅かしかねないものと認識しています。金融市場からの利下げ催促や産業界からのユーロ高批判はありますが、ECBのこの頑なとも見える姿勢は、ドルと相当程度張り合うユーロという通貨の価値安定を担う「通貨の番人」としては非常にほめるべきものがあります。サブプライム問題でドル建て資産のマジックが消え、FRBがその後始末で次々利下げしてドルの価値を損なっているのと比べた場合、それに代わる安心な通貨を世界中の人々に提供することになり、長い目ではプラスとさえいえるかもしれません。
| 3月10日時点 | 1ヶ月後予想 | |
|---|---|---|
| 政策金利 | 現行4.00% | 3.75〜4.00% |
| 2年国債利回り | 3.27% | 3.05〜3.40% |
| 10年国債利回り | 3.79% | 3.60〜3.90% |
株式会社フィスコ
田浦哲哉
※当レポートでは米ドルをドルと表記しています。
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レポート提供:株式会社フィスコ
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