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金利レポート
フィスコ金利レポート 円金利見通し:2008年1月23日

「日銀に追加利下げの思惑も」

2008年に入り最初の金融政策決定会合(1月21日〜22日。以下、決定会合)では、全員一致で現状の金融政策を維持することが決定されました。
しかし、世界の金融市場は、米サブプライム(信用力の低い層を対象とした住宅ローン)問題を発端に大きく混乱の度を深め、日銀の金融政策が決定された同日(22日)に、FRB(米連邦準備理事会)は臨時のFOMC(連邦公開市場委員会)を招集し、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標値を年4.25%から年3.5%に、0.75%引き下げることを決めました。月末に予定されていた定例のFOMCまで待てずに金利引き下げを実施したということは、それだけFRBも米国株の下げから、欧州、アジア、中東市場にいたるまで世界的に大幅株安連鎖状態となっている市場の混乱を懸念していたため、とみられます。
FOMC後の声明文では、「金融市場の混乱は幅広く悪化してきた」と表明されており、さらに、最近の米国経済指標によると、住宅市場は一段の低迷と労働市場のある程度の減速が見られるなど、米国経済の下振れリスクも強まったことが示されています。
日銀の福井総裁も22日の記者会見で、「米経済は住宅市場の調整や失業率の高まりなどで減速感が強まりつつある」とも指摘しています。

日経平均株価の動向を少し遡って見てみると、2004年3月から2005年7月にかけて日経平均は11,000円から12,000円のレンジ内での動きが続いていました。2005年8月に12,000円を大きく上回った後は上昇基調となり、2007年7月に18,261.98円の高値をつけました。ところが、8月以降は米サブプライム問題の表面化により、1月22日の13,000円割れまでの急落となったのです。

決定会合では、昨年10月に発表した展望リポートの中間レビューを行い、2007年度の国内経済は潜在成長率(1%台半ばから後半)を下回る成長に減速する、との判断に変え、GDP(国内総生産)予測を下方修正しました。これは、住宅投資の減少が長引いている上に、原材料高による企業の収益悪化が進んだことなどが影響しています。福井総裁も会見で「世界経済、国際金融市場、原材料高をめぐる不確実性に加え、住宅投資の影響からも減速している」と指摘していました。
住宅市場での落ち込みは、構造計算書偽装事件を踏まえ建築確認の手続きを厳格化した、建築基準法改正の影響が大きいとみられますが、首都圏などのマンション販売件数の落ち込みにより、先行き不透明感も強まっていることも確かです。
日銀が23日に発表した金融経済月報では、「輸出や生産は増加を続けている。企業収益が総じて高水準で推移する中、設備投資も引き続き増加基調にある。また、雇用者所得が緩やかな増加を続けるもとで、個人消費は底堅く推移している。一方、公共投資は低調に推移しており、住宅投資は大幅に減少している」としています。

また、福井総裁は会見で、「先行き判断は微妙な局面に来ている」としながらも、「基本シナリオは維持し、政策スタンスは変わりない」と発言しました。しかし、市場ではここにきて日銀の利下げ観測の思惑もくすぶり始めています。長期金利の動向も少し振り返って見てみると、2005年7月に一時1.2%を割り込む場面があった以降、長期金利は上昇基調となりました。2006年3月に日銀は量的緩和を解除し、これを受け4月には2%をつける場面もありましたが、長期金利の上昇は結果として2006年5月の2.005%までとなり、その後は1.5%から2%あたりのレンジ内での動きとなりました。しかし、2007年11月には米サブプライム問題の影響による株安などから米国債などが買われたことを受け、日本の長期金利は2005年9月以来の1.4%も割り込み、日銀の量的緩和解除前の水準になっています。
さらに、22日のFRBによる緊急利下げの発表を受けて、米国債券市場では中短期債主体に買い進まれ、一時1.98%と2%を割り込み、2004年4月19日以来の水準まで低下しました。また、米国10年債利回りは前週末比0.20%低下の3.43%と、引き下げ後の政策金利(3.5%)も下回っています。ドイツでもすでに10年債利回りはECBの政策金利(4.0%)を下回るなど、世界的にリスク回避の動きから債券は買われました。
そして日本でも、1月23日に2年国債の利回りが、日銀の政策金利(0.5%)を割り込み、円金利先物なども買われるなど、中短期の金利に低下圧力が加わる反面、超長期債の利回りが上昇するなど、日銀に対して利下げを促すかのような動きにも見えます。

実際には海外投資家などによる思惑的な動きも強いものと見られますが、これまで日銀の「利上げ」はいずれあるとしても「利下げ」はないと見ていた大手の金融機関なども、利下げの可能性を全く否定することもできない状況となり、中短期を主体に買いを入れてきているとも指摘されています。

福井総裁は22日の会見で、「利下げ観測があることは承知している」とも発言しています。「株価下落、逆資産効果やマインドへの影響を通じてネガティブな影響及ぼすリスク」も指摘し、さらに「低金利であるゆえに金融政策に制約あるとは考えず」と今後、利下げという選択肢を全く考えていないわけではないことを指摘していました。 現実には物価上昇圧力の強まりなどもあり、今後の日本の実態経済の動向を見極めながら、引き続き慎重に先行きを見ていくことにはなりそうです。しかし、度重なるFRBの利下げにもかかわらず金融市場の混乱が今後も続き、さらに米経済の減速が世界経済に大きく影響し、日本経済についても当初の見込みからさらに経済が落ち込む、というリスクが顕在化した際には、日銀としても数少ない利下げというカードを切らざるを得ないかもしれません。 2月9日にG7が東京で開催されます。福井総裁は「G7では金融市場の変化の中で先行き展望を共有できるよう議長国としてリーダーシップ発揮したい」と発言していましたが、今回の金融市場の混乱に対し、今後日銀がどのような対応をしてくるのかも注目されそうです。

予想レンジ

 1月22日現在2月15日まで
無担保コール翌日物0.5%0.5%
基準貸出金利0.75%0.75%
2年国債利回り0.515%0.4%〜0.6%
5年国債利回り0.780%0.65%〜0.85%
10年国債利回り1.315%1.2%〜1.4%

(参考データ)これまでの金融政策決定会合の結果

2008年1月22日全員一致で現状維持
2007年12月20日全員一致で現状維持
2007年11月13日8対1賛成多数で現状維持(反対は水野委員)
2007年10月31日8対1賛成多数で現状維持(反対は水野委員)
2007年10月11日8対1賛成多数で現状維持(反対は水野委員)
2007年9月19日8対1賛成多数で現状維持(反対は水野委員)
2007年8月23日8対1賛成多数で現状維持(反対は水野委員)
2007年7月12日8対1賛成多数で現状維持(反対は水野委員)
2007年6月15日全員一致で現状維持
2007年5月17日全員一致で現状維持
2007年4月27日全員一致で現状維持
2007年4月10日全員一致で現状維持
2007年3月20日全員一致で現状維持
2007年2月21日8対1の賛成多数(反対は岩田副総裁)で政策金利を0.5%に引き下げ(公定歩合も0.75%に引き上げ)

株式会社フィスコ
久保田博幸

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レポート提供:株式会社フィスコ

http://www.fisco.co.jp/

株式会社フィスコは1995年5月に設立された日本では数少ない独立系の金融市場の調査機関として、機関投資家や個人投資家へリサーチサービスを提供しています。

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