MONEYKitトップ > from MONEYKit > 為替・金利レポート > 金利レポート > フィスコ金利レポート ユーロ金利見通し:2008年1月15日
ECB(欧州中央銀行)の1月10日の定例理事会では、大方の予想通り政策金利はまたも「据え置き」となりました。 本レポートの12月分で、「当面、緩和・引き締めのどちらへも動きにくい」と書きましたが、ECBの今回の決定は、結果だけを見るとそれに沿った格好となりました。
定例理事会後の記者会見で、トリシェECB総裁は、「指標は短期的に強い上向き価格圧力を示す」・「指標は中期的価格リスクが上向きである事も示している」・「ECBは引き続き予防的措置への対応があると表明」・「利上げは討議したが、利下げは話し合われなかった」と述べ、「インフレ抑制が最優先課題」であり、「ユーロ圏の経済基盤は引き続き健全」とする一方で、「経済見通しに下振れリスク」があると述べています。また、「原油や商品価格、貿易不均衡がリスク」・「2008年インフレは緩やかに緩和」・「インフレは2%を大幅に上回る水準を継続」・「賃金拡大はインフレ上振れリスクの一要因」・「原油高の2次的影響を避ける事が基本」・「市場混乱の経済への影響は引き続き不透明」であり、「ECBは引き続き全ての展開を非常に綿密に監視」・「ECBは全面的な警戒態勢」にある、と述べました。
まず、「賃金拡大はインフレ上振れリスクの一要因」・「原油高の2次的影響を避ける事が基本」ということに注目してみましょう。これからユーロ圏の多くの国で春の賃金交渉が行われます。独の大手労組はインフレの高止まりを背景にかなり積極的な賃上げを要求しています。これが賃金改定に大きく反映された場合(このことを「2次的影響」と呼びます)、様々な値上げを吸収できるだけの購買力を労働者=消費者が身につけることになり、賃金とインフレのスパイラル的値上がりが起こる危険があり、ECBとしても物価動向に相当神経質になる必要があります。
一方、「利上げは討議したが、利下げは話し合われなかった」ということにも注目しましょう。質疑応答でも、「利上げと政策金利据え置きの選択肢の功罪は討議したが、第三の選択肢(利下げ)は検討もしなかった」と明快に述べています。景気に下振れの危険があると認めているにもかかわらず利下げは検討さえしなかった、というのは市場関係者にはやや驚きをもって受け止められました。
これらの発言から、ECBは物価の番人としての役割に非常に忠実なのがわかります。筆者のメインシナリオではありませんが米国がもし景気後退をまぬがれ再加速し始めたり、米国の景気が減速してもグローバル景気が底堅く推移したりするような事態ともなれば、ECBは率先して追加利上げを模索する可能性さえ示唆する発言です。
この背景には、大恐慌やそのデフレの恐怖が組織のDNAにあり、雇用の最大限の拡大と物価の安定の二兎を追うよう法定されているFed(米連邦準備理事会)のスタンスと、ハイパー・インフレへの恐怖が組織のDNAに受け継がれておおむね物価の安定(通貨価値の維持)のみを使命とするECBのスタンスとの違いが鮮明に現われているといえるでしょう。国内景気のサイクルの差ももちろんありますが、今の局面にあって二つの中央銀行の姿勢の乖離が顕著となっています。
筆者自身は、今回の米国住宅市場などにおける行き過ぎた信用拡大のツケは高いものになると考えていますので、その反動としての景気後退も長く苦しいものとなる可能性が高いと見ています。いかに新興国が元気でも、米国の失われた需要を埋め合わせるのはそう簡単ではないと思います(例えば、米国で売れるクルマとインドで売れるクルマは同じものとは思えません)。したがって、半年先には世界はインフレではなく、ディスインフレ、デフレに関心を移していると考えます。このメインシナリオを前提とすれば、ECBは、当面は政策金利を据え置きますが、いずれ緩和方向へ舵を切る余地が生まれるのではないかと考えています。
| 1月15日時点 | 1ヶ月後予想 | |
|---|---|---|
| 政策金利 | 現行4.00% | 4.00% |
| 2年国債利回り | 3.68% | 3.55〜3.90% |
| 10年国債利回り | 4.05% | 3.85〜4.25% |
株式会社フィスコ
田浦哲哉
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レポート提供:株式会社フィスコ
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