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スペシャルインタビュー
話題の本 著者インタビュー 『スタバではグランデを買え!』 吉本佳生さんにきく 経済学者のやさしい生活金融講座

第4回(最終回) 金利と物価とインフレの関係

金利は物価の上昇を反映する

――
前回は「株価と為替と内外の金利差を連動して見ることの大切さ」をお話ししていだたきました。今回は金利の話からしていただきたいと思います。

私が「金利が上がるのはどういう時ですか」と質問すると、金融機関のかたは、「景気が良くなると金利は上がります」と答えます。マクロ経済学ではこれでほとんど正解ですが、実際には金利を景気で説明するのは難しいのです。私は「金利は物価で決まっています」と説明したほうが分りやすいですよと、アドバイスをするようにしています。

一般の人々が金利のことが特に気になるのは、住宅ローンを借りるときです。例えば変動金利で住宅ローンを借りたい人が、担当者に「金利の変動は景気の変化に伴います」と説明されたとします。「じゃあ経済成長率が5%になったら、金利は何%ぐらいになるんですか」と聞いても、相手は答えようがありません。しかし「物価の上昇率に合わせて上がります」という説明なら、「年5%の消費者物価上昇率が起きた時には、金利は5%を少し上回りますよ」という話ができます。逆にいえば、「年10%の金利が実現しているとしたら、その背景には10%に近い物価上昇(インフレ)が起きているんです」という説明もできます。

住宅ローンでは金利の見込みはとても大事ですから、これはぜひ覚えておいていただきたいですね。それと、「年5%のインフレが生じれば、住宅ローンや預金の金利も5%より高くなる(ただし適切な金利を銀行がつけてくれるなら)」ということを知っておけば、インフレに対して過剰な不安を煽る金融広告にも冷静な判断ができると思います。なぜ金利が物価上昇を反映して決まるかは、私の新刊『金融商品にだまされるな!(ダイヤモンド社刊)』で詳しく説明しています。ご興味のある方はご一読いただきたいと思います。

インフレは本当に怖いのか

――
インフレはさほど怖くないということですか。いま世間で言われていることと違うようです。

その前に、「本当にインフレが来るのか」という話をしましょう。今まではインフレというと、「海外の何かの値段が上がるから心配」という話でした。しかし、今もし原油が100ドルを突破しても、すぐにインフレにはならないと思います。原油で発電しているといっても、そのコスト自体がGDPに占める割合は低いのです。ただし10年後、20年後は、かなり物価が上がりそうだと私も思います。なぜなら、私たち日本人が払っているコストの大部分が労働コストだからです。日本は少子高齢化が進みますから、労働コストは長期的に見れば上がります。労働コストが上がれば、一気にインフレになるでしょう。

でも、それは賃金や預金金利も上がるということです。結局、インフレ時に自分の賃金も上がるような状態になっているかを、見極めるということが大切だと思います。同じようにインフレになって金利が上がるなら、住宅ローンは固定金利で組んでおいた方が魅力なのかもしれません。しかし自分はインフレに伴って賃金がしっかり上昇する仕事についているという場合は、変動金利で返済していっても怖くないかもしれない。いずれにしてもインフレのことを考えるのは重要なのに、誤解も多いということです。

――
インフレを怖がる前にインフレの仕組みを知り、そして自分にとって何が不安なのかを知り、自分が付き合う金融商品を選ぶということですね。

その通りです。金融商品の中には、「インフレに強い」といいながら、実際にはインフレリスクのヘッジにならないものがあります。代表的なのは元本保証型の変額年金保険です。普通の変額年金保険は投資信託の運用成績いかんですから、コストが適切であればいいでしょう。ところが変額年金保険でも元本保証型は、大部分が債券運用です。つまり固定金利の債券での運用が中心になっているのですから、インフレに弱い商品なのです。では何がインフレに強い金融商品かといえば、銀行の主力商品である普通預金や、中途解約が簡単にできる定期預金というのが正しい答えです。本来インフレにすぐ連動して、放っておいても上がるのは預金金利なわけですから。

ただし、そこには「適切な金利を銀行がつけてくれるならば」という条件がつきます。そしてこの条件をクリアできるのは、取引コストの低いネット専業銀行がまず有力です。アメリカでは実際そうなんですよ。日本も今後そうなるかどうかは、ひとえにソニーバンクをはじめとするネット銀行の努力にかかっています。自分が預けている金融機関の預貯金金利がインフレに負けているようでしたら、他の商品に替える前に銀行を替えましょう。いまはインターネットで、各銀行の金利が簡単にチェックできます。

――
最後にソニーバンクについて、ご意見やアドバイスがあればお願いします。

まず細かいところで意見を申し上げれば、満期時の為替レートによって受取額が変わってくる特約付外貨定期預金のような、特殊な仕組みをもつ商品は慎重な売りかたをしてほしいですね。ある程度金融知識を持つ人が利用すべき商品ということで相手を選ぶと思いますし、商品説明をより分かりやすくしてもらいたいと思います。

そして、これは本当にお世辞で申し上げているわけではないのですが、今後の金融機関のあり方として、ぜひとも20年後にはソニーバンクのようなタイプの銀行が日本のトップバンクであってほしいと思います。できれば10年で達成していだきたいですね。10年って、なんだって起こりえる期間だと思うんです。本当の意味で日本の金融ビジネスが正常化するためには、大量の人員をかかえている金融機関に私は期待できません。やはり新規参入者が、大きく変えるしかないと思います。為替と株式と金利の情報を融合させたネットサービスの開拓と、銀行の本業である普通預金の金利がインフレ率を上回ること。欲張りなようですが、ソニーバンクだから期待できることとして、この二つはぜひ頑張ってください。

吉本佳生氏

吉本佳生(よしもと・よしお)

経済学者(エコノミスト)。1963年三重県生まれ。名古屋市立大学経済学部卒業後、住友銀行勤務を経て、名古屋市立大学大学院経済学研究科満期退学。主な著書に『金融商品にだまされるな!』『スタバではグランデを買え!』(共にダイアモンド社)、『金融広告を読め』(光文社新書)など。

私の七つ道具
  • ノートPC
  • ノートPC用のモバイル通信カード
  • 携帯USBメモリー
  • 作図ソフト

どこに行くにもノートPCを持ち歩いて、ネットにアクセスしたり、原稿を書いています。ただパソコンをよく落としますし、壊れてしまったことも多いので、書きかけの原稿データをなくしてしまった苦い経験が何度もあります。ですから携帯USBメモリーは、ケータイ電話のストラップにいつも二つ付けているほどの必需品。作図ソフトは特定のソフトへのこだわりはないのですが、最近は同じソフトを使っていて、自著の中の図表はすべて自分で作成しています。原稿の内容に即した図が、自分の意図通り清書状態まで描けることは、じつは、本の書き手としての私の一番の強みだと思っています。

座右の銘

「人間万事塞翁が馬」

本当に一所懸命頑張っても運がなくてうまくいかない場合もありますし、たまたま出会った人にすごく大きな影響を受けることもあります。その時はいいと思わなかったことが、結果としてプラスになったり、人生何がどう転ぶか分からない。だからすべての出会いや、自分に起こったことを大切にしたいですね。

インタビュー後記

はじめて吉本先生の著書と出会ったのは、数年前に出版された『金融広告を読め』(光文社新書)でした。消費者目線から金融広告を分析するという発想が斬新で、一気に読み通した記憶があります。さらに当時、広告宣伝を担当していたので、どんなことを書かれているのだろうか、と緊張気味でした。

インタビューの最後で、大きな期待を寄せていただいて、一気に緊張がぶり返しました。
動きの早いネット業界に身をおいていることもあり、「10年後」「20年後」という長さで発想をしていません。
20年後といえば、わたしは還暦目前。そのとき日本や日本の金融業界がどうなるか、ではなく、どうなるべきか、どうしたいか、考えながら日々を過ごしたいと思います。
トップバンクはあまりに高い目標過ぎて、くらくらしそうですが、付加価値を深めていくことで特定の分野ではトップバンクでいたいと思っています。

さて、4回にわたってお付き合いいただいたインタビューもこれで最終回です。
抽選で50名のかたに今回ご紹介した吉本先生の著書『スタバではグランデを買え!』をプレゼントいたします。ご応募は、サービスサイトよりログイン後、「ホーム」-「セミナー・アンケートなど」からお申し込みください。

 

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