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スペシャルインタビュー
話題の本 著者インタビュー 『スタバではグランデを買え!』 吉本佳生さんにきく 経済学者のやさしい生活金融講座

第3回 裁定取引に強くなろう

裁定取引を狙った投資方法

――
吉本さんは、「裁定取引」の話を繰り返しされていますね。これも金融の世界では大切な考え方だと思いますので、具体的なお話をうかがわせてください。

では、そもそも「裁定取引」とは何かからお話ししましょう。同じ時点で同じモノが違う値段で売買されている時に、安いほうの値段で買って高いほうの値段で売れば利益が出ます。このように価格差を利用して儲けようすると取引が「裁定取引」です。例えば同じベットボトルのお茶の値段がA店とB店で値段が違い、取引コストがゼロなら、片側で買って片側で売れば儲けが出るわけですね。裁定が十分に行われていれば、同じモノの値段は等しくなります。

これを金融の世界に単純に置き換えると、同じ銘柄の株価が東京と大阪の証券取引所で違ったり、同じ時間帯に東京とシンガポールでドル円相場が違うということになるでしょう。もしそんなことがあれば、少しでも安いほうで買って高いほうで売れば儲かりますが、現実にはめったにないことですし、もしあっても瞬時にその差は消えてしまいます。情報がグローバルに行きわたっている金融市場では裁定がすぐ働くのです。

――
「金融の世界においしい話はない」といわれるゆえんですね。裁定取引で利益を出すことはできないのでしょうか。

実は機関投資家などがよく使っている方法があります。これは「企業の株価が影響を受ける要因を分解する」というやり法です。例えばA社は国内景気に影響を受ける要素が3割、金利上昇の影響が2割、アメリカの景気の影響が2割、そのほか主要な経済要因に対する反応はそれぞれ何割といったように、企業を分解してみます。するとA社とB社は業種は全然違うけれどアメリカ景気の影響という要因では似ているとか、B社とC社は金利上昇に対して同じように強いといったことが見えてくるはずです。

そうすると、何社かの株式をうまく組み合わせて株数を調整し、要因を構成しなおせば、理論上ある経済変化の影響に対して同じ反応をするはずのセットを複数つくれるはずです。もし、そのセット同士の間で価格差があれば、安い方を買って高い方を売っておく。そうすればいずれ価格差が縮まって、裁定取引による収益があげられると考えられます。なかなか理論通りにはなりませんが、銘柄のリスク分析をする時に役立つ考え方かもしれません。

為替と株式を連動して考える

――
ところで今年10月にソニーバンク証券が株式の現物取引の取り扱いを開始したのを機に、株式取引を始められたソニーバンクのお客さまが増えています。何かアドバイスはありますか。

ソニーバンクの利用者のかたは、外貨預金が非常にしやすいということで口座を開かれたかたが多いと思います。まさにネット銀行ですから、為替と株式を連動して取引することができるのが強みですよね。そこで私が提案したいのは、資産運用の基本といわれる国際分散投資に、今後は為替と株式を連動させた視点をもってほしいということです。

円相場を見ていて面白いのは、21世紀になってから相場が非常に安定しているということです。昔は1ドル160円から80円になって、また120円に戻りましたといった値動きも当たり前のようにあって、1年間に50%ぐらいの変化があった年もあったわけです。98年には2日で10円変動した時もありました。そんな過去と比べると、21世紀に入ってからは120円から105円ぐらいの間で変動しています。では世の中が安定しているかというと、日米の貿易不均衡は依然として大きく、この数年の日本の景気にも浮き沈みがありました。

なぜ円相場が安定しているのか。私が注目しているのは、日米の株価の連動性が非常に高まっていることです。90年代には日本の株価とアメリカの株価は反対方向に動くのが当たり前で、この場合、国際分散投資が有効でした。そしてアメリカの株価が下がった時に日本の株価が上がるのであれば、日米の間で資金が大量に行き来し、円相場が変動しやくなります。ところが今は、みんながアメリカの株も日本の株も買う。日米の株価が連動して、円とドルを替えてもあまり意味がなくなっています。だから為替相場が安定しているのではないか。学説としての裏付けはありませんが、重要なことを含んだ考えかただと思います。

――
つまり国際分散投資の効果は、今後は失われてくると?

単純に外国株と日本株に資産を分けるだけであれば、その有効性は下がっていると思います。私が言いたいのは、国際分散投資の質が変わってくるだろうということです。株価、為替、内外の金利差。リスク管理という観点から、少なくともその3つを連動的に考えることがとても重要になると思います。具体的にどうやってそれらを複合的に考えるか、その点ではまさにソニー銀行のサービスに今後生かしてほしい部分だと思います。

為替相場にしても、昔は米ドルと日本円の関係さえ見ていれば、大きな問題はありませんでした。日本円は米ドルに対して安くなった時、たいてい他の通貨にも安くなっていたからです。ところが今は違います。ユーロ円とドル円の関係は違いますし、人民元の影響も強くなっています。円と米ドル、円とユーロの関係を見られるようになると、どのリスクを自分は負い、どこを負わないといったことが、その都度判断できるようになるかもしれません。これはプロにも難しいことを言っているのですが、資産運用の初心者の方にとっても、物事を連動して考える癖を付けることは大切だと思います。

(第4回「金利と物価とインフレの関係」に続く)

インタビュー後記

国際分散投資の効果が失われる、というコメントは衝撃的でした。
米ドルと日本円で作られているわたしのポートフォリオはどうなってしまうのか。
私事はさておき、重要なのは自分の資産と連動する他の要因を意識する、という視点です。
例えば、TOPIXのインデックスファンドが資産の10%を占めていれば10%。ではなく、他の資産もTOPIXの影響を受けるわけです。
このアイデアは宿題としてお預かりいたします。

 

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