MONEYKitトップ > from MONEYKit > 為替・金利レポート > 金利レポート > フィスコ金利レポート ユーロ金利見通し:2007年8月6日
8月2日のECB(欧州中央銀行)定例理事会後、トリシェ総裁は予定されていなかった記者会見を開き、次回での政策変更を意味する「物価安定のため強い警戒 - strong vigilance - が必要」と述べました。このほか、「賃金・原油価格が物価の上方リスク」、「金利が緩和的かどうかは来月に伝える」、「年末の金利に関しての発言はしない」と発言しています。これらの発言からは、9月6日の利上げの可能性が高いものと見られます。
ドイツの銀行がサブプライムローン(信用力の低い層を対象とした住宅ローン)への投資で巨額の損失を出し、他の銀行に救済されるなど、問題が欧州にも広がる中、トリシェ総裁の発言はECBとしては愚直なまでのインフレ警戒スタンスを示していると言えます。
確かに、ユーロ圏の失業率は7%割れとなり、一定の賃金インフレの恐れはあります。また、ECBが重視するマネーサプライは6月に前年比+10.9%と伸びが加速、中期的なインフレ・リスクを示唆しています。とはいえ、ドイツ連邦銀行は月報で第2四半期のGDP(国内総生産)の減速の公算に言及していますし、ドイツ企業の景況感を示す7月IFO指数は高水準ながらも、やや足踏み状況ですし、主にアナリストが回答する7月独ZEW指数は急低下しています。
つまり、現在の環境としては、インフレ懸念はありつつも経済指標はまだら模様であり、また、ユーロ高と7月中旬以降のサブプライムローン問題に起因する資本市場の混乱が金利引き上げの道筋に一定の陰を落としている、といえそうです。
次回9月6日のECB理事会では予定通り金利を0.25%引き上げて年4.25%とすると予想します。しかし、万一、資本市場における大規模な混乱(株式市場や米ドルの急落、信用収縮など)が起こった場合、ECBは金利を引き下げて流動性を供給し、混乱の回復を重視すべきか、あくまで時間差をおいて明らかになる景気指標に反応すべきか、という困難な二者択一を迫られるかもしれないからです。
この議論は単純ではなく、2006年まで、つまりグリーンスパン米FRB前議長時代までは、幾つか特殊なケース(9.11後)も含めて、株式市場が急落したときなどは金利を下げて流動性を供給すべしという不文律めいた行動原理(俗に「グリーンスパン・プット」と呼び習わされています)がありました。これに他の中央銀行も従ってきたいきさつがあります。これが果たして良いことだったのか、資源の非効率な配分(米不動産のアセット・バブルなど)を結果的にせよ招いたのではないか、投資家に一種のモラル・ハザードをもたらしたのではないか、という議論があります。仮に、このような反省が支配的となった場合、先進国の中央銀行は、市場の変動は市場に任せるスタンスとなってもおかしくありません。すると、これはそれ自体が市場の安定性を損ねかねません。
最大の問題は、そういう不文律の永続を信じて多くの欧米の中核的金融機関が投資・融資行動をとっていることです。したがって、市場が混乱した場合に中央銀行が行動しない(流動性を供給しない)場合のダメージは、過去にないほど実体経済へのダメージをもたらす恐れもあります。
BIS(国際決済銀行)が6月24日に公開した年報で、ヘッジファンド、プライベート・エクイティ・ファンドなどの過剰レバレッジ(借入)傾向のもたらす金融システムへの危険性を指摘していました。何年にもわたって続いた「インフレなき景気拡大」、そして「消費者物価にしか反応しない中央銀行の政策」が過剰投資とそこにロックされた資金の偏った配分をもたらしている可能性がある、としています(この年報はそのあまりの悲観な見通しゆえに「金融ハルマゲドン」と半ば揶揄されました)。
トリシェ総裁の一見確たる利上げへの意思とは裏腹に、2000年代前半からの政策の負の側面にECB(を含む-しかし日本を除くかもしれない-先進国中央銀行)は案外近い将来に直面するかもしれません。
| 現行 | 1ヵ月後予想 | |
|---|---|---|
| 政策金利 | 4.00% | 4.00-4.25% |
| ドイツ2年国債利回り | 4.28% | 4.10-4.40% |
| ドイツ10年国債利回り | 4.32% | 4.25-4.50% |
株式会社フィスコ
田浦哲哉
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レポート提供:株式会社フィスコ
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