MONEYKitトップ > from MONEYKit > 為替・金利レポート > 金利レポート > フィスコ金利レポート 円金利見通し:2007年6月18日
6月15日の日銀金融政策決定会合
日銀金融政策決定会合が、2007年6月14日、15日に開催され、「現状維持の結果」が示されました。この15日の決定会合の結果へのマーケットの注目点は以下の2点にありました。
まず、1点目は「今回の決定会合で日銀審議委員の意見が割れることになるのか否か?」また、2点目は「福井日銀総裁の会見で、次回以降の利上げに向けてどの程度タカ派的な見解が示されるのか?」というものでした。
結局、これら2点のそれぞれが明らかになった時点で、市場は金利低下で反応することになりました。すなわち7月の利上げ警戒が、幾分薄れることとなったわけです。
今回の決定会合においては、少なくとも意見が割れる格好で「現状維持」が決まるようであれば、7月の利上げ警戒も急速に高まったかも知れませんが、そうした懸念が杞憂に終わるかの如く「全員一致」により現状維持が示されたことにより、この報を受けて円債先物は後場寄りから買われる(金利は低下する)こととなりました。
また、同日引け後の福井日銀総裁のコメントでは、利上げ判断について現状では「確認すべきことが非常に多い」とするなど、福井総裁らしからぬ予想外の慎重なコメントに終始したこともあり、この日の夜間の取引においても円債先物は買われることとなりました。
今回のこうした決定会合の結果については、2月下旬の当欄の予想と大きな変化はありません。前回2月22日付け(2月21日の決定会合直後)の当欄レポートにおいては、次回利上げ時期は8月と示していましたが、現時点においてもその見通しに変化はなく、現在の金融市場においては8月の利上げ実施が90%程度の確率と、ほぼ「完全」に利上げが織り込まれている状況にあります。
また、2月22日以降の長期金利の動向を概観しますと、ほぼ予想レンジに沿う形で収まりつつ、また金利上限に収まる様相になっています。
【2月時点の期間の予想レンジ → 6月13日時点】
| 10年物金利 | 1.65%〜2.00% → 1.985% |
|---|---|
| 5年物金利 | 1.20%〜1.65% → 1.605% |
| 2年物金利 | 0.80%〜1.05% → 1.100% |
2年物金利としては2006年3月の量的金融緩和解除後の最高水準を更新し、5年物金利については、2000年2月の同債初回債発行以来、過去最高水準を更新。そして10年物金利は日銀がゼロ金利政策を解除する直前の2006年7月4日以来の高水準を付けるなど、軒並み上昇することとなりました。
繰り返しになりますが、今回の日銀金融政策決定会合では波乱なく「現状維持」の決定となり、次回利上げ見込みも「8月本命説」にこの春以来から変化がない状況といえます。このような状況にあって、なぜ、ここまでの金利上昇が発生したのか?それについて、以下で述べたいと思います。それが今後の国内金利の動向を決める上で重要なキーワードになりそうな状況といえます。
金利上昇の背景と今後の懸念
今回のこうした金利上昇が世界的な金利上昇に起因していることは、市場関係者の多数意見ですが、日本の金利上昇は、特に米債券市場での大幅な長期金利上昇に端を発していると見られています。米債券市場が足元で「景気減速観測→利下げ期待」を徐々に意識されていた地合いにあって、6月初旬の米雇用統計などの経済指標がインフレを連想させるものであったことから、こうした期待が一気に剥落し、急激な長期および超長期の金利上昇を招きました。それが、日本の債券市場にも影響を受けることとなり、長期金利主体で上昇しました。この長期金利の金利上昇という点がミソです。通常、長期金利が金利上昇の主体となるのは、インフレを警戒する動きが発生したということです。よって、今回の世界的な金利上昇は、グローバルな形でのインフレリスクを警戒したものと筆者は見ています。今回のこうしたグローバルな金利上昇(特に長期金利主体の金利上昇)が、今後の円金利にもこれまで以上に影響を及ぼす公算が高いといえます。この夏以降、何回の利上げを日銀が実施するのか?あるいは実施できるのかに注目が集まります。
グローバルインフレの背景
これまで中国などの新興国がその安い労働コストを武器にして安い製品を世界に販売し、その結果、デフレ効果を世界各国に浸透させてきていましたが、ここに来て、逆のバイアス、つまり中国がインフレを世界各国に浸透させるのではないか?という懸念がくすぶっています。
もともと中国製品については、一昔前までは安かろう、悪かろうとの評価でしたが、それが最近は、そのような評価も払拭されて市場シェアを稼ぐだけの規模の商品力も養われてきました。しかし一方で、品質に対する根本部分での「認識の欠如」と思われるような問題が浮上してきています。(たとえば、医薬品における原材料成分を中国が輸出しているが、その中には、人体に対して悪影響を及ぼすような成分が含まれていて、その完成品そのものへの信頼を裏切るような事態になっているケースもある)。
こうした問題の高まりは、中国から原材料、半製品、完成品等を輸入している国が輸入規制を余儀なくされることにもなります。中国関連製品の提供ストップ、もしくはコストアップから商品価格の上昇は避けがたく、ひいては各国の消費者物価指数(CPI)の上昇圧力となる懸念があるという状況です。このことは、世界各国に当てはまり、こうした中国製品規制の動きが世界的なインフレ圧力を醸成させる素地となり得ます。この懸念は今夏以降、くすぶり続けることになります。
次に挙げられるのが、中国自身の問題。中国経済は過熱気味でインフレ懸念が急速に台頭して来ている状況にあります。中国金融当局もこうした自体を沈静化させるべく、金融引き締めを行っていますが、当局の姿勢は完全に後手に回ってしまっています。
このような世界的なインフレ圧力に対して日銀が先手を打ち、夏以降に幾度となく利上げが実施されるようであれば、短期金利が上昇したとしても、長期的な経済にとってはインフレ抑制的な施策と判断できることから、長期の10年物金利が大きく2.0%を超えることは想定しにくい状況になります。
しかし、逆に日銀が利上げのタイミングを逸する場合は、インフレ抑制が失敗する公算も高くなることから、10年物金利の更なる上昇を招くことにもなります。特に筆者が警戒しているのはこの後者の見方です。グローバルな形で長期金利が上昇した場合、各国の経済情勢に温度差があることから、なかなか機敏に各国金融当局が動きにくい状況になる可能性があります。ましてや日本の場合は政治的な色合いも強くなりやすく、そうなった場合は、10年物金利は2.5%を軽く超える金利上昇場面ともなってもおかしくありません。つまり、今夏以降、世界的な金融引き締めの流れ、すなわちグローバルなインフレを警戒する状況になりそうだということです。そういった意味では、年末に向けて一段の金利上昇を警戒しておくことが重要かも知れません。
| 10年物金利 | 1.80%〜2.70% |
|---|---|
| 5年物金利 | 1.55%〜1.8565% |
| 2年物金利 | 1.00%〜1.35% |
株式会社フィスコ シニアマーケットアナリスト 柏木淳二
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レポート提供:株式会社フィスコ
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