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第1部講演:新興国投資の魅力とリスクについて
講師 モーニングスター株式会社 大喜太 伸也 氏
1. 新興国経済と新興国投資の現状
BRICs、VISTA、ネクスト11とは

新聞・テレビ等で新興国という言葉を目や耳にされることが多いと思います。新興国の定義とは先進国に比して経済が成長過程にあり、今後も高成長が期待できる国のことです。
なお、IMF(国際通貨基金)の統計上は、先進国というのは米国と日本、そしてEU諸国、東欧を除く欧州、アジアNIES(香港、韓国、シンガポール、台湾)、カナダ、オーストラリア、およびニュージーランド。それ以外の国を新興国と定義しています。
新興国はBRICs、VISTA、ネクスト11などのくくりで紹介されることが多いため、その内容を説明します。
BRICsは中国、インド、ロシア、ブラジルの頭文字を取ったものです。2003年にゴールドマン・サックス証券のレポート「BRICsとともにみる2050年への道」で紹介されました。これらの国はそれぞれの地域のリーダー的存在で、政治的にはすでに世界的に重要な地位を占めている国です。
VISTAは日本のBRICs研究所のエコノミストが、BRICs諸国に続く新興国として定義したベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチンの頭文字を取ったものです。
ネクスト11はゴールドマン・サックス証券が選定したポストBRICsです。人口が多く、外資の導入が活発、政治的に安定し、持続的な経済成長が見込まれることが選定条件です。バングラデシュ、エジプト、インドネシア、イラン、韓国、メキシコ、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、トルコ、ベトナムの11カ国です。
- [世界における新興国の位置づけ]
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人口上位15カ国(2004年)
- ※2002年4月末=100として指数化。為替ヘッジなし。(国際株式・エマージングについてはヘッジありとヘッジなし両方)(出所)モーニングスター作成
2004年の人口上位15位までを表した図です。先進国は米国、日本、ドイツの3ヵ国のみで、大多数は新興国です。
中国やインドは人口10億人を超える非常に大きな国です。インドネシアも2億人を超え、ブラジル、ロシア、パキスタンなど1億人を超えている国も多くあります。
BRICs4ヵ国だけで世界人口の約45%を占めているため、今後経済が成長すると爆発的な消費の増加が見込まれます。
- [世界における新興国の位置づけ]
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名目GDP上位20カ国(米ドルベース)
- (出所)International Monetary Fund, World Economic Outlook Database, April 2007のデータよりモーニングスター作成
GDP(国内総生産)を2000年と2007年(予想)で比較すると、中国が第4位となったのをはじめ、BRICs諸国の経済が順調に成長していることが分かります。なお、購買力平価から算出するGDPでは、すでに中国は米国に次ぐ世界第2位の経済規模を有していますし、BRICs4ヵ国の合計では世界のGDPの24%を占めることとなり、米国や欧州を上回る経済規模を有しています。
さらに2050年のGDPは、1位が中国、2位がアメリカ、続いてインド、日本、ブラジル、ロシアになるといわれており、現在の1位米国、2位日本とBRICs4カ国が世界経済の牽引役になると考えられます。
- [世界における新興国の位置づけ]
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新興国株式市場の時価総額は拡大
世界各国の株式時価総額(2006年12月末)
それでは、各国の株式市場(2006年12月末)を見てみましょう。経済成長が進み、株式市場の時価総額も増加傾向にあります。ロシアはすでに1兆ドルを超え、中国、インド、ブラジルも7,000〜8,000億ドルのレベルまで拡大しています。
日本から新興国への投資方法には簡単に分けて2つあると考えられます。まず株式やADR(預託証券)を直接購入される方法、そして新興国に投資している投資信託を購入する方法です。
新興国の株式を直接購入する手続は難しく、日本の証券会社を通じて購入できない場合もあります。そうなると、現地で証券口座を作るなどの非常にややこしい手続が必要となるため、「ちょっと買ってみようか」というかたにはお勧めできません。また、一般的に新興国の投資情報が少ないため、銘柄選定もかなりの知識が必要です。
それに対して、新興国に投資する投資信託を購入する場合は、自分で銘柄選定はできませんが、情報を豊富に持つファンドマネジャーが代わりに運用します。また、国内の銀行や証券会社で購入できますし、小口の資金で複数の銘柄に分散投資ができます。新興国投資初心者のかたには投資信託をお勧めしたいと思います。
モーニングスター調べによると、新興国に投資する国内の追加型株式投資信託は2007年4月末で154ファンド、純資産額合計が5兆円(株式4兆円、債券1兆円)を超えています。2005年末の純資産額と比較して2倍程度に拡大しています。
- [新興国投信の累積収益率(株式)]
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新興国株式ファンドは、相対的に高い収益率を上げている。
- ※2002年4月末=100として指数化。為替ヘッジなし。(国際株式・エマージングについてはヘッジありとヘッジなし両方)(出所)モーニングスター作成
続いて新興国投信の累積収益率を見てみます。モーニングスターが国際株式を地域ごとに分類してインデックス化したものの累積収益率の推移を見ると、新興国は先進国の累積収益率に比べて高くなっておりますが、同時に先進国に比べて非常に振れ幅が大きくなっていることが分かります。
- [新興国投資のリスク・リターン特性]
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新興国の株式は、高いリターンを期待できる半面、価格のブレが大きい。
- ※収益率および標準偏差は、2004年5月〜2007年4月の月次リターンの平均および標準偏差を年率化して表示。(出所)モーニングスター作成
また、新興国株式ファンドのリスク・リターン特性をみると、新興国の株式ファンドは非常に高いリターンも期待できる半面、価格のぶれ(リスク)も大きいということが分かります。
2. 新興国投資の魅力
- [急成長を続ける新興国経済]
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新興国の平均経済成長率は先進国の平均を上回る
- ※2007年と2008年については予想値
先進国:米国、日本、英国、オーストリア、ベルギー、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、ポルトガル、スロベニア、スペイン、香港、韓国、シンガポール、台湾、カナダ、オーストラリア、キプロス、デンマーク、アイスランド、イスラエル、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデン、スイス
新興国:先進国以外の国 - (出所)International Monetary Fund, World Economic Outlook Database, April 2007のデータよりモーニングスター作成
- ※2007年と2008年については予想値
何といっても新興国投資の魅力は、高成長の経済です。この図は先進国と新興国の経済成長率を示したものです。先進国が1%台後半から3%台前半で推移しているのに対して、新興国は6%台後半から7%台後半の成長を続けています。主な新興国を見ると中国は10%成長を数年つづけていますし、ロシアが6%、インドも8%の経済成長を続けています。中国の10%というのは奇跡といわれた日本の高度成長期と匹敵する成長です。また、7%成長が10年間続くと経済規模が2倍となりますので、非常に早いペースでの成長を続けているといえます。
- [急成長を続ける新興国経済]
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多くの新興国では輸出を原動力にした経済発展を遂げている。
- (出所)各国政府のデータよりモーニングスター作成
次に、新興国の経済成長のドライバーの1つ「輸出」を見てみます。この図からは中国、ロシア、韓国、インドネシア、またトルコの名目GDPに占める輸出の割合が非常に高いことがわかります。中国や韓国は主に工業製品を輸出しています。また、ロシアでは石油・天然ガスなどの天然資源が主な輸出品目となっています。
- [ファンダメンタルズの改善]
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輸出の好調や資源高の影響で新興国の外貨準備が増加。先進国を上回る水準に。
- ※インドについては2007年4月6日、ブラジルについては2007年4月末のデータ
- (出所)IMFおよび各国中央銀行のデータよりモーニングスター作成
輸出が好調なため外貨準備が大きく増加し、現在中国は外貨準備で1兆2,000億ドルを超えて世界一となっています。外貨準備が積み上がることで通貨危機のリスクは減り、新興国の信用が徐々に高まっているといえるでしょう。
- [ファンダメンタルズの改善]
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経常収支:ロシアは安定的に推移。中国、ブラジルは改善。インドは悪化。
- (出所)International Monetary Fund, World Economic Outlook Database, April 2007のデータよりモーニングスター作成
対GDP比での経常収支を見ると、輸出が好調で貿易収支が大幅な黒字となっているロシア、中国が非常に高い水準にあることが分かります。また、ブラジルもこのところプラスで推移しています。一方、インドは悪化していますが、サービス収支の寄与度が減少しているためだと考えられます。
新興国では全般的に、経済成長、ファンダメンタルズの改善によって債務不履行のリスクが減っているため信用力が改善しています。一般的にBBB格以上が投資適格債と呼ばれていますが、主要な新興国の債券はすでに投資適格になってきている状況です。
■主な新興国トピックス
- 中国
- 2008年に北京オリンピック、2010年に上海万博が開催されます。この2つのビッグプロジェクトに向けて、国内でインフラ整備が盛んになっています。また、製造業を中心とした経済成長が続き、沿海部を中心に消費が拡大しています。ペトロチャイナなど国際的な大企業も誕生しており、株式市場の活性化につながっています。
- インド
- 中国は製造業中心ですが、インドはITやサービス業を中心として経済成長を続けています。IT分野で非常に高い技術を持ち、英語が話せる労働者がたくさんいることがひとつの魅力といえるでしょう。また、世界最大の人口を抱える国になるといわれており、将来的に世界最大の消費国となる可能性を有しています。
- ロシア
- 原油、天然ガスなどの資源が最大の魅力です。今後、新興国を中心に資源消費国が増えることで、ロシアの存在感はさらに高まるでしょう。また、過去ロシアは混乱を続けていたため、内需という面でも、インフラ整備に期待ができます。
- ブラジル
- 鉄鉱石などの鉱物資源や大豆などの穀物が豊富で、商品価格上昇の恩恵を直接受けています。一時のインフレは鎮静化したことも経済にとってはいい傾向といえるでしょう。
- 南アフリカ
- 2010年にFIFAワールドカップが開催されるためインフラ整備が期待できます。また、金やプラチナなどの貴金属資源豊富です。アパルトヘイト廃止後、黒人層の所得が増えていますので、消費の伸びも見込まれています。
- ベトナム
- 直接投資が非常に増え、急速に市場経済化が進んでいます。2007年1月11日、WTO(世界貿易機構)へ150番目の加盟国として正式に加盟しました。東南アジア一の教育国といわれ、優秀で低賃金の労働者が多いことも魅力です。
- トルコ
- EU加盟が期待され、加盟後はEU圏内で一大生産拠点となる可能性があります。欧州最大の人口を占め、若年層も多いことも魅力。また、中東諸国との深い関係があり、イスラムマネーの投資も期待できます。
- インドネシア
- 天然資源が豊富。人口が世界第4位と大きいため、潜在的な消費国になる可能性があります。
- アルゼンチン
- 経済危機から徐々に復活しています。経済危機の際に通貨が非常に安くなりましたので、輸出が有利になっています。農産物、牛、トウモロコシなどの大生産地ですので、今後、商品価格が高くなっていく中で、恩恵を受けることができるでしょう。
3. 新興国投資のリスク
2006年5月、米国の金融引き締め政策に対する警戒からインドの代表的な指数であるSENSEX30の指数が5月11日から5月24日の間に16.17%下落をしました。
また、2007年2月の世界同時株安では、2月27日から3月5日の間に上海総合指数が8.49%、SENSEX30が9.04%下落しました。米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向けの住宅ローン)問題から信用収縮が連想されている状況で、円キャリートレード(低金利で先安感がある「円」を借り入れ、高金利通貨建てにて運用すること)の巻き戻しへの警戒感が出て世界的なリスク許容度が下がったことが原因といわれています。
2007年4月トルコでは、大統領選挙の結果をめぐって、イスラム系の与党と野党の間で対立が起こり政治不安から株式相場が下落。4月26日から5月1日の間にイスタンブールのナショナル100種指数は16.17%下落しました。
このように、新興国市場は米国の金融政策や、世界的なリスク許容度、政情などに大きく影響を受ける場合があります。また、中国については、金融政策が非常に重要な要素となると思います。中国は輸出が好調で、資金が流入している一方で、人民元は一定の幅で管理されています。一定の幅で管理するために、通貨当局が外貨を市場から吸収して、そのかわりに人民元が市中に出まわっています。従って、貨幣の流通量は増加し、不動産価格や株価が高くなってきています。今後、過熱ぎみの経済を抑えるため、中国政府が金融政策を引き締めた場合には、株価、経済に大きな影響が出る可能性があります。
また、南米やアジアを中心に米国経済への依存度が非常に高くなっています。米国は世界最大の消費国ですので、米国経済が停滞する場合は、世界各国の経済に影響が出る可能性があるでしょう。
新興国投資のポイント
- [長期での保有]
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新興国株式や債券は、長期で保有することで時間当たりのリスクは軽減される。
- ※1年未満および3年、5年については年率化
- (出所)ブルームバーグのデータよりモーニングスター作成
新興国の株式や債券は短期的には下落するリスクが高いため、長期で保有されることをお勧めしたいと思います。株式や債券は長期で保有することで、時間当たりのリスクというものが低減されます。
こちらの図は、MSCIエマージングインデックスの最大最小の収益率を期間別に示したものです。1ヵ月しか保有してない場合は年率大きくぶれますが、5年間所有すると収益率の差は減少します。他の投資にも通じる話ですが、長期の視点をもっていただければ、時間当たりのリスクを抑えることにつながるでしょう。
また、国内株式や外国債券など、他の資産と組み合わせることで分散効果が期待できます。
- [別の資産と組み合わせる]
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国内株式や外国債券など他の資産と組み合わせることで分散効果が期待できる。
- 世界株式:MSCIワールドインデックス(円ベース)、世界債券:シティグループ世界国債インデックス(円ベース)、新興国株式:MSCIエマージングインデックス(円ベース)
- (出所)ブルームバーグよりモーニングスター作成
分散Aは先進国の株式50%と先進国の債券50%を組み入れたときのリスクとリターンです。リターンが年率8.43%、リスク、標準偏差が年率8.69%で、リスク当たりのリターンは0.97(リターンをリスクで割ったもの)となります。一方、分散Bは世界株式45%、世界債券45%、そして新興国株式を10%入れたものです。こちらはリターンが年率10.22%、リスクが年率9.16%、リスク当たりのリターン1.12となります。分散Aと分散Bを比較すると、分散Bのほうがリスク当たりのリターンをより効率的に獲得できているといえます。分散というのは投資の基本といわれます。是非、分散投資を心がけていただきたいと思います。
- ソニーバンク投資信託セミナー「新興国投資の魅力に迫る!」(はじめに)
- 第1部講演:新興国投資の魅力とリスクについて
- 第2部講演:シュローダーBRICs株式ファンドご紹介


