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スペシャルインタビュー
市場を読む 嶋中雄二氏 株式会社UFJ総合研究所 投資調査部長

嶋中雄二氏

円高への圧力

では、為替のお話をうかがいます。まずは、そもそも為替レートはどのように決まるものなのでしょうか。

為替レートはふたつの国の通貨の交換比率ですから、その国の通貨の量が多いほうが価値は下がります。これが前提です。

通貨の量が多い、とはどういうことなのでしょう。

通貨の量について調べようと思ったら、マネタリーベースというものがあります。日本では、日銀券、貨幣流通高、日銀当座預金の合計値であらわされますが、最近の日本とアメリカのマネタリーベースの前年比伸び率を比較してみると面白いことがわかりますよ。昨年の4月ごろでは、日本は36%くらいの増加でしたが、今年の4月は4.5%です。その一方でアメリカは一貫して7%くらいなんですね。

今のお話だと、これは円高・ドル安になるということになりますよね。

つまり、昨年は円安の圧力があったけれども、今では円高の圧力がある、ということです。本当は日本はもっとマネタリーベースを伸ばさないといけない。今の日本は円安を望んでいるわけですから。しかも、今月アメリカは利下げをする確率が高い。5日にはECB(ヨーロッパ中央銀行)も0.5%利下げをしました。利下げをする国の通貨は下がる傾向があります。通貨の供給量が増えるわけですからね。さて、アメリカもECBも利下げをして、日本がマネタリーベースを増やさないとなれば・・・

円高、ですか。

そうです。円の全面高。しかも、特に産業界を中心として、アメリカの本音はドル安だし、ヨーロッパはユーロ安でしょうね。今はユーロの全面高となっていますが、さすがにここまで高いと、もはやヨーロッパ域内は金融引き締めと同じような状態になってしまっていて、景気を考えると金利を引き下げざるを得ない。1回ではすまなくて、2度目、3度目とやらざるを得なくなるような気がしています。今回は一気に0.5%だったけれども、来年の春にかけてさらに0.5%くらいの利下げはあると思っています。

日本の金利はほとんどゼロなのに、アメリカやヨーロッパの金利が更に下がって、円高となると、とてもたいへんな事態のように聞こえるのですが。

そう。日本は長期国債もゼロ金利に近づくんじゃないでしょうか。金利はこんな状態でも、デフレは深まっています。世界的な景気のピークは今年の1〜3月でしたね。特に中国の成長率はこれから夏、秋にかけて大幅にダウンしていきます。それは日本の輸出に大きく悪影響を及ぼします。アジアでなんとか引っ張ってきた日本にとってこれは痛い。企業収益も減益になるでしょう。

この世界景気の後退とあいまって、下手をすると日本は長期金利もゼロ金利になりかねない。そうすると債券相場は機能しなくなる。もちろん、そこまでいかせていいのか、という話はあるでしょうから、外債とかETF(株価指数連動型上場投資信託)とかREIT(不動産投資信託)を買うといった、非伝統的な手段を用いて日銀は資金を供給しなければならなくなるでしょうね。

でも、それでも足りないから、3年連続で10兆円といった規模の財政を出さないとだめです。そういうケインズ的な政策をマネタリスト的な政策と組み合わせて、名目成長率を3%くらいにもっていくことが求められているのです。

期待ができるのはいつごろからでしょう。

日本は来年から少しずつ回復するでしょう。でもよくなることがすぐに中長期の上昇につながることは難しい。不良債権の問題もありますし、地価はまだ下げ止まらない。地価の底入れは株価に対して1年以上遅れるので、下げ止まりは2005年くらいだと思いますね。ただ、そのくらいになると今やっている構造改革の成果が出てくるでしょうし、産業界では、燃料電池自動車、ロボット、ナノテク、医療サービス・都市再生などの分野での革新が商品につながってくる。特に燃料電池やロボットには、鉄腕アトム時代でもありますし期待したいですね。そして、ここに循環が加わる。これは長期の上昇ですよ、きっと。ロング・スイングとロング・ウエーブが重なるような局面だから、そう簡単には止まらない、と期待も込めて結んでおきましょう。(笑)

少し元気が出てきました。(笑)長時間にわたってどうもありがとうございました。

 

嶋中 雄二(株式会社UFJ総合研究所 投資調査部長)

1955年東京都生まれ。78年早稲田大学政治経済学部卒業。三和銀行(現:UFJ銀行)勤務の後、早稲田大学大学院経済学研究科博士前期課程入学(86年修了)。仏リヨン経営大学院留学、米スタンフォード大学フーバー研究所客員研究員、(社)日本経済研究センター研究員を経て、89年三和総合研究所(現:UFJ総合研究所)主任研究員。97年主席研究員となり、三和証券(現:UFJつばさ証券)客員エコノミストを兼務。2000年より投資調査部長 兼 主席研究員、現在に至る。

著書は、『日本経済の油断』、『メジャー・サイクル』、『複合循環』(東洋経済新報社)、『繁栄は繰り返す』(PHP研究所)、『転型期の日本経済』(講談社)、『景気の転換点を読む』(同友館)、『太陽活動と景気』(日本経済新聞社)など。7月には、UFJ総研投資調査部との共編著『実践・景気予測入門』(東洋経済新報社)を刊行の予定。

嶋中雄二氏

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